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門間雄介さんトークショー『キングス・オブ・サマー』

『キングス・オブ・サマー』が7月2日(土)京都の立誠シネマプロジェクトさんにて開催される「カモンサマー!未公開夏の青春映画特集!!」の1本として関西で初上映されることになりました!

そこで関西初上映を記念して、去年9月にグッチーズの上映会で行われた、ライター兼編集者で、映画にも大変造詣が深い門間雄介さんによる『キングス・オブ・サマー』、そして監督のジョーダン・フォークト=ロバーツについてのトーク採録を掲載致します。

ぜひご鑑賞のお供にお読みいただければと思います。
(※一部、具体的なストーリーに触れている箇所も御座います。予めご了承ください)

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「カモンサマー!未公開夏の青春映画特集!!」

『アメリカン・スリープオーバー』 7/2(土)13:00~
★上映後15:00~トークショー(60分程度予定)ゲスト:藤野可織(小説家)
『彼の見つめる先に』 7/3(日)13:00~
★上映後15:00~トークショー(60分程度予定)ゲスト:井上陽介 (Subtle Control/Turntable Films)
『キングス・オブ・サマー』 7/9(土)13:00~
★上映後15:00~トークショー(60分程度予定)ゲスト:山下賢二(ホホホ座)×加地猛(100000tアローントコ)
『ビッチハグ』 7/10(日)13:00~
★上映後15:00~トークショー(60分程度予定)ゲスト:多屋澄礼(音楽ライター・翻訳家)
主催:立誠シネマプロジェクト 共催:Esja/NINE STORIES 協力:Gucchi’s Free School

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★ジョーダン・フォークト=ロバーツとは何者か?

玉田(グッチーズ):早速ですがジョーダン・フォークト=ロバーツ監督の作家性の一番突出したところというのは例えばどのあたりに感じられますか?

門間:僕は、新しさですかね。今日、皆さんのお手元に届いているパンフレットには、『スタンド・バイ・ミー』という作品と、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(以下、『スーパーバッド』と略)という2000年代以降のコメディを例に出して書きましたが、青春映画としてのベーシック、つまり普遍性の部分に加えて、コメディ的な部分でやっぱりここ数年のトレンドを踏まえている。ただ『スーパーバッド』とかは、ご覧になった方はわかると思うんですけど、結構下品というか、下ネタ。

降矢(グッチーズ):そうですね。結構どぎつい(笑)。

門間:そういった部分が、この映画はすごい上品。洗練されているなあ、と思った。初監督作にしては中々ないバランス感覚だし、ちゃんとコントロールされている映画だなと思いましたね。ジョーダン・フォークト=ロバーツという、まさにこの映画『キングス・オブ・サマー』で初めて知る監督なので、今日いらしている方もどんな監督なのか、わからない方が多いと思うんですよ。だから最初に彼がどういう監督なのかということをお話したいなと思っています。

降矢:ぜひお願いしたいです。

門間:まあお話ししたいっていっても僕もインターネットとかで調べているくらいの感じなんですけど、なにしろこのジョーダン・フォークト=ロバーツという人の情報がないんですよね、実は。皆さんもたぶん知らない?

降矢:そうですね。ほとんど。

玉田:パンフを作るためにちょっと調べたんですけど、中々情報が出てこず(笑)。

降矢:そんな作品を上映していいのかって感じなんですけど(笑)。作品だけを見て、決めてしまったという。

門間:うん、だから海外のウィキペディアなんかを見ても、どこ出身みたいなことは書いてあるんですけど、生年月日とかも、大体そういうのはわかることが多いんですが、書いてないし。ただ、彼自身がオフィシャルで運営しているホームページとかが存在していて、そこでこれまでどんな作品を手掛けたかとか、それこそ映像も見られる形で、実はちゃんと整っているじゃないですか。

降矢:はい。

門間:だけど、やっぱりプロフィールのページにいくと、生年月日とか全然書いてないし、オフィシャルで使われている写真というのが、なんかサングラスで髭モジャの、ひょっとしたらあえて存在を隠しているような……

降矢:明らかに怪しい男みたいな感じですよね。

門間:ミステリアスななにかを装っている人なのかな、と思って、ちょうど今朝調べていたら、やっと歳がわかったんですよね。そしたら彼はまだ30歳。すごい若い監督だったんですね。

Jordan+Vogt+Roberts+PawwmE3C9Acm(ジョーダン・フォークト=ロバーツ監督)

降矢:2015年の現在、30歳ということですよね?

