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©El Deseo /「写宅部!」(プレミア映写を宅でする部)15日目-遠征編-

ペドロ・アルモドバル監督『ジュリエッタ』の試写に呼んで頂きましたので、写宅部の遠征編を始めたいと思います。(2016年11月5日(土)新宿ピカデリーほかロードショウです!)

「映画はお引っ越しから始まる」という格言があります。いや「映画とはお引っ越しである」だったかもしれません。ともかく映画とお引っ越しは切っても切れない密接な関係にあるということは確かなようです。

“お引っ越し”から始まる映画といえば、、、と、ふと考えてみるとあなたは何を思いますか。

大定番『となりのトトロ』とかありますね。リンジー・ローハンの『彼女は夢見るドラマ・クイーン』とかもそうですね。まさに『お引越し』というタイトルの映画もありましたし、その監督(相米慎二)のデビュー作『翔んだカップル』がすでにお引っ越しだなあ、などと思いをめぐらせていきましょう。

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『翔んだカップル』は管理人の手違いから同級生と同じ屋根の下に、という展開でしたが、そういえば同じく“お引っ越し”から始まる『パニック・ルーム』も販売業者の手違いによって、トンでもないことになってしまう映画でした。映画に描かれるお引っ越しは、大体手違いますね。

「引っ越し 映画」と、なんのひねりもないワードで検索すると「ホラー映画の大定番!戦慄のお引越しホラー12選」という記事にぶち当たります(「引っ越し」か「引越し」かという表記をめぐるお話は長くなるので割愛します。ただし日本で言うところの「お引っ越しorお引越し」の英訳は単に「Moving」であることは、確認しておいてよいかもしれません。ここに「海外と日本の引っ越し観」が現れている、と見る向きもあるようですが、「映画とはお引っ越しである」という格言を知っている我々からすると、なるほどMovie=Moving、「映画とはお引越しである」ということか、と妙に納得してしまいます。ダジャレだったのか、というわけです)。

ところで、お引越しホラー! しかも12選というなんともいえない数字です! ぞくぞくするのは私だけでしょうか。さて、では、お引越しホラーってなんでしょうか。

様々なタイプのホラー映画がありますが、定番的ジャンルの一つが通称「お引越しホラー」。つまり、移り住んだ先の家が恐ろしいオカルト・ハウスだったという設定の映画のことです。

通称なのかはわかりませんが、確かにおっしゃりたいことはわかります。上記をクリックしていただくとその記事に飛べますが、『家』という堂々たる邦題を持つ映画が元祖「お引越しホラー」のようです。

『家』のあらすじを読んでみると

「夏の休暇を過ごすため、ニューイングランドにある古いが大きな貸別荘にやってきた高校教師の一家。彼らは、呪われたその家そのものによって恐怖のどん底に突き落とされます。」

別荘です!

引越しじゃないじゃん!

とも思うのですが、おっしゃりたいことはわかります。

ところで、私のオススメ“お引っ越し”から始まる映画は『この空は君のもの』という映画です。ホラーでもなんでもないですが、これがいいんですね。引っ越しの最中、ピアノを2階から落っことしたりね。危ないんです。手違いが多い。

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そしてもう一本、“お引っ越し”のココを描写するか、という1本を挙げたいと思います。ハーモニー・コリンの『ミスター・ロンリー』です。序盤で主人公マイケルがアパートを引き払うんですね。そのときに住んでいたアパートの家具一つ一つに丁寧に「ありがとう。さようなら」とお辞儀をするんですね。非常に美しい場面です。『ミスター・ロンリー』のこの数秒は、『ルーム』の2時間に匹敵する……とさえ言えるでしょう。

さて、思いついたままに“お引っ越し”から始まる映画をつらつらと書いてきましたが、そうなると“お引っ越さない映画”というものが逆に気になる、というのが人情です。

“お引っ越さない映画”は中々難しいのではないでしょうか。“お引っ越さない映画”は、単に“お引っ越さない”だけではもちろんダメなわけですね。“お引っ越し”するものだと思っていたら“お引っ越さない”、これが重要だと考えます。

“お引っ越さない映画”の頂点として挙げたい作品が『若草の頃』(ヴィンセント・ミネリ監督)です。セントルイスに住んでいた一家ですが、映画の途中で父親の転勤でニューヨークへお引っ越ししなくてはいけなくなります。しかしラストでどうしても引越したくない四女のトゥーティが、みなで作った雪だるまを大泣きしながら、ぶち壊します。映画至上に残るガチ泣きシーンとしても名高い、この場面ですが(四女が感情を爆発させるきっかけになったジュディ・ガーランドが歌う「Have Yourself a Merry Little Christmas」も必聴です)、四女のあまりの泣きっぷりに、2階からその様子を見ていた父親が転勤を諦める、という見事な“お引っ越さない映画”です。

そうして、ようやく2016年11月5日(土)新宿ピカデリーほかロードショウの『ジュリエッタ』です。

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©El Deseo

この映画、紛うことなき“お引っ越さない映画”の傑作です!! しかも映画の中では数々の「お引っ越し」が描かれます。オープニングがすでにマドリードからポルトガルへと、引っ越しの準備をしている場面です。それが、あることをきっかけに、ポルトガルへお引っ越さなくなります。お引っ越さないと思ったら、マドリードの違う地区へ、ちょっとお引っ越しします。なぜ、お引っ越さないで、ちょっとだけお引っ越すのか。その“お引っ越さない”理由をめぐる映画だと言えるでしょう。

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運命に翻弄される様がこの“お引っ越し”と“お引っ越さない”というこの間の揺れ動きにあると言って良いでしょう。“母”と“娘”の隠された感情がダイレクトにホーム(家)の移り変わり(変わらない)に現れています。

無駄な登場人物が一切いないという、アルモドバルの恐るべきストーリーテリングに感嘆しつつ(いつこんな並外れた語る人になったんだ……アルモドバル……)、ぜひお引っ越し(越さない)に注目していただきたい。

そして“お引っ越し”でも“お引っ越さない”でもなく、囚われていた過去から力強く現在に生きようとする際の、実に自由で晴れやかな素晴しいカメラの運動をお楽しみに。ちなみに「映画はお引っ越しから始まる」という格言は実はありません。

POSTER 入稿

©El Deseo

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『私が、生きる肌』
出演:エマ・スアレス、アドリアーナ・ウガルテ「情熱のシーラ」
ダニエル・グラオ、インマ・クエスタ、ダリオ・グランディネッティ、ミシェル・ジェナー、ロッシ・デ・パルマ
2016年/スペイン/99分/アメリカンビスタ/原題:Julieta

配給:ブロードメディア・スタジオ

公式サイト:www.julieta.jp

(2016年11月5日(土)新宿ピカデリーほかロードショウです!)

では終わります。

(text:satoshifuruya


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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