Gucchi's Free School

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Undercurrent

1930年代〜, ドラマ, 恋愛

監督:ヴィンセント・ミネリ / 上映時間:116分

『パリのアメリカ人』のヴィンセント・ミネリ監督によるキャサリン・ヘプバーン主演のサスペンス・メロドラマ。
ヘプバーン演じるアンは有名実業家のアランと結婚するが、次第に彼の過去が明らかになっていく…。

アンはアランと結婚するも、彼の弟の存在を知ったのは結婚後だった。アランは弟の存在のみならず痕跡までアンから病的なまでに隠そうとていることが次第に明らかになっていく。アンは夫をつらい過去から解放しようと、昔の出来事、派手な生活を送る浪費家だったらしい弟の正体などを探るために、夫の目を盗んで弟が住んでいたという農場や彼のオフィスを訪ねる。ある日、アンは夫が我慢できず弟を殺したのではないかという疑惑を抱く。果たして兄弟の間に何があったのか?弟の正体とは…??ロバート・テイラー、ロバート・ミッチャムといった豪華俳優陣にも注目。

詳しいあらすじ

郊外に住む有名科学者のディンクはメイドのルーシーと娘のアンと三人で暮らしている。ある朝一家のもとに電報が届く。送り主のアラン・ガロウェイは無線操縦機の開発で財を成した有名な実業家だ。ディンクと仕事の話をするため午後に家に寄るとのことだった。未婚のアンを心配しているルーシーはガロウェイを花婿候補に考えている。そこに以前からアンに想いを寄せ求婚しては断られている、ディンクの大学の同僚ジョゼフが朝食を食べにやってくる。彼は昨夜もアンに求婚して断られたばかりだ。そんなルーシーやジョゼフをよそにアンはペットのラミーや家の実験室の整備に夢中になったりして、あまり真剣に結婚については考えていない。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_001323.399
その日の午後、アランがやって来てもアンは実験室にこもったままで彼に何の興味も示さない。見かねたルーシーがアンをアランの前に連れ出す。アランは自信に満ちた紳士だった。夕食後、暖炉の前でアランとアンは二人きりでいる。彼は部屋に飾ってあるアンの死んだ母親の写真を手に取る。アンによると母親は非常にエネルギーに溢れた活発な人だった。それを聞いたアランは自分の母親はいつも病気がちだったと言って母親に関する話を打ち切る。アンは彼のような有名人と一緒にいられることはアメリカ人として光栄だと話すと、彼は「女性としては?」と聞く。アンは「嬉しいわ」と答える。彼は飛行機に乗るため帰っていく。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_001444.050
アンはディンクが弾くピアノを聞きながら、「この曲はいつもどこか他の世界に私を誘うの」と言う。ディンクは「別の世界に行ってもお前は一人じゃないよ」と言って、アランとの結婚を暗に勧める。すると、ドアベルが鳴ってジョゼフが入ってくるが、同時に花束が届けられる。送り主はアランだ。ジョゼフは「アランは科学者にしては魅力ある人格だな」と皮肉る。アンはそのバラの花束を実験室のビーカーに入れようとする。そこにディンクがやって来て、アランからのプレゼントに嬉しそうにしているアンに化学反応を喩えにしてアランとの結婚を勧める。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_001538.792
アンとアランは結婚し、ワシントンD. C. に移り住む。ワシントンに到着した二人はアランのマネージャーであるウァームズリーに会う。彼はアランが結婚したことを知ると訝しがるような顔をする。夜のアラン主催のパーティでは、アンは周囲の人たちの洗練されたファッションに気後れし、また話の内容にもついていけない。パーティ後、アランと二人きりになったアンは自分を責めるが、アランは「服を買いに行けば明日には街で一番のお洒落な女性になれるよ」とアンを慰める。
服を買いにやって来たアンとアランは、アランの母の知り合いで彼の子ども時代をよく知るフォスターと出会う。彼女は彼に弟のマイケルはいまどうしているのかと聞き、兄弟が昔から乗馬をやっていて、弟のマイケルの方が抜群に上手かったことなど思い出話をする。アンは「弟がいるなんて知らなかったわ」と言うが、アランは弟に関する話を切り上げ、二人は店を後にする。その夜、アランは思い悩んでいる様子で、アンはその訳を聞こうとする。重い口を開いたアランによると、マイケルと二人で父の工場を受け継いだが、マイケルは広大な土地を買ってパーティ三昧の日々を過ごしていたらしい。次第にお金がつきていき、アランはマイケルに忠告するために屋敷に向かったが、結局追い返され、その後マイケルは行方をくらまし、軍隊にいるらしいなどと噂に聞くぐらいしか情報を知らないことを明かす。アランとマイケルは互いに嫌い合っており、アランの願いは二度と彼に会いたくないというものだった。アンはその話を聞き、アランの悩みを理解し共有し彼を慰める。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_001717.305