門間:そうなんです。僕はウェブで見たんですけど、ちょうど9月の頭くらいにアメリカの業界紙「ハリウッド・レポーター」がこれから期待の若手監督10人みたいな、そういう特集を組んでいて、その中には例えば日本では『セッション』というタイトルで公開されたデミアン・チャゼルとか、『フルートベール駅で』のライアン・クーグラーとか、そういう監督がリストアップされているんですけど、その中の10人の1人にジョーダン・フォークト=ロバーツが選ばれていて、そこで30歳と出ていました。ちゃんと髭もなんにもない、若い写真が出ていました。

降矢:ただ、この映画を撮ったときはさらにもっと若くて、28とか27歳とかということなんですよね。

★ビデオゲームとジョーダン・フォークト=ロバーツ

門間:彼は元々テレビシリーズとかCMとか、あとは短編を撮っていた。そういうところからキャリアを始めたらしいんですけど、もっと遡ってみると、子どものときから映画監督になりたいというのがあったらしくて、アクションフィギアとかを集めるのが好きだったらしいんですよ。で、アクションフィギアを自分でちょっとずつ動かして、コマ撮りして、ストップアニメーションみたいなことを小さい頃よくやっていて、そのまんま映像を撮りたいという気持ちを抱き続けて、こういった形で長編を撮るというところまで至ったらしいんですね。ただ一方で、「じゃあ映画監督になっていなかったら、なにになっていましたか?」という質問を、その「ハリウッド・レポーター」の特集の中でされているんですけど、そしたらやっぱりビデオゲームのクリエイターになりたかったと。ゲームクリエイターですよね。こういったこともこの映画を見ると、あぁなるほどなって腑に落ちるとこがありますよね。

降矢:結構その感じしますよね。ハイスピードで撮られているところだったり、そもそもゲーム、ストリートファイターⅡやスライスゲームみたいな、スイカを斬るみたいな、ああいったモチーフにそのまま繋がっている。

門間:あとストリートファイターが出てくるけど、ストリートファイターⅡなんですよね。今の若者がやるには大分古いゲームをやっている。だからそれは彼が好きなんですよね。

玉田:監督本人がってことですよね。

★ジョーダン・フォークト=ロバーツの転機とインディープロダクション

門間:そう思うんですよ。で、そういう思いも抱きつつ、映画監督を志して、自分で短編などを撮っていた。そして転機になったのが短編でサンダンス映画祭に出品された映画なんですよね。『Successful Alcoholics』という、25分くらいの短編です。パンフレットのプロフィールに書いてありましたっけ? これ、検索していただくと「funny or die」というアメリカのコメディ作品なんかを見られるようなサイトがあって、そこでその25分間とか26分間とか丸々見られる状態になっているので、ご覧になれると思います。これもコメディで、あるカップルの話なんですけど、2人ともアルコール中毒的な感じでお互いにアルコール依存から抜け出せずに、そこからどうなっていくかという映画です。ただ、短編だし当然そんなお金とか使えずに作っているから、会話劇なんですけど、それでもとりあえず、中々やっぱり面白いんだなあというのがわかる作品になっていて、これが当時サンダンス映画祭で上映されたときに、かなり話題になったんですよね。で、それを見た製作プロダクションが、彼にアプローチしてきたと。

(『Successful Alcoholics』)

降矢:『キングス・オブ・サマー』のBig Beach Films(製作プロダクション)ですね。

門間:そうです。元々この『キングス・オブ・サマー』というのは、脚本は先に存在していたらしいんですよね。で、それを誰に監督させようかと動いていたときに、その『Successful Alcoholics』を見たBig Beach Filmsの人が、彼がいいんじゃないかって。ただ、インディペンデント映画の中でも、そのBig Beach Filmsというのは、結構色んな映画を作って成功してきている。インディーフィルムの製作プロダクションというのは、たくさん日本にもあるし、アメリカとかでもすごいたくさんあって、ちょっと規模が大きいものになるとライオンズゲートとか、メジャーに足が半分かかったような、そういう会社もあります。Big Beach Filmsというのは、割と新しい才能を発掘してきて、こじんまりとしているけれども良い映画を作るってことをずっとやってて、一番皆さんがご存知のだと『リトル・ミス・サンシャイン』とかですね。『リトル・ミス・サンシャイン』もデイトン&ファリスという夫婦監督を長編としては、たぶん初めて起用して作った。

