Gucchi's Free School

日本未公開・未発売の映画DVDを紹介する情報サイト

Gucchi's Free School > 作品レビュー > 作品レビュー > 『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』レビュー!

『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』レビュー!

劇場へ来たれ!奇跡の誕生だ!


「シラノ・ド・ベルジュラック」は、フランスのエドモン・ロスタンにより作られた戯曲だ。1897年に初演の幕が開いて以来、120年以上世界各国で愛され、日本でも幾度となく上演されている。

映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』は、エドモン・ロスタンが戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を書き上げ、戯曲が劇場で上演されるまでの様子を描いた作品だ。この映画を観て初めに感じたのは、ほんの少しの違和感だ。心動かされるし、登場人物に共感もするが、映画の世界に没入する感覚とは少し違う。この違和感はなんだろう。考えてみたがそれはおそらく、本作の脚本監督アレクシス・ミシャリクが意図した違和感ではないか、と私は結論付けた。

彼は演出家・俳優・そしてエドモンと同じ劇作家としてキャリアを積んできた人物だ。映画の中で、エドモンは筆が進まない戯曲について悩む。すると、目の前で喧嘩騒ぎや、友人の恋の駆け引きが始まり、それら全てからインスピレーションを受け、戯曲が出来上がっていく。いつもエドモンが悩むと、目の前に戯曲のアイディアが現れる。一見するとそれは、シンプルな構成にみえてしまうかもしれない。しかし、エドモンが「劇作家」であることを念頭に入れて見直してみるとどうだろう。シェイクスピアは「お気に召すまま」の中で、「この世は舞台、人はみな役者だ」と記した。私たちの目の前で、喧嘩や恋の駆け引きが始まっても、単なる「出来事」でしかない。しかし、エドモンや監督アレクシス・ミシャリクを含めた劇作家にはきっと、この世界は舞台に見えていて、人々はたくさんの役者で、些細な出来事ひとつひとつが、舞台で演じられているドラマのように感じるのではないか。だから私たちからしたら些細な出来事に過ぎないことでも、一人の役者が生々しく演じた一つのシーンに見えているのだと思う。そこからインスピレーションを受け、目の前の出来事が脚本に反映されることは、劇作家にとっては、いたって自然なことなのかもしれない。
構成がシンプルなのではなく、劇作家にとってはこの世の出来事全てがドラマチックなのだ。それら一つ一つを、見逃すことなんてできない。すべてが劇的で、すべてが愛おしいからだ。エドモンの目線からみたドラマチックな世界を、私たちは映画観賞という形で追体験できる。

本作を見たときに感じた違和感の正体。それは、普段の自分の目線ではなく、劇作家の目線で世界を観せられたことによるものだと気づいた。

昨今、新型コロナウイルスの影響で、演劇界も猛ダメージを受けている。もしかしたら、演劇の光は消えてしまうのではないか。ときに不安に思う。しかし、120年前のエドモン・ロスタンも演劇の終わりを憂惧していた。
「演劇の時代は終わる。これからは、活動写真の投影室の時代だ。」
しかしどうだろう。映画が台頭した後も、演技は形を変え今日まで脈々と受け継がれてきた。演劇を作りたい作り手の情熱と、演劇を観たい観客の情熱があれば、小さな光になったとしても演劇が消えることはきっとない。

さぁ、劇場に行こう!奇跡に立ち合おう!
(もちろん、無理のない範囲で。)

『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』

11月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督・原案・脚本:アレクシス・ミシャリク
出演:トマ・ソリヴェレス、オリヴィエ・グルメ、マティルド・セニエ、トム・レーブ、リュシー・ブジュナー
2018年/フランス/112min/カラー/スコープ/5.1ch/原題:Edmond/日本語字幕:室井麻里
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ/東京テアトル
© LEGENDE FILMS – EZRA – GAUMONT – FRANCE 2 CINEMA – EZRA – NEXUS FACTORY – UMEDIA, ROSEMONDE FILMS – C2M PRODUCTIONS

公式サイト;https://cyranoniaitai.com/


COMMENTS

コメントをどうぞ

内容に問題なければ、下記の「送信する」ボタンを押してください。

MAIN ARTICLE

Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

EVENTS

DIARY

REVIEWS

PUBLISHING