アラン誕生日祝いのパーティの準備をしているメイドにはアランのパーティの日にちを尋ねる電話が出席予定者からかかって来ていた。アンは彼に贈るプレゼントを買うために店によって絵画を買い、ガロウェイ邸に送るよう店主に言った。すると店主はちょうどガロウェイさんから表紙をつけ直すためにお預かりしていた本があると言って、英国の詩集をアンに渡す。そこには自然の中につつましく佇む家に関する詩が載っていて、下線が引いてあった。アランがこのような詩に興味をもつとは知らなかったアンは喜びとともに驚くが、実は店主の勘違いでその本はマイケルが修理のために送って来た本だった。そうとは知らないアンはそれを家に持って帰る。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_001729.506
アンはいたずら心から、重要人物とは言えないヘンリーと大物のパトナム判事のパーティの席順を入れ替える。しかし、食後はパトナムに話しかけパトナムはいつも以上に上機嫌になってアンを気にいる。アンの応対が以前よりも格段に上手くなっていることに気をよくしたアランも二人のもとにやってくる。アンはアランの手を握りつつ、詩集で下線が引いてあった一篇を暗誦する。彼女によればこの本の持ち主とは心が通い合っており、同じ言葉を理解しあえる同士だからこそ、暗記出来ているそうだ。しかし彼女が暗誦し始めるとアランは彼女から離れてしまう。
パーティの後、アランは自分の生まれ故郷の家に行こうとアンを誘う。アンは先ほどの本は自分のものではないというアランの言葉を聞くも、返すのは惜しいので貰っちゃおうかなと冗談めかして言う。するとアランは激高し「その本の持ち主が誰か知っているんだろ!心が通っているんだからな」とアンを怒鳴る。アンは「あなたの本だと思ってたから覚えたのよ」と言う。落ち着きを取り戻したアランはマイケルに対するようにアンに接したことを謝る。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_001747.680
翌日、二人は車で彼の生まれ故郷に向かう。屋敷に着くと玄関に犬のベイツがいるが、二人に対して警戒心を示している。屋敷の管理人ジョージが出迎えてくれたが、アランが馬の話をした瞬間に怪訝な声色となって話を切り上げてしまう。屋敷に入るとアンはアランのお母さんの写真がないことに気づく。アランは昔の思い出の品は片付けてしまったと言う。夕食までの間、アンは一人で散歩しに厩舎に向かう。彼女は馬に驚かされ、厩舎の奥に潜んでいた男がその荒馬に関する話をまくしたてる。彼によるとこの馬をムチで叩いて無理に乗りこなそうとした男が落馬したらしい。アンはこれをマイケルに関する話だと理解する。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_001847.162
夜、アランが屋敷に帰ってくると、ピアノが聞こえてくる。彼は血相を変えたように部屋に入り、アンに誰が弾いていたのかを聞く。彼女が「私が弾いていたのよ」と答えると、誰に教えてもらったのかと尋ねる。アンはディンクが昔から弾いていた曲だと答える。アランによると彼の母はこの曲が好きで、死んだのもこのピアノを弾いていた最中だった。アンは動揺する彼に寄り添いながら、子どものときからこの曲を聴いていたという共通点が自分たち二人の絆を強めてくれると言う。アランが着替えに二階に上がると、ジョージがやってくる。アンは彼に、「アランのお母さんにとってピアノを弾くのが何よりも長年の闘病の慰めになっていたのね」と言うが、彼によるとアランの母はピアノなど弾いたことがないという。アランが下りてきて一緒にカクテルを飲む。乾杯の言葉は「私たち二人のために」だった。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_003831.053
アランは食後、昼間にウァームジーから送られてきた電報に答えるため電話のない屋敷から車で出かけて行った。アンは明かりを消し、先ほどの曲をもう一度弾く。するとそれを聞いたジョージが二階から急いで駆け下りてきた。アンはなぜそんなに急いでおりてきたのか、誰が弾いていると思ったのかとジョージに詰め寄る。ジョージは口ごもるがアンがマイケルの名を出すと最終的にそれを認める。アンは嘘までついてマイケルのあらゆる痕跡を消し去ろうとするアランを心配し、彼の傷ついた心を助ける方法を見つけなければと決心する。
サンフランシスコのレストランにやって来た二人はアランの昔の友人であるシルヴィに会う。アンはシルヴィとアランの昔の仲を気にするが、アランは笑って否定する。そこにウァームジーがやってくる。アンが退席するとウァームジーはシルヴィに会ったことをアランに伝え、アンのことを気にする。アンは化粧室でシルヴィと話す。シルヴィはマイケルのことを聞いてくるが、アンは知らないと答える。シルヴィによるとマイケルは近ごろ、手紙を誰にもだしていないそうだ。シルヴィはアンにマイケルに会ったことがあるのかを聞くが、アンはまだ会えておらず楽しみにしていると答える。シルヴィが彼はあまりハンサムではないと言うとアンは同意し、アランとマイケルは全く違うと思っていることを話す。するとシルヴィは「全く」とひとこと言う。マイケルの不快な噂が流れていることに対してもアンは信じていないと答える。シルヴィが本当に知りたかったのはマイケルは死んだのではないかということだった。アンはシルヴィと自分がどこか似ていることに気づき、それを彼女に言おうとするがシルヴィは化粧室から去ってしまう。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002131.729