降矢:あれも日本では口コミみたいな感じで広まった映画でしたよね。

門間:なにしろあれはまあ配給がフォックス・サーチライトだったので、それで拡大したというのはあるんですけど。あれもオスカーに絡みましたからね。だから良質な作品をちゃんと作っていて、才能も発掘している非常に良いプロダクションが彼に目を付けて、これを作ったということなんですよね。

降矢:内輪の話になりますけど、Big Beach Filmsさんはとても良い対応をしてくださって……

門間:ああ、上映権利のやり取りはBig Beach Filmsだったの?

降矢:そうです。まずこの『キングス・オブ・サマー』を我々が個人的に見ていて、この映画を上映したいなあと思い、どこに連絡を取ればいいのかというときに、製作会社のBig Beach Filmsのホームページにアクセスフォームがあったので、連絡を取ってみたら、トントン拍子とは行かないですけど、いい返事をいただけて。それに監督にも取り次いでいただいて、グッチーズのホームページを見ていただくとわかるんですが、監督からのメッセージも、ちゃんと期日までに、上映日ギリギリに(笑)届くように送ってくれました。

門間:まめに上映までに届くようにちょくちょく(監督に催促を)送ってくれたんですかね。締め切りに合わせて。

降矢:僕らもこれはダメかなぁと思っていたんですけど、ちゃんと送ってくれた。

★日本に対するシンパシー

門間:(会場にお越しの方が)そのメッセージご覧になったかは、わからないですけど、日本に来たことがあると書いてありましたよね。

降矢:ちょうどこの『キングス・オブ・サマー』を撮り終えたあとに、気持ちを解放するためみたいな動機で、東京、京都、奈良、大阪などに行ったとのこと。そして後々日本で映画を撮りたいという風にメッセージでは書いてくれていました。

門間:だから日本に造詣が深い。そのゲーム好きだというところも、きっと大きい要因なんでしょう。結構日本のカルチャーとかも好きなんだろうなって思う。で、色々調べていくと、ああそうだなあって思ったことがあって、彼がこれまで手掛けてきた作品の中で、『Mush Up』というテレビシリーズものがあるんですね。で、これがコメディ・セントラルというテレビ局で作られていた。

(『Mush Up』Full Pilot)

降矢:コメディ・セントラルというと……

門間:日本では『サウス・パーク』とか、ああいう作品なんかで一番知られているのかな。で、『キングス・オブ・サマー』よりちょっと前に作ったテレビシリーズなんですけど、それのポスターみたいなものがあるんですね。そのポスターを見ると、そこに日本語が書いてあるんですよ。Mush Upという大きいタイトルの下になにかちょこって書いてあって、「冗談はおかしい」と日本語で書いてあるんですね。

会場:笑

門間:ジョーダン・フォークト=ロバーツという名前だから、俺のジョーダンって日本語で冗談らしいぞというので、きっとお前なんかイケてるなって入れたんでしょうね(笑)

降矢:でもダジャレも出来るってことは高度ですよね(笑)

門間:なんかヘンなね、クソッタレみたいなワケわからないTシャツ着ているのと違って、ちゃんと意味がわかって使っている感じがありますよね。

降矢:アクション・コメディみたいなイントロなんですよね、『Mush Up』は。

スクリーンショット 2016-06-16 2.42.45

(『Mash Up』-冗談はおかしい-)

門間:そうですね。あと彼、ツイッターとかやっていて、後々になって気付いたんですけど、任天堂の岩田聡さんが15年の7月に亡くなられた直後に、大量にツイートをしているんですよね。Thank You Iwataというツイートをたくさん。

降矢:大好きなんですね。

門間:そうなんですよ。で、あのゲームとあのゲームとあのゲームとスーパーマリオとあとなんとかと、そのゲームが無ければ俺はどうなっていたんだろう、みたいなことを書いている。2015年にそれに匹敵するゲームは生まれるのだろうか、とか。なんか映画のことはツイートしないんですよね。ゲームのことばっかりツイートしている。リツイートもしていたりとか。ゲームはすごい好きだし、そこで日本との接点とか、日本に対するシンパシーみたいなものをすごい感じているんだろうなという風には思いましたね。

