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Le Temps qu’il reste(The Time That Remains)

1970年代~, コメディ, ドラマ

監督:エリア・スレイマン / 上映時間:109分

1948年、パレスチナの地ナザレはイスラエル軍によって占拠された。現地のアラブ系キリスト教住人の若者が次々とイスラエル軍によって拘束されるなか、銃職人のフアドも捕えられ、服従させられる。
時はたち1970年、妻と息子のエリアと暮らしているフアドは平穏な生活を送っているが、近所の住民やフアド自身のなかにも、自分たちの街を占拠しているイスラエルへの不満がくすぶっている。近所の爺さんは度々自分に灯油をかけて火をつけようとするし、フアドは海釣りしているところを、「武器の輸出をしている」とイスラエル軍に誤解されたりする。そんななか息子のエリアは学校で「アメリカは植民地主義だ」と言ったことで先生に呼び出され怒られる。
さらに時はたちエリアは学生になると、アラブの独立運動に加わっていたことで、国外追放を余儀なくされる。そしてその数十年後、中年になったエリアは、父フアドに先立たれた母が暮らす生まれ故郷に帰ってくるが……。

詳しいあらすじ

メナシェというドライバーの男が、空港からエリア(エリア・スレイマン本人)を乗せてキブツ(イスラエルの集団農場)へ車を走らせる。ところが途中ひどい嵐に遭い、おまけに道が新しくなっていることもあり現在地を見失う。無線で助けを求めるが、ついに車は道に立ち往生してしまう。
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1948年.パレスチナ(現イスラエル)の都市ガリラヤでは、アラブ解放軍兵士が街を行くなか「イスラエル国防軍がこの地を守るので、解放軍を名乗るギャングに気を付けて、みなさん抵抗せずに白旗をあげてください」という放送が流れる。集会所では、街を制圧したイスラエル側が、アラブの首長に対して「ナザレ(ガリラヤの街)はイスラエル軍に無条件降伏し、全てのアラブ側戦闘員・武器・弾薬もイスラエル軍に降伏する。また軍の指揮官は独自の権限で、法律を侵すものを死刑にできる。またイスラエルはナザレの市民の平等な権利を認める」という降伏文書へのサインを求める。
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イスラエル軍によって住人のアラブの男たちが捕えられていき、市民にはイスラエル軍によって夜間外出禁止令がアナウンスされる。
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銃職人フアドの家族は、車で国境へ行くことを決める。フアドはエルサレムにいる姉のオルガを心配するが、父親は、自分のことは自分でなんとかするはずだという。その後工房を訪ねてきた男も数日間街を離れるとフアドに告げる。もはや戦う必要はないと言う男に対し、「意味もないのか?」と聞くフアド。男は、運命として受け入れるべきだと説くが、フアドは受け入れない。
そんなか、フアドの恋人スラーヤから手紙が届く。妹のナディアに読ませると、そこには「事態が落ち着くまで、辛いけれどアンマンへ行きます。あなたはこの国の事態に取り乱しています。私は決してあなたの重荷にはなりたくないけれど、あなたの人生から姿を消すことであなたが武器を置くことを考えてくれるならば、それが私の唯一の慰めになるの。そうすれば、あなたのお母さんの心配もなくなるわ。体に気を付けて、私たちの愛と祖国に誠実でいてください」とあった。
やがて、従兄弟が家にきて誰かが屋外で負傷しているというので、それを助けに行く。男はビサンからトラックで国境へ運ばれてきたところを、途中で逃げてきたという。その男を助けた帰り、スラーヤが家族と街を出て行くところをフアドは見る。そしてフアドと従兄弟はイスラエル軍に捕まってしまう。従兄弟だけ帰され、フアドは他のアラブの住人達とともに、目隠しをされ拘束される。そこで銃の隠し場所について聞かれるが、しかしフアドはこれを明かさなかった。

