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「写宅部!」(プレミア映写を宅でする部)5日目

ソスカ姉妹の新作『復讐』が(劇場公開、ソフト化ともにないまま)配信スルーされていたので部活動を始めます。ソスカ姉妹については、アクション系というかゴア系というかスラッシャー系というか、そういう映画を好きな方はご存知かと思うが、一般的な知名度はまだまだである。なので、少々説明を加えよう。彼女たちはカナダ出身のシルヴィア&ジェン・ソスカの双子の姉妹で、女優もやりつつ映画の監督をし「Twisted Twins」という製作会社も立ち上げている、という姉妹だ(上の写真のどちらかがシルヴィアでどちらかがジェンだ!)。

なんと今、「Twisted Twins」で調べていたらvimeoに製作した映画群のプロモーションがあがっていたので、早速貼っておく。いやあ、今知りました。

女優かつ監督でもある、みたいなことだと前回の部活動で見た『アイ・オリジンズ』のブリット・マーリングなどがおり、才媛と思われるかもしれないが、上の動画のとおり、このソスカ姉妹はぶん殴り大好き、血が大好きで、カットスロートしなけりゃ映画じゃない、みたいなものを撮っている(『American Mary』『アメリカン・ドクターX』というタイトルでDVDスルーになっているので、気になった方はぜひ。出来はそこそこです!)。

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(⇧『アメリカン・ドクターX』ジェケット写真)

さて、前置きはこのあたりにしておいて、ではこれから新作について書こう。というのになんだが、正直に言うと、実は長編監督デビュー作品の『Dead Hooker in a Trank』が最高傑作ではないかと思っている。思っているというか、はっきりと最高傑作なんだなあ。ポスターを見ただけで『デス・プルーフ』大好き! みたいな感じがプンプンする。トランクから覗く足の角度どうだ? 傑作の感じしますよね。中央の女性の右目がヘンですが、これは目をつぶされたので、テープでとめている。目がえぐられてもテープ貼っとけば問題ないですよね。良いんだよ、この映画。おそらくデビュー作の『Dead Hooker in a Trank』にやられて、ソスカ姉妹を追いかけている人はみんな、また違う、コレじゃない……いや悪くはないけどさ……って人が多いのではないか。

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(⇧左:『Dead Hooker in a Trank』。右上:『デス・プルーフ』ポスター。右下:車と足『デス・プルーフ』より)

で、そんなソスカ姉妹の新作が『復讐』ということになる。彼女たちの映画はまあどれも復讐だろって気もするのだが、今回はそのままずばりである。ちなみにVODスルーなのでYouTubeで見たのだが、セリフ字幕が「復讐」でなければいけないところ、全部「復習」ってなっていた。マジだ。衝撃がすごい。

物語は一番悪いヤツが刑事の奥さんを殺して、その一番悪いヤツに復讐するために刑事が悪いことをすることで、悪いヤツが捕まってる刑務所にわざと収監されて、そこの所長とか実は悪いヤツで、というか刑務所内ですから基本みんな悪いヤツなんだが、その悪いヤツらにやられたり殺ったりしながら一番悪いヤツを殺るという映画。見るからにと頭の悪そうな映画だが、実際にそうなので致し方ないといったところだろう。

この映画は90分ほど。なんとそのほとんどの時間、殺りあっている。ただしポイントがあって、それは「刑務所に収監される」ということ。つまりは簡単に暴力が振るえない場所が舞台ということだ。刑務官がそこら中に巡回していたり、簡単に相手の房へは行けないので、仕掛けるタイミングが難しい……という演出上のポイントが色々と発生するはず。いい手だ。悪くない。そこでひねり出した答えが、「別に刑務官なんて見回ってないし、どこにでも行ける」だ。関係ないんだよ、タイミングとかなんとか。好き勝手に襲いまくって殴るんだよ。なんなんだよ。

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(⇧『復讐』のポスター。後ろの金網は刑務所の金網。左が刑事で右側が一番悪いヤツ)