★タイムリーなニック・ロビンソン

降矢:そのハリウッドの若手10人みたいなものに選ばれていて、なおかつ日本好きみたいなことが結構如実にわかったりする。それなのに日本で配給されず、見られなかったりするというようなことが、少し残念で。残念というかチャゼルとかは『セッション』ですごいヒットしましたけど、なんかロバーツ監督の場合、惜しいなというのが今聞いていて思ったんですが。

門間:そうですね。これ2013年の作品ですけど、上映されるのは今。ただ、2年間くらい寝かせたのが実は良かったな、というのがあって……

降矢:あ、そうですか。

門間:やっぱその最大のポイントはニック・ロビンソン。

玉田:主人公の子ですね。

門間:今日いらしている方もひょっとしたらやっぱりニック・ロビンソンというところがひっかかって見に来られているかもしれないですけど、『ジュラシック・ワールド』があって、そこに出演するくらいにキャリアを重ねてきた。それがなかったら日本ではこの映画は本当ノンスターというか、難しいというか。でも、今、2年くらい経つと、あぁこういう人が出ていたんだっていうことになる。ジョーダン・フォークト=ロバーツもその間に色んなメジャー作品が決まって、実際に動き始めている作品もあったりするので、だから逆に良いタイミングだったんじゃないですか。

降矢:そう言っていただけるとありがたいとうか(笑)。

門間:たぶん公開を本国でした当時だと、監督も新人で、ウィキペディア調べてもなんか生年月日わかんないし、写真も髭モジャで……

会場:笑

門間:こんな髭モジャの人とやり取りするのもちょっとどうなんだろう、なんか面倒くさいんじゃないかっていう感じがあったかもしれないんですけど、やっぱ良いタイミング、すごいタイムリーな上映だと思いますけどね。

★次回作、リブート版『キング・コング』について

降矢:ジョーダン・フォークト=ロバーツ監督は、このあとに『キング・コング』の新作、キング・コングが誕生した理由の映画で一気に大きな映画に移っている。あとこれは噂でまだ確定ではないみたいなんですけど、皆さんご存知の方も多いかもしれませんが、メタルギアソリッドというゲーム、だからこれもゲームですよね、そのゲームの実写版映画の監督に抜擢されたという噂が流れている。

門間:そうですね。なんかメタルギアは実写映画化されるという話は随分前から噂があって、立ち上がっては消えて、というのが繰り返して、実際彼も撮るのかどうかわからない感じではありますけどね。先にもう『キング・コング』のリブート版と言っていいと思うんですけど、これはトム・ヒドルストンとかブリー・ラーソンとかが出演して、制作準備にも入っているんで、確実に動いているという話です。先頃、ニュースで知りましたけれど、ワーナーが配給するってことになったのかな?
で、どうやらその先々に製作会社側が考えているのは、『キングコング』と『ゴジラ』シリーズというのを、どこかでまた組み合わせた、ようするにキング・コング対ゴジラですよね。それをいずれ作るのが目的じゃないか、というのが言われていて、まあ『アベンジャーズ』みたいなところですよね。今、ハリウッドのメジャー作品が、良くも悪くもってところありますけど、ああいうなんかアッセンブルものというんですかね、みんな大集合するのを、ある種のシリーズもののクライマックスにして、それでこうクッションを置いてどんどん続けていくというのをどこもやり始めようとしていて。
まあ「マーベル」しかり「DCコミックス」ものもそうですし。そのあたりで、じゃあモンスター映画、あれは怪獣映画でありモンスター映画ですけど、そっちの全員集合ものも作りたいというところがあるんじゃないかなという気がしますけどね。
まあそんな『GODZLLA』は『GODZLLA』で、ギャレス・エドワーズ、この人も元々インディペンデントの監督でしたけど、彼が新しくシリーズ化して興行的に成功していますし、キング・コングもロバーツ監督が作って、いざどうなるのかというところでは、すごく注目だし、とにかく彼って彼なりの味、作家性がすでにあるので、そういう部分ではキング・コングという素材をどう料理してくれるのかなというのは、すごい楽しみですけどね。

★ビジュアルによるストーリーテリング

降矢:『キングス・オブ・サマー』で、すでに視覚的で単純かつ純粋に面白い仕掛けというのが見て取れるので、今後どういう表現になっていくのか、それこそ『メタルギアソリッド』を撮るのかわからないですけど、もうすでに『メタルギアソリッド』撮りたいです、みたいなものが『キングス・オブ・サマー』で感じますよね。

