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「写宅部!」(プレミア映写を宅でする部)6日目-遠征編-

今回はイレギュラーですが、遠征編ということで、現在公開中のイーライ・ロス監督『グリーン・インフェルノ』と未公開(で未ソフト化)映画、John Stalberg Jr.監督の『HIGH SCHOOL』について少しだけ書きたいと思いまして、部活動を始めます。

というのも『グリーン・インフェルノ』をよりよく理解するためには『HIGH SCHOOL』が必要だ、といった真面目な思いに駆られたからです。

さて、まず『グリーン・インフェルノ』という映画ですが、先に書きました通り、現在公開中です。都内では武蔵野館や立川シネマシティという新宿の映画館でかかっています。武蔵野館は、時期によっては金券ショップで株主招待券をレンタルすれば、500円とかで見れたり見れなかったり、という感じです。

この『グリーン・インフェルノ』は、R18指定になっているですが、『劇場版ガールズ&パンツァー』放映前に『グリーン・インフェルノ』の予告映像を流した「立川シネマシティ」が話題になったりしたので(ファミリーで映画を見にきたのに、R18映画の予告編で子どもがトラウマに……)ご存知の方も多いかもしれません。

なぜR18というと、この映画、食人映画なんですね。カニバリズムというやつです。カニバリ映画。人が人を食う映画です。

(⇧R18です。ご注意を。)

つまり食事が最大のテーマになるわけですね。最凶の食事としての食人です。となれば、この映画を始めるにあたってどういう描写が相応しいのか。いかがでしょうか。そうです。ご想像の通り“不食”です。この映画は“不食”から始まります。

冒頭、アメリカの大学内で起こっているハンスト(ハンガー・ストライキ)から始まったのには、思わず「お見事!」と全観客が思いました。一応、補足しておきますとハンストとはマハトマ・ガンディーが始めた非暴力抵抗運動の一つであり、何らかの主張を世間に広く訴えるために、“断食”を行うストライキの一種です。

だから“不食”じゃなく、“断食”から始まってました。すいません。いま、不食、断食、あるいは無食(むじき)、このあたりどういう使い分けがされているのか気になったんですが、今日は割愛させていただきます。

20130322_439726(⇧ガンディーを調べていたら、ガンディーの名言のiPhone caseを見つけた。)

つまりアメリカで“断食”して、ペルーにある未開のジャングルで食人族と出会い、食べられたり、食べたりする。どんな映画なんだよ。

食の一方のキワである、零度の食事としての“断食”から、もう一方のキワ、最凶の食事としての“食人”という流れは、「お食事映画を撮る!」というイーライ・ロス監督の心意気を非常に感じるところですが、さらに巧妙なのは、その間(断食は途中で終わります)をさりげなくと描いているところだと思われます。

アメリカからペルーに渡るとき、つまりアメリカでの最後の夜に、主人公は一体なにを食べたのか。もし、すでにご覧になっていた方の中で失念されている方がいらっしゃれば、ぜひ再見していただきたい。そしてまだご覧になっていない方がいれば、ぜひ見逃さずにいただきたい。

まあ、ピザなんですけどね。

ピザを食べるんですよ。やっぱりね。アメリカ人は最後の夜にはピザを食います。

突き止めました。どこのピザを食っていたかを。Koronet Pizzaという店のピザを食ってます。

じゃあ住所等、書きますね。

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Koronet Pizza(NYC)

住所: 2848 Broadway, New York, NY 10025 アメリカ合衆国

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おそらくここで間違いないです。で、そこのピザはどんなんかというと……

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でけぇ。

いや、でかいよ。でかすぎるよ。

バカなのかな?

ちなみに映画で食べてるピザももちろんデカいです。まあここのピザですからね。

女性二人(主人公とそのルームメイト)と男性一人(ルームメイトの彼氏かな?)がそれぞれ食べているんですけど、男性の食べ方がちょっと面白いです。すっごいちょびちょび食べてます。何テイクか撮って、お腹がいっぱいになったのかな。このあたりポイントですので注意していただけると幸いです。

食人が狂っているのであれば、同じレベルで狂ってるでしょこれ。子どもに食べさせれば、こちらの方がよっぽどトラウマになると思います。いかがでしょうか。

 

こども

バカなのかな?

