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Honour of the Knights

Honor de cavalleria(Honour of the Knights)

1970年代~, ドラマ

監督:アルベルト・セーラ / 上映時間:107分

くたびれた鎧を纏った白髪の老人と、それに付き従う寡黙な太った若者……。名作『ドン・キホーテ』の描かれざる道中を描いた、スペイン人監督アルベルト・セーラによる静かなる冒険の物語。

人気のない草原を、老人ドン・キホーテと太った若者サンチョ・パンサがゆっくりと進んでいく。汚れた服装に冒険を謳歌する活気はなく、替わりに慢性的な疲労感が二人を包んでいる。しかし歩みを止めることもなく、二人は草原を行き、森を抜け、川で身体を休めて再び進む。その間ただ黙ってついて来るサンチョに、キホーテはこの世の憂いを説き、自らの信念である騎士道の大切さを伝え続ける。どこまでも続くスペインの大自然と、そこを進むふたりの距離。そして流れ続ける無限にも思える時間。

そんな旅路のなかでやがてキホーテは、神に定められた自らの死を予感し始めるのだった……。

詳しいあらすじ

夕暮れどき、木々に覆われた草原に座り込む老人ドン・キホーテと従者のサンチョ・パンサ。キホーテは自分の体に合わず着ると痛みを感じる鎧をサンチョに修理するよう頼んでいたが、サンチョは特に作業をしているようには見えない。それでも直ったといい張るサンチョに、今度は月桂冠(月桂樹の葉の付いた枝をリング状に編んだ冠)を探してくるよう頼むキホーテ。サンチョはのっそりと起き上がると辺りの草むらを捜しはじめる。やがて月桂冠を作り終え座り込むサンチョに、キホーテは眠るように告げる。

明け方鎧をまとい、月桂冠を頭に載せたキホーテが眠っているサンチョを起こす。寝ていたサンチョに、いびきをかいていた指摘するキホーテ。やがてサンチョはキホーテの馬と自分のロバを連れてきて、キホーテが剣などの装備をつけるのを手伝う。手間取るサンチョに、まだ寝てるのか?と小言じみたことを言うキホーテ。それから、自分より道を知っているサンチョに先頭に立って進むよう頼み、二人はそれぞれ馬とロバを引いて歩き出す。前を行くサンチョに「我々は徐々に上手くやれている」と言うキホーテ。

どこからか犬の鳴き声が聞こえ、犬を飼ったことがあるかとキホーテが尋ねると、何匹か飼っていたがあまり好きではないとサンチョは答える。それから犬の鳴き声はオオカミみたいだというサンチョに犬に噛まれたりしたことがあるのかと聞くと、サンチョは笑って、そうではないが一度怖い思いをしたと言う。噛まれてはいないが、吠えられたのだと。そんな話をしていると、やがて遠くの空に朝日が昇り始める。

日差しの強い林の中、木に寄りかかり項垂れるサンチョに、疲れているんだろうが元気を出せと言うキホーテ。そして空に向かって叫び、神に強さを与えてもらうよう促す。キホーテに言われるがままに、「神よ、我らを見捨てないで下さい!」と叫ぶサンチョ。キホーテは、少し休めば神が強さを下さると言い、お前はもう強くなっていると言い聞かせる。
やがて、林のなかで見つけた死んだ木を見て美しいと言うキホーテだが、それを眺めるキホーテの顔にも、サンチョの顔にも、馬の顔にも無数の蠅が煩わしく止まる。

暮れてきたころ、草むらに腰掛けたキホーテはサンチョに、(さっき)雨は降ってなかったと自分に言ったが、お前は眠っていたんだろう。馬もロバも濡れていたぞ。それに、今カタツムリがたくさんいるのは雨が降ったからなのに、お前はそれもわかっていないと責める。そして、お前はそそっかしいがそれでも私はお前が好きだと告げるが、やはり大きな嵐が来たのにお前は眠っていたから気付かなかったのだ、お前といると時間を無駄にするとしつこく責め、私がなにか言ったらよく聞くんだと命令する。それから、それでもお前を愛しているから、理解できなくても私についてくるんだ、命令をするのは神であり、ランスロット(円卓の騎士の一員)や他の誰の言うことも聞くなと言う。それから、ランスロットは立派なひとだったがここにはいない。しかしお前を助けるために私をここにやったのだ、だから私が言ったことを成すのだと言い聞かせる。
川に出ると、キホーテは体を冷やすために泳ぎ始め、旅で疲れている自分たちには水場は天国だと言い、入りたくないというサンチョも半ば無理やり川に入らせる。これはクリスチャンの水だと言ってはしゃぐキホーテと、渋々なかに入るサンチョ。川から上がると、少し休むことにする二人。トンは川を前にして、神の御業について考えようと言い、この川は神の恵みで、ここ数日暑すぎたと話す。それから二人は石で割ったクルミやチーズを食べ始め、キホーテはかつての黄金時代は素晴らしく、悪魔もおらず、争いもなく、人は人を愛していたと話す。アダムとイブのころも問題はなかったが、黄金時代の方がいい。平和と静寂の時代であった、と。そして、私たちはどうにかして努力して強くならなければならず、神が強さを与えてくれるため我々騎士は無敵だとサンチョに告げる。