玉田:ビジュアル面で。

門間:そうですね。ビジュアルというところで言うと、さっきこの映画というのは元々脚本があって、そこに後から乗っかったという話をしましたけど、どうもその後の色んなインタビューを読むと、脚本を大幅にフォークト=ロバーツが変えているらしいんですね。元々の脚本はクリス・ギャレッタっていう人が書いていて、色々調べてみても、その後脚本家として作り続けている人ではないんですね。彼の脚本はもっと説明的で言葉がたくさんあったらしい。フォークト=ロバーツはそれを読んで、大筋のストーリーにはすごく感動したんだけど、非常に言葉が多い、説明的だということで、もっと視覚化しなきゃいけなかったと言っている。言葉ももっと少なくするんだということを言ったらしいんです。で、なんか彼はテレンス・マリックみたいにしたいんだってずっと言っていたらしんですよ。

降矢&玉田:あー(笑)。

門間:インタビューでも、「テレンス・マリックみたいにしたんだ(笑)」と。

降矢:マジックアワーを撮りたい、みたいな(笑)。

門間:でもこれをご覧になった方は、なんとなく腑に落ちる、わかるんじゃないかなって気はするんですよね。あの3人が関係を深めていく部分。色んな体験を皆でして、徐々に絆が深まってくる、距離が近づいてくるわけですけど、そこの部分というのをギュッと映像だけで、まさにハイスピードカメラを使った映像で様々なシーンを撮って、それを繋げていき、セリフもなくバックには音楽を流して、それだけでたぶん3人の友情とか距離の近づく様を見せてくれるんですよね。だから彼はやっぱり「言葉に頼っちゃいけないんだ」と言っている。

降矢:なるほど。今そのお話を聞いて、主人公のジョーとパトリックが、女の子のことで仲違いして別れたあと、病院で再会しますけど、二人の間には一切セリフがなく、ラストまでもっていくという距離感というか関係性を思い出しました。

門間:言葉でどうしても説明したくなりますよね、当たり前ですけど。特に長編一作目で、ちゃんと観客にわかって欲しい、届けたいと。そこをこの監督は大体に言葉をカットして映像だけにする。でも映像だけで届くし、俺は届けたいんだという強力な彼のメッセージになっている。彼はそういう映画を作りたいんだということが今の時点で明確になっていて、そこがはっきりわかりますよね。ラストシーン、二つの車に別れて、パトリックは横に彼女が乗っているにもかかわらず、心というのは車で隔てられているジョーとの間のほうが、実は密に今繋がっている。なんかそこがブロマンス。これはパンフレットでも少し触れましたけど、アメリカの青春映画の一つのトレンドみたいなものがあって、『スーパーバッド』とかああいった作品以降、男同士のもはや恋愛感情に近いくらいの友情を描く作品……

降矢:恋愛よりも男の友情を取る、というような感じですよね、ブロマンスは。

★青春映画のベーシックとブロマンス

門間:ええ。『ハングオーバー』とかに近いものをほかのシーンでも感じますよね。根底に描かれているものというか。たしかケリーですよね……

降矢:女の子の名前はケリーですね、はい。

門間:ケリーが結局二人の間に入ってくることによって、ジョーとパトリックの関係性が、ちょっとずつ変わっていってしまう。女性というのが男性同士の友情を阻む要因として出てくるんですよね。

