Gucchi's Free School

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Killer of Sheep

1970年代~, ドラマ

監督:チャールズ・バーネット / 上映時間:83分

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。

1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。
子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。
そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

詳しいあらすじ

少年がひとり、父親に怒鳴り散らされている。
兄弟が喧嘩でヤられていた時になにもせずに見ていたからだという。
そういう時はなんとかしてやっつけるか、無理なら自分のところへ連れてこいという父親。
もう子供じゃないのだから、人生について学んでいけと息子を諭す。

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ロサンゼルス郊外にある線路沿いの空き地で、石を投げあい遊ぶ子供たち。列車が来ると、一斉に石をぶつける。ひとりがクラブに売春婦を見に行こうと持ちかけるが、警察を呼ばれるからやめておくという。そんななか、スタンJr.はひとり、BBガン(エアガン)を取りに行くと行って帰る。
帰り道、二人組の若者が人家からテレビを盗み出しているところに遭遇するスタンJr.。立ち去ろうとする二人に、「隣の庭で見ていた男が通報しようとしてるよ」と教えてやるスタンJr.。

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家の戸棚を修理しているスタン。友人のオスカーに向かって、自分は地獄で働き、夜も眠れず心に平安がないと朧げな表情で話す。自殺するれば楽になるぞというオスカーに、自殺はしないが、なにか、誰かに害をなす気がするというスタン。しばらく教会にも行ってないというスタンに、自分には助けられないというオスカー。そこへ帰ってきたスタンJr.が、動物のマスクを被った妹にBBガンの場所を聞き、家を飛び出していく。入れ替わるようにブレイシーとコックスがやってくる。オスカーは二人に金をせびられるのを嫌い家を出て行く。二人は入ってくると、スタンの妻が車を牽引されているのを見かけたとスタンに教える。オスカーの居所を探す二人は、香水の匂いからオスカーがいたことを言い当て、コックスは追いかけて出ていく。
残ったブレイシーとゲームをしながらコーヒーを飲むスタンは、頬にカップを近づけた時、Sexを始める前の温かさを思い出さないかと尋ね、「俺はマラリアの女とはやらないよ」と笑い飛ばされる。やがてスタンが仕事へ出かけようとすると、ブレイシーは「運が良ければ奴隷を見物出来るかもしれない」と言う。

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肉の加工場(屠畜場)で、真面目に仕事に励むスタン。

台所に立つスタンの妻は、料理をしながらも身だしなみに余念がない。音楽に合わせて歌う娘に微笑みかける妻。一方で食卓でスタンと向き合うと、スタンが笑わなくなり、また不幸そうに見えることを心配し、寝るよう促す。

空き地で遊ぶ子供達。スタンJr.はひとり独楽をまわして遊ぶ。

加工場で白人と共に作業するスタン。

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男が二人スタンの家を訪れ、殺人に協力してくれないかと持ちかけてくる。誰かからスタンのことを聞いてきたらしいが、話を聞くのも嫌がるスタン。すると誰か口の硬いやつを知らないかと尋ね、なおも嫌がるスタンに、銃を貸してくれと言い寄る。銃なんてないとスタンが答えていると、中で話を聞いていてた妻が出てきて、なぜあんたたちみたいな男はいつも人を傷つけるのかと問い詰める。男たちは、それが自然の摂理で、傷を負うのが男の世界だからしょうがないと嘯き、スタンにも男になれと言う。それに対して妻は、まだジャングルにでも住んでるつもりか、頭を使えと罵る。なおも黒人同士助け合おうという男たちを追い返す妻。二人が去った後、夫婦の佇む玄関に子供達も外に出てくる。裸足で出てきた娘を叱る妻と、母親を「M’dear」と呼んだ息子を怒鳴るスタン。

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道で遊ぶ女の子たちのなかを、自転車に乗った少年が強引に通ろうとするが、逆に自転車から引き摺り下ろされ泣かされて帰る。

家のそばで、スタンとブレイシーともう一人の友人ジーンが、向かいのアパートについて話しているのを見ているスタンの娘。すると窓から母親が顔を出し、大人の話を聞いちゃダメと叱る。
故障しているスタンの車のエンジンの話をしている三人。新しいのはちょっといいやつにしなよというジーンに、「バカを言うな、俺たちは中流階級なんだぞ」と言い放つプレイシー。それに対しスタンは、自分は貧しくないし、貧しくもならないと反論する。そして、明日小切手を換金してシビルのところへ新しいエンジンを買いに行くと話す。

スタンJr.が家でシリアルを食べていると妹が来て、なぜ家にいるのかと聞いてくる。金が欲しいからだ答えるスタンJr.。

スーパーマーケットの駐車場で男と女が、荷物をまとめて出て行け、あんたこそ出て行けと言い争っている。車に乗った後も、車から出て行けと罵る女。その隣にスタンが車を停める。
スーパーのなかでは、ひとりの黒人が小切手を換金しようとして店員に断られている。入れ違いで入ってきたスタンも同じように小切手を換金しようとすると、あっさり了承され、うちで働かないかと誘われる。強盗が怖いからと断るスタンに、私が守るわよと言う白人の女主人。

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ジーンと共にエンジンを売ってもらう約束の家まで行くと、なかでシビルの甥っ子が怪我をして寝ている。どうしたのか尋ねると、アドというやつに理由もなくやられたと言う。そんな甥は義姉に居候してないで出て行けと言われる。エンジンの価格の話になり、15ドルで売ってくれというと甥っ子が売らなくていいと反対する。そんな甥っ子に対し、そういう横柄な態度を取らなければハンサムなのにと義姉がいうと、クラーク・ゲーブルに似ていると言われることもあるんだと本人は調子付く。それからまた罵り合った末、義姉は怪我をしている甥っ子の頭を蹴りつけ、スタンは心配するがシビルは全く気にする風でない。そんなことよりも15ドルと、担保にシャツを置いて行けと言う。家からエンジンを運び出すスタンとジーンだが、車に積んでいざ出発すると、荷台からエンジンが転げ落ちる。壊れてもう動かないだろうと、エンジンを道に置いていく二人。