アランのシアトル行きを見送ったアンとウァームジーはアランの会社の前まで来る。ウァームジーに夫のオフィスを見せてほしいというアンの願いに応えて彼がオフィスに案内すると、創業当時の写真を見せてほしいとアンは言う。当時の写真には4人写っているのだが、そのうちの一人カール・ストイアーはすでに亡くなっていた。また、会社のみんなでマイケルの所有する農場にバーベキューをしに行った写真もあった。アランは写っているがマイケルはいない。ウァームジーによると写真を撮ったのがマイケルだそうだ。ウァームジーはマイケルについてアンが聞こうとすると無理やり話を打ち切る。アンは今はアランの所有となっているその農場とそこに立つ家に行きたいから鍵と地図を貸してほしいと言い、ウァームジーは了承する。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002151.227
アンが農場にたつ一軒家に着き、中を見て回っていると、一人の男が入ってくる。アンは彼を管理人だと思い、この家の落ち着いた雰囲気、まさに家と呼べるような温かみを入った瞬間に感じたことなどを言う。管理人にマイケルのことを聞くが、最近は全く来ていないとのこと。ただ、オーク・パネルとマイケルが名付けた展望のよい丘があるとアンは教えられ、管理人に連れていってもらう。そこは自然溢れる場所だった。そこでアンはなぜ人は互いに助け合わないのだろうかと管理人に問う。すると、その男は助けてもらうことを望んでいない人々には無駄だと言う。アンは「諦めるべきではないわ」と答える。アンは下に広がる海を見て、泳ぐのにぴったりのビーチがあるの?と聞くが、海の底には激しい潮流があって泳げないらしい。それに対しアンは「人生のようね」と答える。暗くなりそうで霧も出てきたので家まで連れて帰りましょうかと尋ねられるが、アンはもう少しひとりでここにいるわと答える。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002252.990
 アンが夜、マッチの光で部屋の中を捜しているとシアトルにいるはずのアランがやって来る。アランはアンに、なぜここにきて何をしているのかを問う。アランは彼女がマイケルについて調べていると思い、アンを責める。マイケルは極めて巧妙に人の心に取り入って来るらしい。アンは、私たち夫婦の間にある問題に向き合おうとしているからこそマイケルについて知りたかったのだと言う。
ホテルに着いた二人はアンについて最初は服装がダサかったが最近はアランの手により見違えるほどになったという噂話をしている女性たちの声を聞く。アンは部屋に入るなり、アランが最初のパーティでダサい服だと分かっているにも関わらず、わざと自分を人前に出し、アンを変身させる自分の手腕を見せつけようとしたのではないかと彼を非難する。アランは否定するがアンは続けてアランは昔の女に似ていたからこそ自分と結婚したのだと言う。それに対しアランは今、夫婦二人の間にある問題は語り難いものかもしれないが、自分もこの結婚が長く続いてほしいと思っているのだとして、自分を「信頼」してほしいと言う。
アンはシルヴィのもとへ向かう。彼女にマイケルのことを聞こうと思ったからだ。しかしシルヴィはアランのことを軽蔑していること、そしてマイケルがお金に目がないというのはアランが撒いた嘘であり、彼はお金に興味を示さず、農場に隠居してトマトでも育てるのが似つかわしい人だったと言う。そして彼女によるとマイケルはパーティなど開いたことがなく、アランこそが最後にマイケルに会った人物だと言って、アランがマイケルを殺したことを暗にほのめかす。アンは自分はアランを信じていると言うと、シルヴィは「じゃあ、なんでここに来たの?」と尋ねる。そしてアンに、アランがマイケルを殺したということを疑いながら一緒に生活していくことは辛いでしょうね、と言う。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002410.959
その夜アランから電話がかかって来る。アンに会いたくて仕事が手につかないというものだった。アランはアンを彼の実家に行かせ、そこで休暇を過ごそうと提案する。彼女は寝台車に乗って向かうが、彼の言葉「(夫婦間の)信頼」とシルヴィの言葉から生じた彼への疑念とに板挟みになって思い悩む。駅に着くとジョージが迎えに来ていた。しかしジョージは彼女が来るのを歓迎してはいない様子で、家に着いてもアンが外を出歩くのを何とかして止めようとする。アンが部屋の窓から外を見ると犬のベイツが塀の向こうにいるらしき人物に喜んで興奮している様子が見える。彼女は気になってそこへ行ってみるが、人はおらずただ火のついたタバコだけが地面に残されていた。彼女はそれをマイケルだと思い、シルヴィがほのめかした恐ろしい考え「アランがマイケルを殺した」は誤りであることを確信する。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002447.056
