Gucchi's Free School

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The Source

2010年代~, コメディ, ドラマ, 恋愛

監督:ラデュ・ミヘイレアニュ / 上映時間:135分

北アフリカ、中東の貧しい村の物語。
この村では伝統的に女が山の上の湧き水から水を汲んでくる。村は干ばつで貧しく、教育を受けている人はほとんどいない。レイラは教育を受けていて、夫のサミはこの村の先生だ。レイラは村の女性たちにストライキを呼びかけ、男性たちに水を持ってくるように奮闘する。

詳しいあらすじ


ある中東の村の物語。干ばつで村は貧乏である。
女性が大きなバケツを担いで歩いている。辛そうだが、冗談を飛ばしたりして励まし合っている。
女性のうち一人は妊娠中であることがわかる。女性たちが湧き水の出てる場所にたどり着いて、一休みする。水を掛け合ったり遊び、バケツに水を汲んでまた帰る。
しかし帰路で、妊娠中の女性が転んでしまう。足をつたる血が見える。

一方で村ではある女性が元気な男の子を産み、村のみんなが祝福する。そこで水を汲みに行っていた女性たちが帰ってくる。
村の住民は喜んでいるが、素直に喜べない女性は歌を歌い始める。その歌は悲しい歌であった。それに負けじと他の住民が喜びの歌を合唱する。

その日の夜。家族集まって夕飯を囲む。祭りの日の夜にもかかわらず、みんな暗い顔をしている。
おじいさんが笑顔を作るように女性に頼むと、家族の半数は食卓を離れてしまう。

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大衆浴場では女たちが笑いながら風呂に入っている。しかしレイラが立ち上がり、山で赤ちゃんが死んだのに笑っている場合ではないと主張する。他にも山に水を汲みに行って赤ちゃんが死んだことがあるのに、女が山に行って水を汲むのをやめるべきだと怒る。ところが女が山へ水を汲みに行くことは大昔から続けられている伝統なのに、外国人のレイラが言える立場ではないと反感を買ってしまう。冗談交じりにレイラに賛同する人も居る。

そこで女性たちのリーダー的存在のおばあさんが入り、仲裁する。レイラはもう村の男を結婚してるから外国人ではないと擁護する。そして続けて自分の人生について語る。おばあさんは19人の子供を産み12人の子供が死んだ。そのうち2人は山に水を汲みに行った時であったという。そして風呂場にいた女性をについても何人の赤ちゃんを産み、何人が死んだか叫ぶ。
おばあさんの主張は、みんな経験していること。幸せだったのは結婚する14歳の時までで、7人の子供を健康に育て上げたが、それ以降は幸せだったことはないという。男が水を汲むべきだという。
どうやって男に水を汲みに行かせるの?と一人が聞くと、ストライキとレイラが答える。愛のストライキだと。
しかしそこにいた女性は誰も素直に賛同出来ない。

ある日レイラとおばあさんが仕事に行っている間、村の男たちはお茶を飲んで話し合っている。一部の女性がストライキを決行しているようだ。

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レイラの義母は風呂場で一番レイラの反対している女性だ。彼女はレイラを魔女呼ばわりするが、夫のサミはレイラを愛していると伝える。サミはレイラの意見に賛成していて、イスラム教にも反していないし、もっと戦うべきだと言う。

サミは学校の先生だ。朝、学校に走る子供がいる傍ら、学校に行けず家事の手伝いをさせられている子供もいる。サミがモスクの指導者に学校に行かせるよう直談判するが、反対的だ。

村にツアー集団がやってくる。ツアー集団が村にお金を渡し、そのお金は村の復興に役立たせるという。村人はツアー集団を歓迎し、彼らのために歌って踊る。
女性たちがみんなの前で踊りながら歌うが、歌の内容は村が干ばつしていて水に飢えているというのに男がいかに働かずにいるかという内容だ。村の男たちの大半は喜べないでいる。ツアー旅行者にもらったお金はどこへ行くのか。冷蔵庫も車も欲しいと歌う。
村人が何を歌っているのかガイドに聞くと、村の豊穣を願うの歌と答える。

学校ではある女の子がいじめられている。その子の母親はストライキに参加しているから魔女なのだという。
その日の夜、女の子が食卓でその話をするとおじいさんにビンタされてしまう。