1970年、フアドの妻となったスラーヤは、ナディアに向けて手紙を書いている。その内容は、フアドが医者からタバコや夜釣りを止められていること、息子のエリアの学級が優秀なこと、フアドの姉のオルガが、テレビでナディアがヨルダン国王のフセイン1世と握手しているのを見たと言っているので、眼医者を紹介したほうがいいと思っていること、政府がヨルダンに行くための許可証をヨルダンに家族がいるひとには交付するという噂があること、しかしどんどん経済は悪くなっていること、近所の老人がガソリンスタンドで働いているのだが呑んだくれで、死にたいと言いながら自分に灯油をぶっかけて騒ぎを起こしているということなど……。
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エリアの学校では、少女たちの聖歌隊がイスラエル歌唱コンテストで一位になった授賞式が行われていた。そんななかエリアは、教室で「アメリカは植民地主義だ」と言ったことを先生に怒られていた。学校から帰ってくると、叔母であるオルガからレンズマメをもらってくるがそのままゴミ箱へ捨てる。
フアドは医者からタバコと夜釣りをたしなめられるも、懲りずに夜釣りに出かける。翌朝釣り道具を片付けているところへ近所のガソリンスタンドの老人が酒を片手にやってきて、「もしアラブの人々が私のように酒飲みだったなら、私たちはもっと前に戦いに勝っていたはずだ」と言うがフアドは相手にしない。
その後フアド一家が食事をしているところへオルガが訪ねてきて、テレビを見たらナディアがパレスチナ難民のチャリティーイベントでフセイン一世と握手していたと告げて帰る。
呆然と見送る一家。
学校では子供たちがアメリカ映画の「スパルタカス」を見ているが、男女のキスシーンになると突然引率の女教師が立ち上がり「彼は彼女のお兄さんのようですね」と子供たちに言い聞かせる。
フアドは自分の旋盤店の部品を買うためにテルアビブへ向かうが、途中の橋がトラック事故で通れない。フアドは車から降りると、警官が「あれは爆薬を積んでるんだ!また爆発する!」と制止するのも聞かず、横転したトラックに登り、負傷して放置されているドライバーを見る。
その後病院で、並んで寝ているフアドと助け出されたドライバー。
夜、再び海釣りをしていると、またイスラエル軍の兵士たちがトラックでやってきて、「ナザレには海がないからここに来るのか!?魚はいないぞ!」と言って去る。翌朝再び近所の老人がやってきて、「私にはイスラエルのやつらを追っ払う考えがある。レバノン(アラブ国家)にイスラエルを攻撃させる。そうすれば仲のいいフランス(かつてレバノンはフランス領)が助けに来るはずだ」とまくしたてる。しかしフアドは前回同様、「そんなことは考えたことない」と言う。
学校では、アラブ国家であるエジプトのナーセル大統領が死去したことで沈む教師や生徒たちのなか、エリアがまた「アメリカは帝国主義だ」と言ったことを先生に怒られる。家に帰ると、副大統領のサーダートによる大統領死去の演説と葬儀の様子がテレビから流れ、フアドは静かにそれを聞いている。
そんななか、また近所の老人が灯油をかぶって自分に火をつけようとしているが、フアドがこれを連れ帰る。
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夜、突然警官たちがやってきて、「あなたがレバノンから海路で武器の密輸をしているという情報がある」と言いだし、部屋を探し出す。黙って見ていたフアドだが、近所に住む警官を指さすと、「お前は自分をちっとも恥じていない」と非難する。警官は、「これも仕事なんだ」と堪えがたそうにする。すると警官のひとりが、子供のベッドの下に火薬が隠してあったと持ってくる。それを見て近所に住む警官は、ブルガー(干した小麦)だと言い、妻スラーヤもキッビ(料理)や色々な料理に使うブルガーだと主張するが、警官は「どちらにしろあなたは白状する」と言いフアドを署へ連れて行く。
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時は過ぎ、スラーヤがテラスでナディアに手紙を書いている。その内容は、フアドの心臓手術が成功して、禁煙もしていること、ただし狩猟免許を取ってからは、全然安静にしていないこと。狩りに出かけないときは、友達のアブ・エリスとバックギャモン(西洋スゴロク)をしていること。毎日テレビばかり見ているせいでオルガの視力が日に日に悪くなっていること。自分は糖尿病は別として、元気にやっていること。ナディアが住むアンマン(ヨルダンの首都)はゴミがなく綺麗だと聞いていて、それに引き替えこの街ではごみ収集人がいつもストライキしていて、ゴミが溢れかえってみんな鼻をふさいで生活していること。もうすぐ『土地の日』が来ること、前回の『土地の日』ではエリアがイスラエルの旗を裂いて告発され、国を出なければならなくなったことなど……。