夜、アランが実家に到着する。するとそこにマイケルが現れる。なぜここに来たのかと問うアランに対し、マイケルは死んだストイアーに関することだと答える。彼は亡命してきたドイツ人でナチスに復讐することだけを考えていた優秀なエンジニアだった。ストイアーはアランを気に入っており、自分の発明品「フェーン」について彼にだけよく話していた。マイケルはフェーンとは何かずっと気になっていたがそれがドイツ語で「距離」を意味する単語の短縮版であることに気づく。そしてストイアーが階段から転落死して少し経った後でガロウェイ遠隔操作機が世に出たのだ。マイケルはアランが発明を自分の手柄にするためストイアーを殺したと指摘する。そしてアンにこのことを知らせに来たと言う。アランはアンに出会ったことで生まれて初めて自分の生活を見直し真面目に生きるようとしていると言い、チャンスを乞う。アランはもはや彼女を諦めることも、マイケルを殺すこともできないのだ。しかしマイケルは彼女にも選択のチャンスを与えるべきだと言い、彼女に真実を伝えるようアランに迫る。するとアランはどれほど彼女が自分を愛しているのかを確かめる時間の猶予が欲しいと言う。マイケルはアランがちゃんと真実を伝え、彼女がどのような判断を下すのかを見届けるとして、もしそれでも彼女がアランと共にいることを選択したならば、この問題から自分は手を引くと言って去っていく。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002425.342
アランはアンのもとに向かう。アンはアランを弟を殺した殺人犯だと思っていたが、昼間にマイケルの生存を確信し、その疑念を振り払うことが出来たことを彼に伝える。アランは二人の間に割り込むいかなることも人も許さないと言ってアンを抱きしめる。しかし、翌朝、アンはうかない表情をしている。その理由をアランが尋ねるとアンはまだ見ぬマイケルのことが気になって仕方がなく、実際に会えばつきまとう彼の影を振り払うことが出来ると言う。しかしアランはアンが彼に恋していると見なし、昨日お前が喜んでいたのは夫が殺人犯ではなかったからではなく、マイケルがまだ生きていることを知ったからだろとアンを問い詰める。アランは決してアンを手放す気はないと言う。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002508.804
アンは屋敷からの脱出を試みるがアランに阻止される。アランは一緒に平然と朝食を食べつつ、もはや自分は恐怖を感じなくなっていることを話す。アンは途中で退席し部屋に閉じこもる。すると乗馬中のフォスターがやって来る。彼女に助けを求めようとするも結局アランとともに乗馬に誘われる。荒馬に乗るアランは先頭を走り、落馬する。医者を呼びにフォスターが二人から離れると、アランは起き上がって馬に乗る。実はアンと二人きりになるための演技だったのだ。アランはアンを崖から突き落とそうとし、それが失敗に終わると次は落馬したアンを石で殴り殺そうとする。しかし間一髪のところで荒馬がアランを踏みつけてアランは死にアンは事なきを得る。UNDERCURRENT - G__VIDEO_TS_20140429_002718.971
車いすに乗ってはいるが元気なアンはまだアランの家に住んでいる。ディンクが弾くあのピアノ曲が聞こえる。フォスターはまだこの地を離れようとはしないアンの心の強さを褒めるが、アンは「ここで為すべきことがまだあるから残っているだけなの」と言う。そこにピアノを弾いているはずのディンクが現れる。「誰が弾いているの?」と聞くアンにディンクは訪問者がいるよと答える。アンはまだ彼に会う準備が出来ていないと言うが、ディンクは「君が呼んだんだろ」と言って優しく後押しする。それは農場の管理人の男=マイケルであった。マイケルは農場で会った時に本当の正体を言わずに今びっくりさせてしまったことを謝るが、アンはすでにあの男がマイケルだと気づいていたので驚いていないのだ。マイケルはアンに呼ばれなくても彼女の回復を待って会いに来るつもりだったと言う。アンは相続したアランの遺産をマイケルに譲り渡そうとするが、彼はその遺産を受け取るべきは自分ではなく、死んだある男の家族だとしてその男の相続人を探すと言う。アンは農場はマイケルのものだと言うが、マイケルはアランの所有物だったと言う。それに対し、あの自然に魅せられているアンは「あの農場は誰のものにもならないのよ」と返す。するとマイケルは「あの日の農場は君のものだった」と言って暗に彼女への恋心を告白する。実はアンも相続の話をするのが目的ではなく、会いたかったからマイケルを呼んだのだ。しかしアンはアランのことを心から愛していたとも言う。マイケルは「分かっている」として、アランと対峙した夜に彼とアンを二人にしたまま去ったのは、自分の中に芽生えていた兄の妻であるはずのアンへの恋心に罪悪感を感じていたからだと明かす。マイケルは「今はそのことについて話したくはないが、いつか…」と言ってあの曲を弾き始めると、アンも彼に合わせるように一緒に弾き始めるのだった。