サミがある本をレイラにプレゼントする。千一夜物語というアラビア説話集である。イスラムの教えに反しているとして、多くのアラビアの地域では喜ばれない本だ。教養のあるレイラでも存在すら知らなかった。レイラが何の本なのか聞くと、サミは愛だと答える。続けてあまり村の男たちを挑発するなと注意する。敵を作ってはならない、愛と尊敬のあるストライキをするよう頼む。

女たちが川で洗濯をしている。ストライキは続けられているが、女がみんな同じ状況ではないようだ。女たちの間でも分裂しかけているが、おばあさんが団結するよう促す。
しかしレイラのように旦那から愛されている女は多くない。ストライキが原因で暴力を振るわれているのだ。ストライキの内容は水を汲まないだけでなく、旦那との性行為もしないのが、彼女たちの愛のストライキだ。
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ある日、男たちは集まって会議をする。干ばつに対して州政府に助けを求めているがいくら待っても返事すらない。そこで教育のあるサミの意見を聞くと、サミは、州に助けを求め続け祈るべきだという。ストライキに関して聞かれると男は女を手伝うべきだという。しかしある男が、自分の妻をコントロールできなければ俺がするぞと発言し、乱闘に発展する。サミやサミに賛同するのは比較的若い男達だ。男たちはなぜ村の年寄りは乱暴なのかと、対立してしまう。

the source 06
おばあさんがロバに乗り、息子のナッシムに電話をかける。
電波が悪くなり、電話は切れる。ロバに戻るよう命令するが、いうことを聞かない。

レイラは友達のエスメラルダのためにスリムという彼氏へのラブレターの返事を書く。

市場では村のおじいさんが買い物をする。そこでおじいさんの娘を嫁にもらう予定だった男性と出くわすが、男性は魔女はいらないという。
嫁になるはずだった女はレイラに襲いかかる。

携帯が鳴る。レイラの実の母親からだ。喜びも束の間、ストライキをすぐにやめるよう言われる。レイラの義母が伝えたようで、レイラと義母の関係はさらに悪化する。
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サミは町に出かけて水道を通すように頼むが、断られる。電気や水道が通ると女は次に洗濯機を求めるようになる。そして時間ができると女は電話をする。すると水道代、電気代、電話代とどんどんお金がかかる上に女は怠慢になると。
村には水道も電気もない方が幸せだと言って、聞く耳を持たない。

サミは家に帰ると父親に話しかけられる。生徒の親から、連絡があったという。それはサミが生徒に悪影響を及ぼしていると。
村人はレイラがサミに魔法をかけたと噂になっている。そして父親はレイラと縁を切り、新しい嫁を娶り、子供を産めば村に平和が来るという。今は村が分裂している状態だ。

その夜、レイラとサミは言い合いになる。
もちろんサミはレイラを応援するが、レイラにとってサミの言い分は村の男と一緒だと怒ってしまう。
夜中にレイラは家を出て、村の男たちが集まるカフェに「この村では愛のストライキを敢行中」と落書きをする。

ある男がやってきて、カリムを探しているという。
男はジャーナリストのソフィアンという男で、カリムの家で寝泊まりするようだ。

女はソフィアンに村の現状を伝えるべきだというが、男は昆虫学者で虫の記事しか書かないという。
サミが頼み込むが、虫にしか興味がないから書けないと返事をする。

おばあさんがレイラを尋ねる。ソフィアンが山の湧き水のところで待っているからと。
そしてレイラがソフィアンに会いに行くが、見かけるなり逃げてしまう。ソフィアンはレイラの名を呼びながら追いかけてくる。妻が死んで、会いに来たという。しかしレイラはもう結婚していると言って逃げる。

女たちが指から血を流しながら枝を紐で結んで何かを作っている。

エスメラルダにまたラブレターを書くように頼まれる。エスメラルダはセックスに興味があり、あれこれをレイラに聞くが、レイラは気分を害して家に帰る。
レイラが家に帰ると、義父に話しかけられる。男に戦争を仕掛けるなと頼む。男は代々村と家族を守るために戦って来たという。戦争がなくなった今、男は命をかける必要はないとレイラは言う。

