マイケルは子供の時から大学教授の父チャーリーと不仲であり、作家になった今でも父との距離は埋められていない。そして父が怒鳴りつけるときにはいつもかばってくれてた母リサ。久しぶりに家族で集まることになったマイケルは実家へと向かうが、その日、リサとチャーリーは交通事故を起こしてしまいリサが亡くなってしまう。叔母のジェーンの子供クリストファーが道路に飛び出し、それを避けようとした際の事故だった。リサの死によって、子供の頃一緒に過ごし、今や二児の母となっているジェーンとの再会、リサを殺してしまったと悩むクリストファー、そして昔から今も続く父との確執といった家族をめぐる問題が、過去と現在を行きつ戻りつしながらマイケルのもとにやってくる。子供でなくなった自分と、年老いた父。葬式も終わり、身辺整理をしているマイケルは母のクローゼットからある封筒を見つける。そこには、母のある「秘密」が隠されていた……。
マイケル(ライアン・レイノルズ)は子供のときから大学教授の父親チャーリー(ウィリアム・デフォー)強く当たられて、嫌っていた。
そんなマイケルをいつもかばおうとしてくれる母親のリサ(ジュリア・ロバーツ)。
ある日、母親の妹を空港まで迎えにいく途中、反抗期のマイケルは父親に反抗的な態度を取ったことが積み重なり車から降ろされ、置き去りにされてしまう。
時は過ぎ、大人になったマイケルは久々に家族と会うために地元に戻る機内の中で、その置き去りにされてしまったときのことを夢に見てうなされて目を覚ます。
キャビンアテンダントから声をかけられるマイケル。
大人になったマイケルもまた父と同じように物書きになっており、キャビンアテンダントは本のサインをねだりに来たのだ。
「テイラーさん」、と声をかけられたマイケルは「それは父親の名前だ、ただマイケルと呼んでくれ」と言う。
空港には妹のラインが迎えに来ている。
おばのジェーン(エミリー・ワトソン)の家に向かう途中、ダイナー「オメガ」を見て「懐かしい味だ」とつぶやくが、妹は寄り道している時間はないとそのまま通り過ぎてしまう。
ジェーンの家では、マイケルのいとこにあたるクリストファーとレスリーが野球をして遊んでいる。
レスリーが打った球を拾いに道路に飛び出すクリストファー。ちょうどそこにチャーリーの車が走ってくる。
急ブレーキを踏むチャーリー。クリストファーとの衝突はさけられたが、車は電柱にぶつかり、助手席に座っていたリサは 亡くなってしまう。一命を取りとめたテイラーも負傷し病院に入院する。
過去に戻り、父たちが母の妹ジェーンを連れて帰ってくる。玄関には一人で帰宅したマイケルが玄関で泣いている。
置き去りにされたあと一人で家に戻ったがカギがなくて入れなかったのだ。
マイケルにかけよるリサ。そこで、今年の夏は一緒におばのジェーンが住むことを告げる。その夜、マイケルのことを心配したリサは、わたしも父さんもあなたのことを愛しているとマイケルに話しかける。
ただ父はプレッシャーを感じているだけだ、と。
「父の書いている本は良い本なの?」と聞くマイケルに、「出来上がったからには良いはずよ」、と応えるリサ。そして冗談まじりに愛してると言い合う、二人。
現在。実家に帰ってくるマイケル。そこに今はジェーンの家族が住んでいて、
マイケルの部屋は今はクリストファーがなっている。
ジミーは、まだマイケルの新作を読んでないけど後で読むよと言う。そこにはまだ出版されていないマイケルの新作”Fireflies in the Garden”という本が見える。
ジェーンの夫であるジミーは部屋をマイケルに案内しようとすると、レスリーが「チャーリーおじさんがここは今は私たちの家だと言っていたわ」と言う。
ジミーはレスリーに「ここはマイケルの家でもあるんだよ」と伝える。
昔の自分の部屋にやってくるマイケル。
部屋に入るとクリストファーの姿はなく、窓から屋根に出てみるとそこで泣いているクリストファーを発見する。
外出を禁止されたときにはよくここにきたものだ、声をかけるマイケル。
ぼくはいつもトラブルを起こすと母に責められていると落ち込んでいるクリストファーに対して君のお母さんとは仲良しだったこと、釣りとか色々なことを教え てくれたことを話して聞かせる。「釣りは退屈だ」、と返すクリストファーに「僕たちのやり方は違う。見せてあげようか?」と言うマイケル。
釣りの準備をするマイケルとクリストファー。それを様子を家の中から見つめるレスリー。