降矢:はい、そうですね。

門間:彼女がいなければ、僕たちは楽しく幸せに青春生活を送れていたのに、なんで彼女が……という、割とそういう目線じゃないですか、ここで描かれていることは。だからそのあたりが、変にラブストーリーの方に引っぱっていかずに、着地させるという意味で、この何年間かの流れの中でちゃんと作られているなあと思いましたね。そのあたりはすごく面白いと思いました。
あとひとつ思ったことがあって、彼のプロフィールみたいなものを調べていたときに、彼がどういった監督を尊敬しているのかということが触れられていたんですね。で、いくつかのインタビューで彼が挙げている名前があるんですけど、普通に「あなたが気になっている監督は?」と聞くと、パク・チャヌクとかポン・ジュノとかキム・ジウンとか韓国映画のクリエイターの名前を結構挙げているので、決してこの人はアメリカの映画ばかり見ている人ではなく、コメディばかりでもないし、幅広く映画をちゃんと見て作っている人なんだなあって思いました。
あともっと具体的に、「この映画にインスピレーションを与えた映画はなにか?」ということを聞かれたときに彼が答えたのは、アンブリン・エンターテインメントが製作していたような映画や、ジョン・ヒューズが作っていたような映画と言っているんですよ。『スタンド・バイ・ミー』とか具体的な名前も出てくるんですけど。で、これ最初見たときに思ったのは、青春映画のすごくベーシックな部分というのは、僕が最初に言ったことですけど、やっぱり『スタンド・バイ・ミー』的な部分かなあと思ったんですね。青春映画というのは、子どもから大人へと成長する過程であったり、そこではっきりと少年時代と決別したりする。
そういうのを一つの青春映画として捉えるなら、まさしく『キングス・オブ・サマー』は、そこの過程を描いている作品だし、実際にジョーとパトリックの二人ともなにが原因で家を飛び出すのかといったら、親との色々な不和というんですかね、親との関係性が上手くいってないんですよね。そこからなんとか抜け出したい。抜け出して大人になりたいんだ、自分たちは子ども扱いされているけど、大人になりたいんだ、ということで飛び出していく。そこでどこに向かうのかとなると、森の中へ向かう。それが『スタンド・バイ・ミー』の少年たちが死体を探しに今ここから違うところへ飛び出していく、そして森を冒険していくというところとすごく重なるなあと思って、そのあたりの類似性というものは感じましたね。

★森と秘密基地

降矢:その森の中に行くとか、自分たちの世界を親の世界から離れて構築していくというときに、ちょっとお話がずれるかもしれないですけど、秘密基地が描かれる映画というのを、パンフレットに書くために探していたんですね。で、この映画が本当にユニークなのは、まず自ら建物を建ててしまう。そして色々失敗してはいましたけど、「獲物を狩る」とか「湯を沸かす」とか、そういったいわゆるストーリーにならない、無駄なものをきちんと描くその仕方。映画のストーリーにはならないけど、ただ実際に飛び出したら、まさにそういった問題に直面するだろう、みたいなところを、まさにセリフではなく具体的な運動とビジュアルで見せていくところが、かなりユニークだなと。話だけを聞くと、なんかスカスカな感じというか、ほとんどお話なんかないんじゃないかと思うかもしれないんですけど、実際に見てみると、いわゆるお話ではないようなものの残り方がある。具体的なそういう描写はすごい面白いなと思って見ていたんですね。

門間:そうですね。だからこれは脚本として見たときには、かなりフラットというか……

降矢:そうですよね。女の子が来た瞬間に、ああこれは……

玉田:友情が崩れるなっていうのがわかる。

降矢:でも、そこがまさにフォークト=ロバーツ監督のやりたいこと、作家性というのが良く出ているところなのではないかな、と。

門間:だから『キング・コング』とか撮りますけど、なんかこんな感じになっているのかなぁって想像すると、それは良いのかどうなのかってなりますよね(笑)。『キング・コング』でテレンス・マリック風に撮るとなると、まぁどうなるのか……。

降矢:もちろんそうなったらどうなるんだろうって、見てみたい気持ちはありますけどね。

門間:うん。だから森の中に行くという行動について、『スタンド・バイ・ミー』とか、パンフレットでは『グーニーズ』を挙げましたけど、これはそのアンブリン・エンターテインメントということをフォークト=ロバーツが具体的に挙げていているからです。そこはスティーブン・スピルバーグが関わっている製作プロダクションですけど、『E.T.』はギリギリ違うんですかね?(※『E.T.』もアンブリン・エンターテインメント製作の映画である。)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズとか『グーニーズ』とかああいった作品を作ってきたプロダクションですが、たとえば『グーニーズ』は家のすぐ近くに、実は地下に広がる秘密の隠し場所、洞窟があってそこで冒険を繰り広げるという話。家のちょっと外に目を転じたときに、そういった自分の知らない冒険の出来る場所が広がっているんだっていうことの一つのそのバージョン違いというので、森というのが出てくるんですけど、じゃあ森に少年たちが逃れていくって、絶対日本映画ではないし、日本の青春映画で少年たちが森へ行く、少女たちが森へ行く、みたいな話って見たことないですよね。