夜、火を囲み横になる二人。キホーテはサンチョに布をかけてやる。

風の強い昼下がり、キホーテはひとりで低い木が整然と並ぶ平地に迷い込む。そこでキホーテは、古く錆びた甲冑の騎士が立っているのを見つける。ひとり待ち呆けるサンチョ。

夕暮れの赤い空に向かって悪態をつくキホーテ。神がヤツを罰するだろうとサンチョに告げる。

長い山道を歩く二人。やがて二人の間に距離が生まれ、キホーテは遅れているサンチョに怒っているのか?と声をかける。しかしそれにはっきり答えないサンチョに逆にキホーテも声を荒げ、直ぐに来るよう命じる。しかしサンチョはそれを無視し、キホーテと反対の方向に歩き出す。お前ひとりでは道に迷うから戻ってこいというキホーテの言葉も聞いていない。何度も戻るよう呼ぶキホーテだが、戻らないとわかると、クソ野郎、役立たずとサンチョを罵り始める。それでも名残惜しそうに声を掛けるが、やがてキホーテもひとり歩き出す。
しかしすぐにサンチョの後を追い、お前は道に迷っていた、私もお前と同じように道に迷っていたが、自分の道を見つけた、などとあれこれ言い、一緒に行こう、神が私とお前は兄弟だと言っている、私が兄貴だと言いサンチョに手を引いてもらう。そして丘に登ると空を見上げ、サンチョと共に空に向かって”神よ、あなたは最高だ!”と叫ぶ。そして空に、サンチョを助け、お導き下さいと訴える

鳥の鳴き声が聞こえ、キホーテはサンチョに鳥に詳しいか聞き、サンチョはキホーテに一冊の本(恐らく鳥についての本)を渡す。サンチョは、大きい鳥だが危険そうには見えないと言い、キホーテはこの鳥は戻ってくる、群れを探しているんだと話す。二人は岩に腰掛けたままキホーテは本を読み、サンチョは空を見つめ日は暮れていく。
夜になりサンチョは依然空を見上げたまま、あの鳥は我々の上を通り過ぎていくけど見つけれられないと呟く。そんな二人の頭上を月がゆっくりと登って行く。

真夜中、草原で寝ている二人のもとへ馬に乗った数人の男たちが現れ、キホーテを馬に乗せ去っていく。
明くる日サンチョはひとり草原で草花を摘み、キホーテは山の上で空に向かってサンチョの名を呼ぶ。

やがてサンチョのもとへひとりの騎士が訪れ、騎士がサンチョになにをしているんだと尋ねると、”たくさんの冒険です”と答える。そして冒険とは、『騎士道の冒険』だと言う。しかし子供のころから冒険や騎士道が好きだったのかと聞かれると、そうではないと言う。人を殺したことがあるかという問いには、自分はないがキホーテは剣で2人殺したことがあると教える。どうやって殺したのか教えて欲しいと頼まれるが、サンチョは適当にやってみせるだけ。なぜ一緒に旅をしているのかという質問には、キホーテとこうして冒険しているのが好きだからと答えるが、もしキホーテがいなくてもこんなことしているかと問われると、わからないと呟く。そして、自分はキホーテに評価されているし、自分は彼を待つのだと言う。帰った方がよくはないかと聞かれると、そうかもしれないと答えるが、旅を終えてもなにをするかは決まってないと話す。そして以前は大工をしていたというサンチョに、騎士はそれなら自分で家を建てて暮らせばいいと言うが、サンチョは自分だけでは家は建てられない答える。

合流した二人。キホーテはサンチョに話す。我々はたくさんの冒険に勝利してきたが、私は悲しい。悪い人々がいるために、人生は悲しみである。神は私に死の道を示し、”来なさい、キホーテ”と呼ぶのだ、と。そして、私は疲れた、私は死ななければならないが、しかしお前は引き続き私の道を行くのだとサンチョに言う。必ず成し遂げると約束してほしい、私はお前を信じている、と。そして、最愛なるお前を天国で見守っているというキホーテに、サンチョも了解する。キホーテはサンチョに、お前と離れ泣きたい気分だと呟く。

キホーテはサンチョに、”騎士道は文明だ”と説く。騎士道は、真実を告げるひとに報い、嘘をつくひとを罰するもので、騎士道は行動倫理でありお前にはそれが出来ると言って聞かせるのだった。
再び歩き出した二人を雨が濡らすが、それでも歩を止めずに進んでいく。

そして夜を迎え、キホーテは男たちに先導され、檻に入れられ引かれていく。そのすぐ後を連れ添って歩くサンチョ。そして一行は森の奥深くへと進んで行くのだった。

  • 監督:アルベルト・セーラ
  • 脚本:アルベルト・セラ
  • 原作:ミゲル・デ・セルバンテス
  • 撮影:Christophe Farnarier
  • 音楽:フェラン・フォント
  • 製作会社:Andergraun Films
  • 配給:Soda pictures Ltd
  • 製作年:2006年
  • 上映時間:107分
  • 出演:ルイス・カルボ ルイス・セラ

COMMENT

デジタルカメラが映す古典の新解釈

小説『ドン・キホーテ』の大まかな筋は、騎士道物語狂の老人が自らもと勇んで旅に出るというものだが、本作にはかの有名な風車と戦うシーンも出てこなければ主人公が慕う姫君も登場しない。代わりに映り続けるのは引退したテニスコーチが演じるドン・キホーテと、建設作業員が演じるサンチョ・パンサ。そして際限なく広がる野山だけである。 2013年の作品『Història de la meva mort』でロカルノ映画祭金豹賞受賞経験もあるアルベルト・セーラ監督は、本作を決して高価ではないデジタルカメラで撮りあげたという。全編で流れる細かな自然の音は、一つ一つが物語との関わりを持つ。ヘッドホンなどを使いじっくり耳を傾けるのもいいかもしれない。

ちなみに本作は以前東京日仏学院の特集上映「カプリッチ・フィルムズ ベスト・セレクション」にて邦題『騎士の名誉』という題名で数回上映された経験がある。


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