車で湖までやってきて、釣りをし始める二人。そこへ自転車でレスリーがやってくる。
妹をのけ者にしようとするクリストファー。ケンカをし始めると止めに入り、絶対におばのジェーンには内緒にすることを約束させ、釣った魚の口に爆竹を突っ込んで湖になげて楽しむ三人。
家に帰ったレスリーとクリストファーを見て、ジェーンはなぜ腕を怪我しているの?と尋ねる。そこでつい口をすべらせてしまうレスリー。
怒ったジェーンはマイケルを責めるが、とぼけて自分の責任を認めないマイケル。
しかしジェーンは「釣りをしに行ったことよりも子供たちが自分に嘘をついたこと」が一番の問題だと話す。
マイケルは謝り、もう釣りには連れて行かないと、約束の指切りをするマイケルとジェーン。
指切りは二人が子供のときによくやった思い出の行為であった。
再び過去へ。
夕食、手を付けないに若きジェーンにチャーリーがなぜだと聞き、ジェーンがベジタリアンであることがわかる。この家にいる限り、この家のルールに従うこと を強要するチャーリーに対して反抗的なジェーン。これら一連のやり取りの中で、チャーリーに話しかけられても、なにかと突っかかって父親を怒らせる、若き マイケル。
父のチャーリーは、そんなマイケルにチャーリーはジェーンに従うべきルールのリストを作るように命じる。
リストを書き、父に見せるマイケル。父は「この出来の半分くらいの努力で成績も良くなるだろうに」、と言うが、「こんなことを「たしかにリストを作るのに時間を割かなければ成績も良くなっただろうね」、と返答するマイケル。ルール表をジェーンに渡してくるように告げる父。
ジェーンの部屋にマイケルはルール表を持ってやってくる。下着姿のまま出てくるジェーンに驚きながら、ルール表を渡す。マイケルはジェーンに「私がこんなものを全部覚えると思ってるの?」と聞き返され、しどろもどろに「思っている」と答える。
現在。夜、クリストファーがうなされているのを見守るジェーン。
その母子の姿を見てしまったマイケルは雨が降るなか、一人教会へ行き、そこで涙する。
リサの葬式が行われている。完璧主義者のチャーリーは鼻をすする音をたててレスリーを睨んだり、スーツの上着を身につけていないマイケルを気にしている。そしてそこにクリストファーの姿はない。
マイケルの上着を羽織ったクリストファーはリサの死に責任を感じ一人、車のなかでうずくまっている。
リサの葬儀を終わり、会食をしていると、マイケルは父と同僚である大学教授のアディソンと会う。
マイケルは意地悪くもアディソンが書いた本のレビューをそらんじてみせる。アディソンはそれを決まりが悪そうに聞いている。
また、アディソンは母は自分の生徒で彼女はとても優秀だったと話す。
そのときケリー(キャリー=アン・モス)という女性がやってくる。ケリーに気づいたマイケルはその場を逃げるように離れる。
マイケルが屋根の上に潜んでいるとそこへケリーがやってくる。
実はケリーは酒が原因でマイケルと別れることになった元妻であった。
ケリーは酒は二ヶ月半経っているという。
「幸せかい?」と質問するマイケルに「幸せよ」と答えるケリー。
一階でチャーリーがみなに挨拶しているなか、上の階で激しく愛し合う二人。
下の階にはその音が響いて、ラインとジェーンは音の原因に気づき笑ってしまう。
その夜、夕食の席でマイケルはチャーリーに釣りに行ったことや葬儀のことなどをとがめられたことでケンカをしてしまう。
そのとき怒ったチャーリーがワインをこぼして、リサが作った大切なテーブルクロスを汚してしまう。
また過去に戻り、ジェーンとマイケルが野球選手のカードで遊んでいる。ジェーンのお気に入りの「ライン」という名前の選手のカードを上げる。
現在、食器を洗うジェーンとマイケル。ジェーンがリサの思い出を語るとマイケルが「僕の本は読んだか?」と聞く。ジェーンは読む必要がないと答える。 「チャーリーが読んだらあなたを殺すわよ」と。新作は自分を証明するためだと主張するマイケル。僕は今度だけは真実を書いたと言う。呆れるジェーンに謝る マイケル。しかしジェーンは「なにが悪いかわかっていないくせに何に対して謝ることが出来るの?」と詰問する。
過去。詩を朗読しているマイケルとそれを聞く、父とその同僚。そして記録として映像に残しているリサ。リサの体型から妊娠していることがわかる。
詩を読み終えると、その場になぜか気まずい空気が流れる。
チャーリーはマイケルをガレージに連れ出して、激しく叱責する。