降矢:こういう風に思いっきり森が舞台で、というのはあまり思い浮かばないですね。

玉田:そうですね。しかも友達三人で家を建てる、みたいなものは。

門間:ヨーロッパの映画でもそんなにないし、試しに、あるかなと思って、「日本 青春映画 森」で検索したんですよ。

会場:笑

降矢:すごい検索ワードですけど(笑)。

門間:そうしたら、映画評論家の森直人さんがトップで出てきちゃうくらい……

会場:笑

★森と現代アメリカのリアリティ

門間:なにもヒットするものがないということですね。だから森に行くというのがすごくアメリカ映画らしいポイントだなあって思ったし、アメリカ映画、いや映画だけじゃなくて小説とかカルチャーになんとなく残っているものとして、物質主義だとか、そういったものから逃れるために、森へ向かうという一つの思想みたいなものが脈々と受け継がれている。それはソローの『森の生活』といったところにたぶん端を発したものだと思うんですけど、近年だと『イントゥ・ザ・ワイルド』という……

降矢:エミール・ハーシュ主演でショーン・ペン監督の。

門間:ええ。まあ元々実際にあった話をノンフィクション化して、それを映画化したという作品ですけど、あれもまさに家の問題に悩んでいた少年、青年が家を飛び出して森へ行く話ですね。で、やっぱり家みたいなところからどこかへ逃避するときに、森とか自然が選択肢の一つとしてある。そういったところへ逃れていくということが、一つの選択肢としてたぶんアメリカのカルチャーの中に根付いている。そういうところがあるから、このような作品も可能になっているし、ちょうど今『わたしに会うための1600キロ』というタイトルで公開になっている映画がありますけど、原題が『WILD』で、これはまあ少年とか少女じゃなくて、大人の女性ですけど、やっぱり色んな問題を抱えた女性が、そこから逃れて、なんとか生きる術を見出そうと思って自然の中へと踏み入っていく。そういう部分がまず日本では出来ないし、アメリカでしか出来ない設定で、そこが素晴しいなと思いましたね。

降矢:そうですね。この『キングス・オブ・サマー』には日本好き、みたいなものもありますけど、アメリカの精神と言っていいのかわかりませんが、そういった根本的な部分が、監督にもこの作品にも現れている感じですかね。

門間:ただ、これまたフォークト=ロバーツが実際にインタビューなどで発言していて、その部分はパンフレットでもちょっと触れているんですけど、そんなアメリカでも森へ踏み出すとか、そういったことが近年は実際出来なくなってきているんだと言っている。一番の契機は9.11だと思うんですけど、今はやっぱりアメリカといっても、そういう危険が潜んでいる場所は全部潰していこうということで、監視社会化が進んでいるから、そういった場所で子どもを野放しにするとか、そういうことは出来なくなってきている。だからこの映画は、自然へ少年たちが踏み入っていくんですけど、『スタンド・バイ・ミー』のように遠い距離を旅するわけではないですよね。

降矢:ああ、そうですね。ちょっと裏に出るとすぐファストフード店があるあの距離感。

門間:ええ。それをそうやって利用しちゃったりしている。で、ここが、まあ脚本の段階でどうなっていたのかわからないですけど、フォークト=ロバーツのリアリティだなと。現在でも嘘くさくならないリアリティというのをちゃんと保っている。我々が、どこか少年たちが遠くへ旅をする映画を見たときには、アメリカってこういう国なのかなぁと、ひょっとしたら思ってしまうかもしれないけど、やっぱりもう現実的にはそうではないということをちゃんと踏まえて、その中で少年たちがギリギリ15歳のリアリティでなにが出来るか、なにが冒険なのかということの答えとして、森に隠れ家を作るという行為自体がすごく魅力的でもあるし、実際にリアリティもそこで失われていないし、そこが上手い答えの見出し方だなあと思いますよね。だからこれからのアメリカ映画からも、大人は全然そういうのは出来るんでしょうけど、子どもたちが親元から離れて、どこまででも旅していけるというのは、ひょっとしたらなくなってくるのかもしれない。

降矢:なるほど。

門間:そういう状況で、青春映画の子どもたちがどこかへ冒険をする映画の系譜みたいなものをこれから辿っていくときに、意外とこの映画を基準として新しい流れが出来たということになるかもしれないなって。そういうことも思いましたね。

降矢:実は、そろそろお時間の方が来てしまいました。おそらく日本で初めてのフォークト=ロバーツ監督についてのお話だったと思います。とても興味深いお話ありがとうございました。


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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