ある日サミが男と話していると、村の若い男がサミに話しかける。彼は昔からサミと友人であったが、今まで言えなかったを粉を告白する。実は作家になりたかったこと。サミはいつも優等生で全てに於いて自分は負けていたと。ある日父親から学校へ行くなと言われ、カバンも教科書も全部売られてしまったと。それを伝えたかったのだと。

サミが街から帰ってくると、レイラが待ち伏せをしていた。サミは学校をクビになったことを伝える。

レイラが仕事をしていると、辛そうに木に倒れこむ。そこでソフィアンが話しかけて、助けるが、拒否される。
その日の夜、また近所では暴力が振るわれている音を聞く。

早朝、レイラはサミを起こす。そしてサミにソフィアンとの関係を告白する。ソフィアンとは昔恋仲であったが、彼の母親が結婚相手を決めて、自分は置いてかれたこと。恋人がいたことを言えなかったのは、サミに捨てられると思ったから。

レイラはおばあさんに相談する。レイラはサミを愛しているが、今まで嘘をついてきた。
サミが村の男たちの集会に行くと、断られる。サミは集会に参加することを禁じられたのだ。

サミは父親からレイラとは縁を切るなと伝える。
レイラが手紙を行商人に渡すと、エスメラルダがそれを見ており、行商人がエスメラルダに手紙を渡そうとするが拒否する。友達は今までレイラが手紙を書いていたと信じ込む。
しかし実際はスリムが手紙を直接渡せなくなったからであった。なぜ直接自分に渡さないのか聞くと、単純に行商人が友達に渡したいからであった。

その日村の女達は行動を起こす。みんな布団を持って出かけ始める。
女達が枝を結んでいたものだ。枝を結んで、井戸を模したものを作っていた。
その井戸には弾幕があり、「あなたの心はこの井戸のように乾いてトゲがある」と書いてある。
その日のうちに男達は井戸を焼きはらう。

女達が揃って出かけると、サミはカリムが出かけているのを見かけ、カリムの家に行って、ソフィアンの元へ行く。サミの手にはナイフがある。

女達は寺院に行き、指導者に話を聞く。
指導者はクルアーンを引用しつつストライキをやめるように言う。
しかし実はおばあさんの息子のムハメドが村長に賄賂を渡して、指導者の地位を狙っていることが発覚する。

その頃サミはソフィアンの喉元にナイフを当てている。何しに来たのか問うと、わからないと答える。もしかしたらレイラはサミを愛していなくて、レイラを連れ戻せるかもと思ったが、村人はみんなレイラは夫を愛し、夫はレイラを愛しすぎているという。だからもうわからないんだ、と。

寺院では、女性と男性の関係についてクルアーンに書いてあるというのは、すべて解釈だとレイラが主張する。女性と男性は対等であるべきだと聖書は言っているとレイラは実際に聖書から引用して主張する。

サミの父親が、ナイフを持っているサミを見つける。
サミはソフィアンを殺さなかった。

指導者は妻に質問する。「なぜお前は、常に主人の側にいるんだ?」
しかし妻は何も答えずに去る。

その夜、村のほかの男には見つからないようにサミが水を湧き水から水を汲む。
そこにレイラが現れる。ストライキに参加するか聞くと、サミは笑顔で返す。

行商人が村に来て、エスメラルダともう一人の女性がキャンディを買う。エスメラルダはどうしてそんなにお金を持っているのか聞く。女性は、スリムの奥さんに布を売ったのだと答える。エスメラルダの文通相手と同じ名前だ。しかも文通相手を同じ村のスリムだ。スリムの母は村の一番の金持ちからリムを嫁にもらったという。それを聞いてエスメラルダは固まってしまう。

おばあさんの息子のムハメドが指導者に会いに行く。何かを渡そうとするが、指導者は断る。

おばあさんが家に帰ってくるなり、息子に何で私はヒジャブ(イスラム教の頭を隠す布)をしなくてはいけないのかと問う。昔ヒジャブの有無は奴隷と高貴な女性を区別するために着用していたという。着用するのが高貴な女性である。しかし時代は変わり、今奴隷の女性はいない。息子にもっと自分で物事を考えて、他の男の意見に流されるなと注意する。

the source 07
サミはレイラにいつこの戦いが終わるのか聞く。水を組む必要がなくなった時なのか。レイラはその質問に対して、女性とは何かを聞く。サミは理解できないでいる。

