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グッチーズの書棚2段目

重力波が検出されたということで、配架します。配架されたばかりなので前回と同じくほとんど読んでません。

まずはこれ。

Dark Energy: Hitchcock’s Absolute Camera and the Physics of Cinematic Spacetime』Philip J. Skerry, 2013

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『ダーク・エネルギー――ヒッチコックの絶対的カメラと映画的時空間の物理学』という物々しいタイトルのヒッチコック研究書(空想科学読本な内容ではありません)。見えないし検出できないし正体もわからないけど、あるとしか考えられないダークエネルギー。宇宙を膨張させるエネルギーとヒッチコックの映画が本当に関係するのか? と訝しく思った方は是非読んでみてください。もちろんこの手の本でよくあるように、単なる比喩だけに留まってしまっていて、ちゃんと一歩踏み込んだ議論になっているのか結構怪しい感じもします。ですが、この著者は『サイコ』のシャワーシーンだけで一冊研究書を書いてしまった人なので、簡単には侮れません。しかもヒッチコックは宇宙のコントロールを為し得た人です、ゴダールによれば。

精神分析と映画は誕生が共に19世紀末だということも含めて様々に議論されてきたわけですが、物理学の概念を使って映画を研究する本はなかなかあるようで見ない気がします。ただ、物理学者と映画は、結構有名どころでつながりがあるのも事実。天文学者カール・セーガンとゼメキスの『コンタクト』、重力波を見つけた一人でテレビにも映ってたキップ・ソーンとノーランの『インターステラ―』とか。もちろん、題材としてはブラックホール、タイムスリップ、放射線などなどキリがなさそうですし、キュリー夫人やホーキング博士など伝記映画の伝統もあります。

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 ウディ・アレン『アニー・ホール』病院の診察室
「ふさぎこんじゃって。きっと何か読んだんです。宿題もしなくなったんです」
「してもムダだよ。宇宙は膨張しているんだ、いつか破裂して吹き飛んでしまう」
「そんなの関係ないでしょ! あなたはブルックリンに住んでるんです、ブルックリンは膨張してません!」

この本はアインシュタインとヒッチコックという、20世紀における二人の光のスペシャリストを比較するところから始まります(この本、Einstein→Eisensteinの空見が止まりません)。その後、ダークエネルギーを邪悪なエネルギーと解しているのか『見知らぬ乗客』などが論じられています。ものの背後で隠れて働く力への想像力という点では確かに同じかもしれません。

で、本書では他にも『裏窓』、『めまい』、『サイコ』も論じられているのですが、本書の特徴は著者と物理学者の対話が採録されているところ(しかも2つ)。みなさんはヒッチコック映画と掛けて多世界解釈と解いたらたらどの作品を思い浮かべるでしょうか? 分かってしまえば「そうだよな」という感じで特段面白味はないのですが、ちょっと考えてみてください。

ところで、有史以来天を見上げてきた天文学ですが、地球を通過できるニュートリノや重力波を捉えられる今、天を見下げることもできる時代に。それに比べて映画はいまだ光をつかっているわけで天を見上げるしかないわけです。が、それも悪くない。ということで、おまけでこんな本も。

Cinema as Weather: Stylistic Screens and Atmospheric Change』Kristi McKim, 2013

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「天気としての映画」とはこちらも大きく打って出てきました。

これまで、窓だとか絵画だとか、はたまたドアとしての映画という論は見たことあります。が、これはおかしいですね、枠ないですからね、天気には。しいて言えば地平線ってことになりますが、それだとドーム型のプラネタリウムですから、矩形の映画としてはおかしいわけです。

で、よくよく紹介文など読むと、キーになるのは「人間のコントロールを越えたもの」として映画と天気に共通性を見出している点みたいです。もちろん演出上の天気(心情を表す雨とか)も議論の対象にしていますが、そのような研究をする動機はもっと壮大なところにあるということでしょう。カメラは絵画などと違って人間の意図しないものも撮ってしまうという点は、これまでにも言われていたことですが、確かに人間がコントロールしたいのにどうしても出来ない代表格といえば、そりゃ天気ですよね。なんで誰も気がつかなかったんだ。

だけど、ゴダールによればヒッチコックは天気どころか宇宙のコントロールをしたらしいので、この二冊あわせて読んでみるのも面白いはず。

ということで今回はここまで。

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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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