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劇場まわり飯vol.2

映画館の周りの美味しいお店を紹介する『劇場まわり飯』、vol.2です。前回はろくすっぽお店も紹介せずにラーメン雑記をしたためてしまいましたが、今回はちゃんとやりますのでご期待ください。

まず今回取り上げる映画館は『新宿武蔵野館』です。IMG_1610

新宿武蔵野館は1920年開業の現存する新宿最古の映画館であり、一発目としてズバリ大最適。1925年には、かの大作『十戒』を上映しちゃっているというんだから、映画館界の御大なのだ。

もちろん上映作品まで古臭いということではない。むしろシネコンでは扱わないような、大作ではなくとも良質な新作を地域・ジャンル問わず積極的にかけているのが新宿武蔵野館の特色だ。そのため学生からお年寄りまで幅広い層に利用され、「新宿武蔵野館でしかやってない」素敵な作品にも度々出会える。

そんな、チャレンジする老舗劇場の姿勢は、赤い絨毯が敷かれたロビーにも見ることができる。CT1gX46UkAA4OLE

(写真は新宿武蔵野館公式サイトより)

これは2015年11月28日公開の『グリーン・インフェルノ』のディスプレイである。(映画『グリーン・インフェルノ』についてはこちらの記事で紹介しているので是非!)なんとこれ、中がちょっとしたお化け屋敷になっているのだ! しかもこれが劇場の方の手作りらしいから驚きである。というか中に入れる意味がわからない。当館では度々このような体感型(?)のオブジェクトが、結構なサイズでもって出現する。

この他にも、作品によっては突然ロビーに水槽が現れたりもする。“作品によっては”と書いたが、基本的に作品の内容と水槽、更になかにいるお魚たちに直接的関係はなく、むしろこの後紹介するラーメン屋に置いてある方が出汁を取れるだけ自然である。しかし、水槽の中を作品に合わせて作り込んであったりして、毎回かなり凝っている。しかもこの水槽はもはやお馴染みで、姉妹館のシネマカリテにも登場しちゃう人気ぶりだ。(同じ水槽かは知らないが)

とにかく、来場者に楽しんで欲しいという、いわゆるホスピタリティの溢れる劇場なのである。

さて、それでは仮に皆さんがこの武蔵野館で映画を観終わったあと、もしお腹ぺこぺこだったとする。そしてら、まずはそのビルから一刻も早く出て欲しい。劇場は3階だからエレベーターなんて待たずに、階段を駆け下りて。なぜって、皆さんは今から私が紹介するラーメンを食べにいかないといけないからだ。

それなのに、この新宿武蔵野館が入っている武蔵野ビルには、上から下まで飲食店がずらりと揃っている。大衆居酒屋からアジア料理店、更にはみんな大好き『叙々苑』まである。しかも、もし美味しい焼肉で服に臭いがついても大丈夫。1階には人気アパレル店『ZARA』が入っているから、そこで代わりのアウターを調達したら、そのままビルの地下にもぐればなんと新宿駅まで繋がっているのでそのままサヨウナラだ。ラーメンはまた今度だ。

ということになるので、とりあえずおすすめのラーメンを食べるために、ビルを出たらそのまま新宿駅南口のほうへ3分ほど歩いて欲しい。目印としては、1階に服屋さんの『GAP』、上に『タワーレコード』が入っているビルを目指すとわかりやすい。そのビルの正面あたりのちょっとごちゃっとしたところに、今回紹介したいラーメン屋『麺屋 海神』がある。IMG_1607

一見入りにくそうなビルの2階にあるが、海神はラーメン好きのなかではかなりの有名店であり、時間帯によっては行列ができることもある。しかし駅近の人気店のわりには、ピークタイムど真ん中でなければ並ばずに食べることもできるので、臆せずチャレンジして欲しい。

肝心のラーメンは、魚のアラで出汁をとった、海の風味溢れる塩ラーメンが看板である。写真からもわかるように、どちらかというと“あっさり”系のスープだが、そのベースには日ごとにいろいろな魚のアラからとった出汁があるため、行くたびに微妙な変化を楽しむことができる。そしてその複雑な海の旨みは、見た目以上に癖になる深みを醸し出している。IMG_1457 (1)(『麺屋 海神』の塩ラーメン。ちょっとほぐしてから撮ってみた)

よく、“あっさり”系のラーメンは物足りないと思っている味覚マッチョがいる。しかし、丹念に作られた“あっさり”系はしっかりとした余韻を持ち、いかな大食いだろうとその後の間食など寄せ付けない。言うまでもないが、“あっさり”しているから物足りないのではない。“美味しくない”から物足りないのだ。

ところで海神と言ったら海の神、ポセイドンである。そこで映画『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)についても触れておかなければならない。vlcsnap-2015-12-24-10h26m29s561(映画『ポセイドン』より。豪華客船転覆前のパーティシーン)

本作は海底地震による津波で転覆した豪華客船「ポセイドン号」内での、乗客たちの生き残りをかけた脱出劇を描いたいわゆるパニック映画だ。同じタイプだと真っ先に思い浮かぶのが『タイタニック』だと思うが、タイタニックに比べるとあまり船内での人々の営み(看板で抱き合って「♪ヨ〜ヒ〜」みたいの)は描かれず、むしろ転覆後のアドベンチャーと、そこでの人間ドラマにポイントが置かれている。そのため豪華客船での華やかなパーティや娯楽などのシーンはほとんどないのだが、船が転覆するのがちょうど大晦日の年越しパーティ中という最悪のタイミングで、唯一のパーティシーンが地獄の入り口となっているのだ。このシーンでは、皆がテーブルを囲みグラスを掲げ新年を祝ったりしている矢先、突然船が転覆し、天と地がひっくり返り、人々は床を滑り落ちて船内ホールはまさに阿鼻叫喚の様相を程する。vlcsnap-2015-12-24-10h27m38s845(映画『ポセイドン』より。落ちてる! 床を滑り落ちている!)

しかし、私はここで思った。「あー、この時みんなラーメン食べてなくて良かったなー」と。

実際このシーンでは、夜の0時だからなのか、シャンパンなどの飲み物がメインで、食事をしている人は見受けられない。しかし実際なにかつまんでいてもいいはずで、もし、それがラーメンだったらと考えて欲しい。大変だ。汁がやばい。ただでさえ床と天井がひっくり返ってわけがわからないのに、その上熱々のスープが降ってきたらもう絶対助からない。これは“あっさり”でも“こってり”でも同じことだ。凄惨さは一段上のものになったに違いない。そして映画ではその後容赦なく外から海水が流れ込んでくるのだが、その船でもしラーメンが提供されていたならば、そこで出汁は海と再会する。あってはならないことだ。vlcsnap-2015-12-24-10h29m35s934(映画『ポセイドン』より。船が逆さま。こうなったら、脱出のために船底を目指そう)

いったいなんの話だよ、と思ったかもしれない。しかし、実際地震大国に暮らす我々日本人は世界のどこよりもこの惨劇の間近にいるのだ。そう……年越しそばがある限り!

いったいなんの話だろう。『ポセイドン・アドベンチャー』は置いておいて、『新宿武蔵野館』で映画を観る際、もしお腹が減って困っていたら、是非『麺屋 海神』を試していただきたいと思います。

ちなみに『新宿武蔵野館』ですが、どうやら2016年1月末日(30日予定)〜2016年9月末日(予定)まで工事のため休館するようです。(詳しくは劇場HPでご確認ください)

劇場内が変わる(かどうかわからないけど)前に、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

次回は、『シネマカリテ』の近くのラーメン屋を紹介します。お楽しみに!

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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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