でもまあさすがに暴れ回っていると取り押さえられて独房に入れられる。まあ刑務所だからね。というか刑務所の中でバンバン殺しているんだから、独房レベルじゃないんだ。とはいえ、刑務所映画といえば独房だ。独房はなにもないところなので、なにもないところで何をさせるかが問われるはずだ。で、なにをするかというと、筋トレをします。

筋トレかぁ。

たしかに何も無くても出来るけど。僕は筋トレについてそんなに詳しくないのですが、筋トレした後はすぐにプロテイン(というかタンパク質)を摂取することが大事です。常識です。筋トレ直後から1時間まではゴールデンタイムとも言われているらしいです。もちろん刑務所なので簡単にタンパク質はとれません。はっきり言ってただ筋肉がダルくなって攻撃力が落ちるだけでしょう。ちなみに独房じゃなくて屋上でも筋トレしてます、この映画の受刑者たちは。人をぶん殴っているか、筋トレしているかなんですね。これがすごい面白いんだよ。

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(⇧『復讐』より。刑務所の屋上で筋トレする受刑者たち)

映画を見ていると、なぜかわからないけれど、筋肉をつければなんとかなるという「筋肉信仰」のようなものがあるわけです。最近では『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』で、二大筋肉俳優、マーク・ウォールバーグと“ザ・ロック”ドウェイン・ジョンソンが筋トレしまくっています。一攫千金=筋トレという等式が成り立つと信じる世界が映画にはある。そんな世界があることを信じられない方は映画を見てくれとしかいいようがない。

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(⇧『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』で、建物の壁面で筋トレをするマーク・ウォールバーグ)

『ペイン&ゲイン』は“ザ・ロック”でしたが『復讐』は、“ザ・ロック”と同じくプロレスラーWWE所属の”ザ・ビッグ・ショー” ポール・ワイトが出ています。この人がめちゃくちゃデカい。というかデカすぎる。“ザ・ロック”もデカいですが、”ザ・ビッグ・ショー”はあまりにもデカいです。身長213cm、体重200kgとのこと。世界最大のアスリートと呼ばれています。この映画、かなりゴツめのガッチガチの人たちがわんさか出ているんですが、”ザ・ビッグ・ショー”がデカすぎるゆえに、周りの人が小さく見えるという事態が頻出します。

ちなみに、ガチガチムキムキの人々のなか、標準体型の男が出てくる。所長である。こいつも悪い。この所長は色々な思惑があって、主人公の刑事にラクな仕事を与えてやる、と言って洗濯の仕事を与える。なるほど、刑務所の仕事でラクといえば洗濯なのかぁなどと思って見てしまうが、少し調べてみよう(まあ洗濯してる最中に早速襲われて死にかけるで、仕事自体がラクなのかどうかはまったくわからないのだけど)。調べてみると、あった。はじめての刑務所体験記だ。タイトルはこれでいいのか。体験って小学生の課外授業みたいだ。まあ体験してきたから体験記なんだろうけど。このブログ記事は日本の刑務所の場合だろうが、刑務所の仕事でラクなのは図書工場だそうです。洗濯もキツい部類ではなく、冬場は暖かくて結構良いらしいが、最もラクなのは図書工場なのだ。

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(⇧洗濯していると早速襲われる。『復讐』より)

図書の仕事を与えてもいいはずなのになぜ洗濯の仕事なのか。そこから衣服の問題が浮き上がってくるだろう。

囚人服はご存知の通りオレンジである。脱走などをさせないために目立たせるためというのは有名な話である。しかし困ったことにみな同じだと、映画にとってまずいはず。しかしここでのソスカ姉妹に抜かりは無い。今までの写真を見て分かる通り、囚人服といっても上着にバリエーションを持たせている。オレンジの上着でいる。シャツでいる。タンクトップでいる。この三つである。

そもそも決められた同じ服、つまり制服を着ることによって個性が消される、というのは浅はかな考えだ。よく「みんな似たような服で個性が無い」みちいな言葉がまかり通っているが、はっきりいって浅いな〜。浅い、浅いよ。浅いとしか言えないよ。

ここで、部活動2日目でもお世話になった『モモレンジャー@秋葉原』(著 鹿島茂)をひもとこう。衣服について何かを言うならば避けて通れない必読書だ。その「制服フェチの原点」という章にずばりこうある。引用しよう。

「では、制服の本質とはなんなのか?