フアド一家がリビングでお茶を飲んでいるところへオルガがやってきて、エリアを見て「エリアにそっくり。双子みたい」と家族を困惑させる。本人だとフアドが説明すると、やっと本人だと認める。更にエリアに向かって、テレビであなたにそっくりな人を見たとも言う。

夜、エリアは友達ふたりと、目の前の道でヒッチハイクしている軍服の女性を見ながら、アブ・アデルというひとについて話し始める。アデルは、イスラエル軍基地の目の前でヒッチハイクしているイスラエルの女兵士とヤることをいつも夢見ていて、彼は常に彼女たち女兵士を視姦していて、最終的に自分の妻に兵士の格好をさせ、彼女にヒッチハイクしているフリをさせ、車で自らピックアップするという。そして、今目の前の道にいる女性がその妻だと話す。すると、ガラの悪い数人の男が乗った車が止まり、彼女を乗せて走り去る。そしてそのすぐ後に別の車がやってきてアデルが降りてくるが、誰もいないことに苛立った様子で引き返していく。

翌朝、エリアたち三人がカフェテラスにいると、「Nation(新聞の名前)は1シケル(イスラエルの通貨単位)!All The Arabs(新聞の名前)は無料!」と言いながら新聞を売る若者が通りかかる。彼らは若者からNationを買おうとするが売り切れていたため、仕方なくAll The Arabsをもらう。
フアドは、『土地の日』のデモでの警官隊と住民たちとの衝突で、怪我人や逮捕者がでたというニュースを聞きながら庭に水を撒いている。途中ホースの水が止まってしまいそれを直していると、またいつもの近所の老人がやってくる。しかも今度は自分の息子を連れてきている。老人は息子を指さすと、「こいつは、街中の母親とやってるんだ。ちなみにオレは、こいつの母親とやったがな」と言いだし、フアドは笑いをこらえる。
家には近所に住む警官が訪ねてきて、エリアに地図のなかから適当な場所を選んでそこへ行けと言う。理由を聞く母親に、エリアは告発され、24時間以内に国を出なければならないと教える。部屋に戻ったエリアはベランダから、警官隊とデモ隊との衝突を眺める。
エリアは出国する前に入院していたフアドを病院まで迎えに行く。帰りの車のなか、フアドは疲れたように寝てしまう。それを見つめるエリア。
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再び時が過ぎたクリスマスのころ。中年になったエリアが実家に戻ってくると、間を置かずに警官姿の男が訪ねてくる。嫌な予感のするエリアだったが、男はエリアにタブーリ(サラダ)を差出し、「あなたのために作ってきました。なにかあったら言ってください。おかえりなさい」と言って帰ってしまう。翌朝エリアが起きてリビングに行くと、昨夜の男が部屋を掃除し、食器を洗い始める。彼は食器を洗いながら、街ではギャングの抗争のために街が見分けがつかなくなっていることや、観光客をひきつけるために、まるで2千年前のナザレのように自治体が旅行者向けの村を造ったことなど、街が変わった様子をエリアに早口でまくしたてる。
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久しぶりに友人二人と再会したエリアは、二人とテラスでお茶をする。そこへ、口笛を吹いた若者が通りかかりエリアに握手を求めるが、いざエリアが手を差し出すと握手はせずに去ってしまう。
年老いた母親は、夜中にひとりでアイスクリームを食べたりしているが、血糖値を計ってくれるメイドの女性にそのことを咎められる。
その後ベランダで母親が写真を眺めながらお茶を飲んでいるところへエリアがスピーカーを持ってきて音楽を流し始める。ゆっくりとリズムに乗る母親。
家にジェニーン(パレスチナ・ヨルダン地区)から来たという少年が豆を売りに来るが、警官とメイドは少年にIDの有無などを聞き、タバコだけあげて帰す。
街ではエリアと友人がお茶をしているところへまた昨日の青年が通りかかるが口笛を吹いていない。呼び止めてその訳を訪ねるが、応える代りに口笛を吹きながら去っていくのだった。
夜リビングではメイドによるカラオケが行われているが、エリアはそれを離れて見るだけで、なかに入ろうとはしない。その後エリアが部屋で身支度をしていると、外で大きな花火があがる。ベランダにでてそれを見るエリアだが、同じくベランダに座っていた母親は花火にほとんど興味を示さない。そんな母親の様子を呆然と見つめるエリア。
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パレスチナ自治区にあるラマッラーに向かったエリアは、乗り合いタクシーで街のホテルを目指す。ホテルの前では警官風の男が、信号の横で軽快に交通整理をしている。
