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「写宅部!」(プレミア映写を宅でする部)11日目-遠征編-

リッカルド・ミラーニ監督『これが私の人生設計』の試写で見せていただいたので、写宅部の遠征編を始めたいと思います。(2016年3月5日(土)新宿ピカデリー他にて公開です!)
この作品、2015年のイタリア映画祭にて『生きていてすみません!』のタイトルで一度公開されております。ご覧になった方もいるのではないでしょうか。

映画は、建築家として天才的な才能を持つセレーナだが、男性優位の(イタリア)建築界では女性ということでまったく相手にされず、知り合いの男性に上司のフリをしてもらい、集合住宅のリフォームコンペを勝ち取り……というお話をとてもユーモラスに描いた作品です。主演のパオラ・コルテッレージのまさしく正統派イタリア・コメディエンヌといったもので、女優の映画でもあると言ってよいかと思います。

さて、ある社会の構造(ここでは建築界の男性優位構造)を批判的に描くという際にいくつかの方法があると思いますが、『これが私の人生設計』ではテーマの中心に据えた「建築界の構造」に類似させて様々な差別や偏見を織り交ぜて一本の映画として成立させています。

例えば田舎/都市という問題系、セクシャル・マイノリティの問題、パワハラの問題、マタハラの問題、異文化(ここでは外国人から見る日本)の表象問題etc…という具合に現代社会に存在する多くの差別、偏見を散りばめて、メインである建築界にユーモラスに迫っていくというのがこの映画、最大の美徳であるように思います。マイノリティこそユニークな存在である、ということをポップに描き出すことこそコメディ映画の使命でもあります。

また、もう一つのこの映画の楽しみ方としてもちろん“建築家”をどのように描いているか、という点も御座います。建築家は映画においてどのように描かれるのか。この問題は非常に根深く、それこそ偏見に満ち溢れていると申して上げてもよろしいかと思う問題ですが、実はこの問題を説くにあたって最適な書物がありますので、ここで紹介したいと思います。

それは『映画空間400選』という書物です。

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(⇧なんとこの『映画空間400選』の中には「物語の中に建築家が出てくる映画」リストがある! 必読だ!)

なぜ、いきなり激しくプッシュしたのかと言いますと実は私も執筆しているからです(当のリスト作りました)。『宣伝ですいません!』

ただ、真面目な話やはり建築家を演じるのは男性でありかつマッチョである、というのが大半のようです。例えばフランスの才媛ミア・ハンセン=ラヴ監督の『グッバイ・ファーストラブ』における主人公の女性と男性建築家のありようを考えてみてもよいかもしれません(『グッバイ・ファーストラブ』が劣った作品だとは全く思いませんが)。

その意味でも男性(ゲイでもある)を建築家(の上司)に仕立て上げるというプロットを持つ『これが私の人生設計』は、絶妙なひねり具合であり、希有な作品であるでしょう。

 

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(⇧左、『グッバイ・ファーストラブ』、右、超人的建築家といえばの『タワーリング・インフェルノ』)

そもそも、建築家を描くにあたって「リフォーム」コンペというところがまさにこの映画の特徴を見事に表しています。一から新しいものを作り上げるのではなく(社会の構造を一新することではなく)、今ある古く汚くほとんど捨てられたかのような集合住宅の現状(それは当然、現代社会における様々なマイノリティーたちを示してもいるでしょう)をきちんと把握し、手を加えて、より良い集合のあり方を模索すること。

「リフォーム」案を考えるにあたってセレーナは一つのキービジュアルを持っています。それは(予告編からも垣間見えますが)一本の緑の線です。社会の隅々に散らばって孤独に生きる人々を一本の緑の線によって、集合させること、それこ主人公セレーナの狙いであり、映画が達成すべき真の事柄であります。

果たして上司を仕立て上げ、コンペを勝ち取ったセレーナは、緑の線によって人々を新たに集合させることが出来るのか、は映画本編を見て御確認いただければと思います。

ところでセレーナは劇中バイクで街を駆け回るのですが、イタリアとバイクという組み合わせも中々興味深いところがあります。やはり一番有名なのは『ローマの休日』ですね。しかし『これが私の人生設計』は建築(家)とバイクということで、ここでは「家だけが延々と写される映画があったらなんて素敵なんだ」というセリフがございます『親愛なる日記』の「ベスパに乗って」の動画でお別れしたいと思います。

(⇧『親愛なる日記』の冒頭。アス比が狂ってるのが無念!)

では、終わります。

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(2016年3月5日(土)新宿ピカデリー他にて公開です!)

 

(text:satoshifuruya

 

 


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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