それは、個性を抹消することによって逆に個性を際立たせることである。

制服を着るということは、類似という一点で多様な人間の外貌をひとくくりにすることを意味するが、そのとき現れるのは、じつは、類似ではなく差異なのである。」

さらに

「この類似の強制による差異の突出は、顔ばかりか、肉体においても観察される。(中略)同じ制服に包まれた「お尻」や「乳房」は、お尻や乳房の個性を消すのではなく、逆にそれを強調する。目立つものはますます目立つのである。」

なるほどなぁ。このあと、バスガールなどについての例で綴られる制服フェチに関しての奥深さはぜひ、著作をあたり、どっぷりと浸かっていただきたい。

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では、この『復讐』で強調され、ますます目立つものはなにか。もちろん「筋肉」である。自信のない者は上着で二の腕を隠す。ちょっと自信がある者はシャツ姿に、最強を自負する者はタンクトップだ(もちろんソスカ姉妹の大好きな「血」を描くためにオレンジの上着を着させないという場合もある)。

もう一歩踏み込もう。じゃあズボンはどうなんだ。腕はいいから足はどうなんだよ、と。もっともかつ鋭い指摘である。これに関してはみな同じオレンジのズボンだ。ここがこの映画最大の問題だ。結局、この映画は上半身の映画でしかない。暴力描写に重みはある(ありそうな感じがする)も、速さがないんだ。足が使えてないのは見た人ならば絶対に思うはずだ(実は一度だけ「足」が使われるシーンがあるが、どういう使われ方をされているかはぜひ本編でチェックしてみよう! ポイントはそこに「速さ」があるか、である。)。

顕著に足の使えなさが現れるのは、ラストの銃撃戦のシーン。銃を向けられてどう回避するかが問われるシーンにおいて、主人公が取る行動は、「まっすぐ相手に向かって歩く」である。まったく足を使わない。走ることすらしない。

使おうよ、足。

ven_10(⇧ラストの銃撃戦シーンの一コマ。『復讐』より)

ソスカ姉妹はアクションを撮るにあたって、下半身ではなく上半身に賭けた。ここで映画においては「重さ」と「速さ」、どちらをチカラを描くべきか、と考えてもいいかもしれない(とりあえず僕は考えないが)。

ひとつ言えるのは、上半身アクションの必殺としての首締めがある。太い首に太い腕がからまり、直に死の危険があるので力みも最大限だ。しかし往々にして、この描写は難しい。ほとんどの場合、あんまり力入ってないんじゃないか、みたいに見えるという経験は多くの方がお持ちのはずだ。難しいなあ、首絞めは。首絞めが撮れたら最高の上半身アクション監督として表彰されていもいいと、僕は思っている。では、上半身アクション最大の監督は、作品はどれか。というのも考えていいかもしれない。いずれ部活動で扱ってみたいと思っています。

vendetta(⇧必殺の首絞め。『復讐』より)

というところで、そろそろ今回の部活動も終わりにしたいと思いますが、最初の方で言及した『Dead Hooker in a Trank』『デス・プルーフ』を思い出すと、女性が活躍の映画には上半身(=二の腕)よりも下半身(=「足」)のアクションが多いのかもしれない(『デス・プルーフ』のファーストショットとラストショットを思い出そう!)。

(⇧『デス・プルーフ』オープニング)

(⇧『デス・プルーフ』エンディング)

ならば、上半身アクションと下半身アクションをあくまで分けて撮りあげるソスカ姉妹もまだまだ「男」「女」の枠に囚われすぎているんじゃないか。頑張れソスカ姉妹。

では終わります。

(text:satoshifuruya

 


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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