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アパートが密集する住宅地へ車を止めるスタンとジーン。近くのアパートでは、夫婦喧嘩に人だかりができている。妻は拳銃を持ち出し、夫は部屋に近づけずにいる。スタンはそれを眺めている人の輪に入るが、ふと自分が金を貸しているトルーマンによく似た男を見つけ呼び止める。人違いとわかったが、どこか金が得られる所を知らないかとその男に聞くと、店に強盗に入ればいいとあっさり言われてしまい、怒り呆れるスタン。

家の、大きな窓の前で踊るスタンと妻。情熱を見せる妻に対し、スタンは無表情のまま動きに応じる。やがてレコードの音が止まると、スタンは妻を残し部屋を出て行く。妻は一人窓枠に腰を下ろし、呟く。「あの人はもう私のものではないみたい。まるで半分食べられたケーキのように。裏庭のフェンスに張られたウサギの皮のように。お婆ちゃん、お母さん。太陽の下、帽子も被らず白い手袋をして、赤いナマズのハラワタを取るお母さんの影が家のポーチに伸びている」と。
子供達は街で自転車を乗り回し、スタンの働く工場では作業員たちが羊を解体している。

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スタンの家の前では少年たちが逆立ちをして遊んでいる。

食卓ではスタンの家族四人が食事を終える。スタンは妻に今日はなにをしていたか聞くが、これといった応えはない。スタンは妻に、仕事を見つけなければと話す。妻は明日は土曜日よと言い、スタンをベッドへ誘う。スタンがそれに応えずにいると、妻は怒ったように居間を出て行く。代わりに、スタンのもとには娘が来て、スタンは愛おしそうに娘を眺める。それを隣室から切なそうに眺める妻。

車をいじるジーン。ジーンの妻ダイアンが、家に食料が必要だと言う。なけなしのお金を車の修理に使うべきじゃないと主張する。気にするな、ヤバくなったら売ればいいと応えるジーン。
そこにスタンがやってきて、ジーンにお金を渡す。エリー宅のガレージを掃除したら5ドルと桃缶を貰ったと話すスタン。ダイアンに桃缶を渡そうとするが、断られる。
ジーンに家に招かれるスタン。家の中では男たちがゲームをしている。

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ジーン夫婦、スタン、スタンの妻、娘、それからブレイシーが競馬場へと小旅行に出掛けようと車に乗り込む。スピードを出し過ぎないよう、妻のダイアンはジーンの運転に文句を言う。ジーンは、もし小銭があれば、夜のレースに賭けるのにと話す。
車はやがてタイヤのパンクのため止まってしまう。ブレイシーはスペアタイヤを積んでないことを罵り、車はなくなく来た道を引き返す。
スタンたちが家に帰ると玄関の鍵が開いていて、息子スタンJr.の仕業だったら許さないと妻は怒る。
外では雨が降り出し、屋根の修理が必要ねと妻はスタンに言う。スタンはそれには応えず、怠そうにソファに身を沈める。
そんなスタンに娘が、「なぜ雨は降るの?」と尋ねる。スタンは、「悪魔が自分の女房を殴るからだよ」と冗談を言い、娘と妻は笑う。妻が側に来て「本当?」と尋ねるが、スタンはただ微笑む。

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スタンの妻が外に出て、息子を大声で呼ぶ。「聞こえてるのはわかっているのよ」と言うが、それをスタンJr.たちは別の家の屋根の上で聞いている。

スタンの家に杖をついた女性が訪ねてきて、妊娠したことを嬉しそうに告げる。

スタンは黙々と、加工場で仕事を続けていく。

  • 監督:チャールズ・バーネット
  • 脚本:チャールズ・バーネット
  • 撮影:チャールズ・バーネット
  • 編集:チャールズ・バーネット
  • 配給:Milestone Films
  • 製作年:1978年
  • 上映時間:83分
  • 出演:スタン・G・サンダース、ケイシー・ムーア、チャールズ・ブレイシー

COMMENT

30年の時を経て

本作はチャールズ・バーネットがUCLA映画学部の卒業制作として1978年に監督し、その後1981年にベルリン映画祭国際評論家連盟賞を受賞するも、2007年に再リリースとして上映・DVD化されるまで長く人々の目に触れる機会はなかった。

1990年にはアメリカ議会図書館に永久保存する映画として選出され、2013年には同じ黒人監督スパイク・リーが発表した「映画業界を志望するひとが観るべき映画86本」にも往年の名作とともに選ばれるなど各所から評判の高かったこの作品。そんな待望作が長く日の目を見なかった理由は、映画を彩る印象的な「音楽」にあった。

本作の劇中では“ブルースの女王”ことダイナ・ワシントンを始め、ルイ・アームストロングやアース・ウィンド・アンド・ファイアー、ジョージ・ガーシュウィンなど黒人音楽を辿る上で重要なアーティストたちの音楽が随所で流れ、スラム街の一種淡々とした人々の生活を、和やかに、時に力強く照らし出している。
しかしこれらの曲の多くは、本作に使用する権利を得られていなかった。つまり我々が本作を鑑賞できなかった大きな理由のひとつは、劇中音楽の版権の問題によるものだったのだ。

それらの問題を乗り越え、製作から30年近くたちようやく広く観られるようになった本作。最終的に権利の問題で差し替えられた楽曲もあるが、公開を巡る“鍵”となったこれらの音楽にも、十分注目して鑑賞したい。


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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