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グッチーズの書棚

みなさんは『22ジャンプストリート』をご覧になったでしょうか。ヤクの売買が大学で横行し、チャニング・テイタムとジョナ・ヒル演じる捜査官が学生として潜入捜査を行うという映画です。アメフト部に入ったり女の子に目がくらんだり学生生活を謳歌して捜査どころじゃない二人も、ついに取引場所を突き止めます。それは大学図書館の地下書庫なのです。
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サングラスでキメてアメフト&女の子に夢中の二人は全く気にする素振りを見せてませんが、地下書庫だというのは由々しき問題です。もちろん、知識を学ぶ図書館でヤクの売買が行われている(しかも白い粉を隠すため本をくりぬく)ことは悪いことですが、悪い人たちが勝手に入ってやってることなので、これは単純にテクニカルな警備の問題です。根本的にマズいのは、利口な密売グループが(直接描かれてはいませんが)丹念に調べ上げた結果、「大学で最も人のいない場所は図書館」と結論づけたことです。本作はその辺うまくて、地下書庫の照明は人感センサー式システムという設定にすることで、売人のいる場所以外は真っ暗にして、実際に「図書館には人がいない」ことを視覚的に表しています。映画はいいです、だけど、それでいいのでしょうか、大学は。アメフトは興奮してゴールポストを倒してしまう学生たちと、管理するスタッフの間で攻防が繰り広げられるくらい盛り上がっているのに。

ということで、図書館に人を呼び、ついでに犯罪を撲滅するため、地下書庫に眠る図書を紹介するグッチーズ書棚を作ろうと思います。地下書庫には基本的に外国語の本がならび、あまり一般的にヒットする本は入っていません。そこで、この書棚では、未公開映画ならぬ未邦訳映画本を紹介しようと思います。さらに、大学の図書館なので海外の教授や先生が書いた本が中心になります。

大学の教授の本? そう聞くと小難しい内容で、ハイにでもならないと読んでられない感じがしますが、そうとも限りません。一見するとニッチなポイントに着目した映画の本をざーっと紹介していこうと思います。「そこきたか」、「なんでそれ?」という疑問はつきないかと思いますが、それに答える準備はありません。面白いかどうかもわかりません。私もまだ読んでないのです。実際に手に入れて読んでみた方は要約をぜひ送ってください。

最初の一冊は書棚ですし、「読む」行為に着目してこれ。
『Letters and Literacy in Hollywood Film』Edward Gallafent, 2013.
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その名の通り、ハリウッド映画に出てくる手紙を中心に、映画で文字を書くこと、読むことがどのように演出され、いかに重要な意味を担っているかを考察した本。出てくるのは1940年代の『忘れじの面影』などクラシックな映画から『イントゥ・ザ・ワイルド』、『愛を読むひと』など時代的には幅広くチョイスがなされてます。
ところで、どうしても手紙を書く&読むというシーンは、じめっと感傷的になりがちですが、おそらくこの本はかなり切れ味鋭く分析を行っているようです。というのも、早くもイントロダクションにつぎのような一節が。

これら(読む人、書く人、読む行為、書く行為)は分割して示される傾向がある。これは、書く行為が行われる物理的な空間を捉える、カメラの撮り方に起因するところが大きい。絵画における手紙の表象に関する議論のなかで美術史家が指摘するように、手紙を書く行為には二つの平面が関わってくる。手紙が置かれている机やテーブルといった水平の面と、絵画やスクリーン上のイメージを私たちが普段見る垂直の面だ。この(二平面の)分裂の問題は、異なる二つの映像を編集でつなげて見せるという解決方法、つまり一枚の絵画では出来ない、まさに映画的なものを現出させるのだ。

つまり、「書いてる姿を横から撮ろうとすると、肝心の文面が映らない! だからカットを割る」ということです。でも、手紙のシーンには二つの平面の分裂が潜んでいる、なんてかっこいいじゃないですか(当たり前のこと言ってるだけかもしれないけど)。
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(ノーマン・ロックウェル A Little Boy Writing a Letter。確かに文面は見えづらい)

もちろんこの後で実際の映画を論じるところではもっと物語に沿った形で分析がされているようですが、こんな風に最初に思いっきり突き放したようなところから始めるのいいですよね。(後で手紙じゃなくメールとかの話もでてくるみたいです。ただ、Twitterはどうでしょ。出版が2013年なので出てくるかは微妙なところ。確かめてみてください)。
そういえば、数年前の日本映画で、ヒロインが手紙を三通も書いたのに、大して注意も払われず一通も開封されずに終わる映画がありました(ヒント:巨匠のアニメ)。手紙は読んであげましょう。決闘から逃げるのを忘れるくらい手紙を読みふける『忘れじの面影』のステファンを見習いましょう。lettre_d_une_inconnue

ところで、映画の手紙といえば死後に開封されることが多いわけですが、こんな本も。
『Death in Classical Hollywood Cinema』Boaz Hagin, 2010.
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古典期のハリウッド映画における死の描かれ方を扱った本。34年~68年のハリウッド映画は製作倫理規定が明確にあって、なかなかグロテスクなシーンは描けなかった一方で、同じ倫理規定で「犯罪者はそれに見合う代償を払わなければならない」ということで、はっきり言って殺人者といった悪い奴はどこかのタイミングで死ぬことが必須でした。となれば、「死」をどう描くかというのはそれこそ映画の死活問題になります。しかも生い立ちとか環境でやむ終えず殺人を犯してしまう同情すべき主人公も出てくるわけで、かなり厄介な問題だということがわかるかと思います。ただ、この本が面白いかどうかは別問題なのでみなさん読んでみてください。

初回の棚はこんな感じで終わりです。(text: tamadaken)


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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