Gucchi's Free School

日本未公開・未発売の映画DVDを紹介する情報サイト

Gucchi's Free School > 作品レビュー > 作品レビュー > ブルハン・クルバニ監督作『ベルリン・アレクサンダープラッツ』オンライン上映開始!

ブルハン・クルバニ監督作『ベルリン・アレクサンダープラッツ』オンライン上映開始!

2021年5月20日(木)より、MIRAIL(ミレール)Amazon Prime VideoU-NEXTの動画配信サービスにてオンライン上映が開始された映画『ベルリン・アレクサンダープラッツ』をオンライン試写会で拝見しました。

本作は、1980年にニュー・ジャーマン・シネマの担い手として台頭したライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督によって製作された⻑編TV映画でも有名な現代ドイツ文学の金字塔「ベルリン・アレクサンダー広場」を現代の物語として語り直した作品です。

一番の見どころはなんといってもドイツ男性であった主人公フランツが黒人移⺠のフランシス/フランツへと書き換えられている点です。黒人移民としてのフランシスと新天地ドイツで成り上がり“善人”として生きたいフランツという二重性を帯びたキャラクターは、現代のドイツにとどまらない現代社会が抱える人種差別、難⺠問題、貧富の格差といった様々な構造的矛盾を描く上で重要な造形になっていますし、具体的には仮面といったアイテムの使い方など、演出上も大いに注目するべきポイントとなっています。

このフランシス/フランツを演じた俳優ウェルケット・ブンゲの熱演も大変素晴らしい者ですが、もう一人注目すべき人物にアルブレヒト・シュッヘ演じるラインホルトがいます。

困窮するフランシス/フランツに手を差し伸べるかのように麻薬売人への世界へと誘う彼は、怪しい魅力を放ついわるゆカリスマ的な人物として描かれます。

彼の怪しいカリスマ性は、なかなか映画でみないタイプの魅力を放ち、非常に新鮮に写ります。派手でもなく力強くもなく、むしろどちらかというと弱々しく、陰湿で卑怯者のように演出されるラインホルトですが、しかし彼から離れることができないフランシス/フランツ。

これは、わかりやすい重大な事件ではなく、小さな事件やできことでありながらも日常に蔓延り、着実に人の人生を狂わせていくこの物語「ベルリン・アレクサンダー広場」の特色をとてもうまく体現しているようにも思います。

このことは、例えば麻薬売買が決して劇的なシーンを構成せずに、公園でのお散歩やランチといった日常のたわいものないものとして繰り返し描かれることなどにも繋がっているでしょう。

ベルリン・アレクサンダープラッツ』は、有名な文学作品を原作に持ち、偉大なる映像作品もすでにありながら、舞台を現代ドイツに置き換え現代的な問題を基盤にすえ3時間を超える大作に仕上げながらも、些細で怪しい魅力に満ちた作品になっています。


<作品概要>
1920年代に出版されたドイツ文学の巨匠アルフレート・デーブリンの名作『ベルリン・アレクサンダー広場』を、ドイツの新進気鋭監督ブルハン・クルバニが構想に7年もの歳月をかけて大胆な解釈で現代劇として映画化。ドイツ・ベルリンの最貧困層で生きながら、そこから抜け出そうともがく不法移民の青年・フランシスの苦悩と愛を描く。
ストーリーアフリカからヨーロッパを目指していた不法移民のフランシスは、船が嵐に遭遇した時に、もし無事に上陸できたなら今後は心を入れ替えて真面目に生きると誓う。その後ドイツへ辿り着くことができたフランシスだが、難民生活は過酷を極め、裏社会に生きる狡猾なドイツ人男性ラインホルトの手引きで犯罪に手を染めていく。そんな中、ある女性と出会ったことでフランシスは運命を変えようとするが・・・。

監督:ブルハン・クルバニ
脚本:マーティン・ベーンケ、ブルハン・クルバニ
原作:アルフレート・デーブリーン『ベルリン・アレクサンダー広場』
撮影:ヨシ・ハイムラート
音楽:ダーシャ・ダウエンハウアー
出演:ウェルケット・ブンゲ、イェラ・ハーゼ、アルブレヒト・シュッヘ、アナベル・マンデン、ヨアヒム・クロルほか
2020 年/183 分/5.1ch/カラー/2.39:1 (シネスコ)/ドイツ・オランダ/R15+相当
原題:Berlin Alexanderplatz
配給:STAR CHANNEL MOVIES 宣伝:ライトフィルム
公式 URL:https://star-ch.jp/starchannel-movies/detail_048.php
公式 SNS:twitter:@berlinalex_jp
Instagram:berlinalex_jp
Facebook:berlinalex.jp
配信先:【MIRAIL(ミレール)】https://mirail.video/title/1030001
【Amazon Prime Video】https://www.amazon.co.jp/Prime-Video/b?node=3535604051
【U-NEXT】https://video.unext.jp/
価格:1,500円(税込)/購入から48時間視聴可能/MIRAILのみ「特典映像アフタートーク」付きバージョン(ブルハン・クルバニ監督、ウェルケット・ブンゲインタビュー)※変更の可能性あり

(c)Sabine Hackenberg, Sommerhaus Filmproduktion(c)Wolfgang Ennenbach, Sommerhaus Filmproduktion
(c)Sabine Hackenberg, Sommerhaus Filmproduktion
(c)Wolfgang Ennenbach, Sommerhaus Filmproduktion

COMMENTS

コメントをどうぞ

内容に問題なければ、下記の「送信する」ボタンを押してください。

MAIN ARTICLE

Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

EVENTS

DIARY

REVIEWS

PUBLISHING