  • 監督:ヴィンセント・ミネリ
  • 脚本:エドワード・コドロフ
  • 原作:セルマ・ストレイベル
  • 撮影:カール・フロイント
  • 編集:フェリス・ウェブスター
  • 美術:ランドール・デュエル、セドリック・ギボンズ
  • 舞台装置:エドウィン・B・ウィリス
  • 音楽:ハーバート・ストサート
  • 製作:パンドロ・S・バーマン
  • 製作会社:MGM
  • 製作年:1946年
  • 上映時間:116分
  • 出演:キャサリン・ヘプバーン、ロバート・テイラー、ロバート・ミッチェル、エドマンド・グウェン、マージョリー・メイン、ジェーン・メドウズ、クリントンサンドバーグ、ダン・トービン

COMMENT

緊張感あふれる異様な作品

日本では『パリのアメリカ人』や『バンド・ワゴン』などミュージカル映画で有名なヴィンセント・ミネリ。しかし、海外では奇抜で過剰な画面構成のメロドラマを撮る監督としても評価されている。ここで紹介したUndercurrentは象徴的な意味でも実際にも家(家庭)に囚われ抑圧されている女性の物語を、造形的に異様に凝った画面で語っている。しかし、なぜここまで異様な迫力に満ちた画面となっているのか。もしかすると『赤ちゃん教育』や『アダム氏とマダム』などで男や家庭というものに到底従うことのなさそうなキャサリン・へプバーンを主役に据えるという「ミスキャスト」によって、ヘプバーンを家庭の中に抑圧できるほどに画面の圧力を増す必要が生じたからなのかもしれない。生涯、確固たる自我を感じさせたスターであるヘプバーンに対抗しようと躍起になってオカシなことになていくのはロバート・テイラーではなく映画そのものなのかもしれない。

MAIN ARTICLE

Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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