ホテルでエリアが寝ていると、外が騒がしくなる。覗いてみると、道でパレスチナ住人とイスラエル軍兵士との小競り合いが起きている。しかしそんななかをベビーカーを押して横切る女性。家に帰れと警告する兵に、「あんたたちが帰れ!」と吐き捨てて去る女性。
ホテルから出て見ると、向かいの家から男性がゴミを捨てに出てくる。その男性を至近距離で狙い続ける戦車の主砲。しかし男性は気にすることなく知人に電話をし始める。最近たくさんいい曲を手に入れ、今日DJパーティをするから久しぶりに会おうと話す。その間も、戦車は男性に照準を合わせ続けている。
夜、パーティが行われている会場の外では、イスラエル軍の兵士が『夜間外出禁止』だと車から何度も警告しているが、若者たちは誰一人気にしていない。
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壁で隔たれたイスラエルとパレスチナ。エリアは、そこを棒高跳びで軽々と飛ぶことをイメージする。
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冒頭の、空港からの車のなかに戻る。ドライバーはもはやハンドルに突っ伏して寝ている。
その後病院にたどり着くエリア。病室のベッドには母親が横たわっている。母親の手元には、いつも眺めていた写真が。そこには、父フアドが写っていた。母親は自分で、鼻に着けている呼吸器を外す。見つめ合う親子。
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病室から出たフアドが椅子に座っていると、その前を包帯を巻いた男たちが行き過ぎる。男たちは、ふたつのマフィアの争いを仲裁してきたが、マフィアたちは和解すると、今度は自分たちを襲ってきたのだという。次に患者が医者によってストレッチャーで運ばれてくるが、すれ違った男が医者を呼び止め、自分の病気の相談をし始める。男は、運転していて赤信号で止まっているとき、タバコを取り出してライターで火をつけようとして急に火が出ると、車を走らせてしまうんだ、と訳の分からない相談をする。そして男はもう4度も事故を起こしていると言うと、医者は他の医者を呼んできて男を任せる。
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そのあと、手に包帯を巻いて電話している男が現れる。男は、従兄弟に会うために病院を訪れたのだが、友達に呼び出されてバーに行ったのだと言う。そこで、ビールを持っているときに他の男の足を踏んでしまったので、怒っているそいつに自分のビールを差し出そうとした。しかしそいつが拒否したため、ビールを投げつけて殴り、駆け付けた仲間も、ナイフで切り裂いてやった。そして病院へ戻ってきたときにはやつら皆病院に来ていたが、自分を見ると逃げて行ったのさ、と話す。それから手に痛みを感じ始めた、というのも、実はやつを殴った時に、一度はかわされてアスファルトを殴ってしまって、それで手を壊してしまったんだ。だからレントゲンを撮ることになったのさ、と電話の相手に説明しながら去っていく男。入れ替わりで入ってきた別の男は、手錠で繋がった警官を振り回しながら歩く……。

それらの様子を、ただじっと椅子に座って見つめているエリア。

  • 監督:エリア・スレイマン
  • 原作:エリア・スレイマン
  • 撮影:マーク・アンドレ・バティーヌ
  • 編集:ヴェロニク・ランゲ
  • 音楽:マチュー・シボニー
  • 製作:ハニ・ファルシ
  • 製作会社:Film, The
  • 配給:Le PacteLe Pacte
  • 製作年:2009年
  • 上映時間:109分
  • 出演:エリア・スレイマン、サレ・バクリ、レイラ・モーマー、ビラール・ジダニ

COMMENT

キリストが幼少期を過ごした土地での印象的な日の出来事

フアド一家の住んでいるナザレという街は、イエス・キリストが幼少期を過ごしたとされる土地で、そこに住むアラブ人も多くがキリスト教徒であるという。アラブ人というとイスラム教徒をイメージするひとも多いが、最後に病室でマリア像が出てくるように、フアド一家はキリスト教徒である。『土地の日』は、1976年にイスラエル軍がアラブ人デモを武力鎮圧して犠牲者を出した日に端を発していて、主人公エリアもこの印象的な日の出来事によって、一度この地を離れることになる。ちなみに戻ってきてからのエリアは、スレイマン監督自らが演じている。


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