サミがソフィアンに会いに行く。三日後に祭りがあることを伝えるとすぐに去る。
その頃レイラが寝込んでいるエスメラルダを見かける。スリムに手紙は書かないのかと聞くと、今日は書かないという。
突然男が現れて、外に出ることは夢にでも見るなという。

その男が村の男に、女性が今度の祭りで、村でストライキが起こっていることを広める気なのだと伝える。そして他の女性にも参加するように促すのが目的なのだという。
男は良いアイディアがあるといい、ライフルを持った男に賄賂を手渡す。

女性たちも男たちが、女性たちの祭りの参加を阻止しようとしているのに気づいているので、レイラはある案を出す。

the source 04
祭りの日。村の男たちが参加している。ソフィアンもいる。
その頃、布に包んだ女性たちが歩いていると、銃を持った騎馬隊に拉致される。
村の男たちが踊っているところで、ソフィアンとサミが合流する。
村の男たちが歌っているのは、豊穣の歌と男の威厳についてだ。しかし、そこで割り込むように女性の歌声が始まり、男たちの踊りを阻止する。
割り込んできた女性たちの頭にはベールがかけられており、それがとれると、正体は村の女性たちであることがわかった。
女性たちが歌っているのは、村でストライキが起こっていること、旅行者から受け取るお金はパイプに通すべきだという訴えであった。
踊りの最中、エスメラルダは妻と一緒にいるスリムに話しかける。
サミはソフィアンに、レイラが好きならこのことを記事にするんだと伝える。ソフィアンは家に帰るなり、早速記事を書き始める。

the source 05
レイラが家で仕事をしているとエスメラルダが話しかける。そしてレイラの前で自分で手紙を書き始めた。
女性たちは、テレビの前に集まり、男女が愛しあっているテレビを見る。夢中になっているエスメラルダをみんながからかう。

ある夜、ソフィアンがサミに雑誌を渡す。雑誌にはこの村の出来事が取り上げられ、政府はこれが国中に女性たちに知れ渡りストライキに参加するのではないかと懸念し、早急に問題を解決するべきだと動き始めるという。

村にはスーツを着た老人が訪れ、二日で工事に取りかかると告げる。そこでおばあさんの家から二人の男が追い出されるのを目撃されるが、村の男はあの二人は部外者だという。

ソフィアンが荷造りしているとレイラが訪れる。そしてレイラは花を一本渡すと走り去る。
レイラとサミが愛し合い、喜びを分かち合う。

村についに水道が通る。女性が笑顔でバケツに水を汲む。
the source 09
村では祭りが行われ、村の女性みんなが笑顔に満ちている。
エスメラルダは隣の村に行き、スリムにビンタをして去る。そして行商人に手紙を渡すと、抱き合う。

行商人が村に行き、エスメラルダからの手紙をレイラに渡す。
レイラに感謝を伝える。

  • 監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
  • 脚本:アラインミッチェル・ブラン、ラデュ・ミヘイレアニュ
  • 撮影:グリン・スピーカート
  • 編集:ルド・トロク
  • 音楽:アーマンド・アマー
  • 製作会社:Elzevir Films、Oï Oï Oï Productions
  • 配給:EuropaCorp Distribution
  • 製作年:2011年
  • 上映時間:135分
  • 出演:レイラ・ベクティ、ハフイア、ヘルズィ、ビヨウナ

COMMENT

宗教と女性問題を取り上げた本作

本作は2011年のカンヌ国際映画祭にてパルムドールにノミネートされた作品。
監督は前回「オーケストラ!」を撮ったラデュ・ミヘイレアニュ。前作からでも見られるようにラデュが監督する映画は、宗教や人種を題材にしたものが多い。
今回はイスラム教と男尊女卑がテーマとなっており、あまり日本では馴染みのない舞台となっている。物語も日本人が見てもあまり理解できない箇所がいくつかあるように思える。それが今作日本でDVDスルーすらしなかった要因かもしれない。
ちなみに日本で上映されたラデュの作品は前作の「オーケストラ!」のみである。今後彼の作品が日本で上映されるのは難しいかもしれない。

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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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