泣くでしょ。どうするの。まあ、つまりペルーの食人族と同じようにアメリカ人やばい……ということをしっかりと入れているわけですね。いやたぶん正確なところは、「アメリカ最後の夜はピザだよね〜、ピザなら当然このサイズ、だよね〜」というイーライ・ロス(というかアメリカ人)にとってはとても自然なこと、がただ描かれていたということなんでしょう。

しかし最初に書きました、“『グリーン・インフェルノ』をよりよく理解するためには『HIGH SCHOOL』が必要だ”

というのはピザとは関係ありません。

未見の方もいらっしゃると思うので、あまり詳しく書かないようにしますが、ペルーにやってきたアメリカ人たちは食人族に捕まってしまいます。村の真ん中にある家畜小屋に入れられてしまうんですね。そこで、仲間の一人が持っていたマリファナをある食べ物に詰め込んで、村中の食人族に食べさせ、ブリってるところを脱出しようと企てるんです。そのマリファナ作戦を実行しようと思ったときに、一人のアメリカ人がこう言います。

「そんなガキの発想が通用すると思うのか?」

うん、ちょっと意味がわからないよね。どこがガキの発想なのか。じゃあなにか、と。アメリカ人のガキは、ある集団全員を撹乱させ危機を脱するため食べ物にマリファナを詰め込むのか、と。

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(⇧言わずと知れた『オースティン・パワーズ』の名キャッチ「バカも休み休みyeah!」です。)

で、詰め込むか詰め込まないかと言えば、詰め込みます。アメリカ人のガキは大体マリファナを食べ物に詰め込みます。

映画『HIGH SCHOOL』では、ブラウニーにマリファナを詰め込みます。

この『HIGH SCHOOL』に出てくる今までずっと真面目にやってきて高校生のヘンリーくん、ついにMIT(マサチューセッツ工科大学)から奨学金を手にして、気がゆるみ生涯で一度、このときだけマリファナを吸ってしまいました。ちょうどそのとき、運悪く全校生徒を対象とした抜き打ち薬物検査を実施する事が高校で決まります。MITもキマって、マリファナもキメたときに、薬物検査がキマります。退学処分&MITの奨学金も消えてしまうではないか……困ったヘンリーくんは全校生徒にマリファナ入りのブラウニーを食べさせて、全員不合格にして有耶無耶にさせるという決死の大作戦を実行します。

規模がすごいよ。

おそらく『グリーン・インフェルノ』の先ほどのセリフ、本国では「あーそれね。やったやった笑」みたいな反応だったことでしょう。

マリファナギャグというものがアメリカにはあるんですよね。禁煙を言い渡された男が隠れて吸っていてる娘に見つかって「あータバコ吸ってるぅ!」「これはね、マリファナだよ。だから体にいいんだよ。HAHAHA!」みたいなやつね(たしか『ブロークン・フラワーズ』とかにありましたね)。もうだめだこいつら。

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(⇧ブラウニー。しかしマリファナが入っているかもしれない。アメリカに行ったら注意しよう! マジで入ってたりするらしいゾ)

実は『HIGH SCHOOL』というタイトルのHighは“、高校”と一発キメた“ハイ”とがかぶってるんですね。なるほど! くだらねぇ!

というわけで、この2つのマリファナ作戦、どこがどう一緒でどこがどう違うのか、ぜひ見比べていただきたい。

少しだけ言いますと、『HIGH SCHOOL』にはエイドリアン・ブロディも出ています。彼はドラッグ・ディーラーなんですが、見た目が、完全に未開の少数部族です。ヘンリーくん、ほとんどゾンビ化する場面も。『グリーン・インフェルノ』見た方はピンと来るのでないでしょうか。

(⇧『HIGH SCHOOL』の予告編。サムネはエイドリアン・ブロディとヘンリーくん)

『グリーン・インフェルノ』の公開を機に『HIGH SCHOOL』が日本でも見られるようになることを期待する。

では、終わります。

(text:satoshifuruya

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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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