マイケルはロバート・フロストの”Fireflies in the Garden”という詩を自分の詩として朗読していたのだ。
チャーリーとマイケルがいないことに気づいたリサは、二人を探しにガレージにやってくる。マイケルを助けようと、ガレージを開けるように必死に要求する。
チャーリーがガレージから出てくると、リサはすかさず中に入り、虐待を受けたマイケルを助け出す。
マイケルの部屋に食事を持ってくるリサ。お腹は減っていないと答えるマイケル。リサはお腹のなかのあなたの弟が蹴ったと言う。「どんな感じなの?」と聞くマイケルに、彼の手を引っ張ってお腹を触らせるリサ。
「なぜ弟だとわかるの?」と聞くマイケルに対して「そう感じる」のだと答えるリサ。
一緒に名前を決めましょうと提案し、マイケルはラインがいいと答える。
その晩、今度はマイケルの部屋にはジェーンがくる。食事を取っていないマイケル。
なぜ食事をしないのか、ガレージでなにがあったのか、チャーリーになにをされたのかと聞くジェーンに対して、「出ていってくれ」としか答えないマイケル。「あなたが食べるまで出て行かない」と返すジェーン。
マイケルが「腕が動かず食べられないんだよ!」と声を荒げると、ジェーンはぶっきらぼうだが優しさを込めてマイケルに食事を食べさせてあげる。
現在。警察の事情聴取を受けるチャーリー。
事故当日はジェーンの家に行き、彼女らをピックアップし一緒にリサの卒業式に出るつもりであったと話す。
そのときマイケルたちは遺品整理をしている。
その際にリサの死は自分の過ちであったと認めるチャーリーを見てしまうマイケル。
マイケルは母のクローゼットを見にくる。そこにはとても多くの服がしまわれていた。
そして、そこで話料金が上がっていく明細を見つけ、さらに「confidential」と書かれた封筒を見つける。
そこにやってくるチャーリー。リサはなんでも残しておく人だったという。
なにか興味深いものはあったかと聞く父に対して、別にない、と答えるマイケル。
いつから自分たちはこんな風になってしまったのかと涙を流しながら訴えるマイケルに、わからないといって去るチャーリー。
過去。チャーリーの浮気に怒り、家を飛び出そうとするリサ。
リサを無理矢理引き止めようとするチャーリーに、マイケルが襲いかかってしまう。
父に向かって手を挙げたマイケルはそのまま走り去ってしまう。
一瞬現在に。
明細にリサが何度も同じ番号にかけてるので、マイケルも電話をしてみる。
そして電話の主に気付き、怒って物にあたる。
過去。ショックで寝込んでいるマイケルのもとに「あなたのもとから誰もいなくならないわ」とジェーンが話しかける。
そして「いつでもあなたを守るわ」と告げ、小指を出す。「何?」と聞くマイケルに、約束の指切りよと答えるジェーン。そこに父がやってくる。ジェーンはバレないようにその場を離れ、マイケルは眠った振りをする。
チャーリーはマイケルに私は罰を受ける必要があったことに気づいたと謝り、ありがとうと言う。
そして父と抱き合うマイケル。父は自分は変わるようにすると伝える。
再び現在へ。大学にいるマイケル。そこでアディソンに会う。
マイケルは話をしようとアディソンに声を掛け、「なにを聞きたいんだ?」と返すと「パイは好きか?」と訪ね返す。
そして二人はダイナー「オメガ」へ。
マ イケルはアディソンに母と不倫をしていたこと、そしてそれがどれくらい続いていたのかを問いつめる。泣きながら三年ほどだと答えるアディソン。そんな彼に クローゼットで見つけた「confidential」とかかれている書類を渡す。そのなかには母のサインが書かれた離婚届がある。母は卒業後、あなたのも とへと行くつもりだったというマイケル。すまないと答えるアディソンに対し、母はあなたといて幸せだった、ありがとう、と告げるマイケル。
精神科医と話をしているクリストファー、まわりに父ジミーと母ジェーン。クリストファーはリサの葬式のことを語るのをいやがりほっといてくれ、と一人家を走って出て行ってしまう。
走り去るクリストファーとたまたますれ違ったマイケル。
マイケルはクリストファーを捕まえたその場所は昔、父が「一人で帰れ!」と車から追い出され、置いてきぼりにされた小麦畑のようだ。
リサの死を自分のせいだと決めつけるクリストファーに、君のせいじゃないと諭し、一緒に車で帰ろうとするマイケルに、歩いて帰ると答えるクリストファー。
気がかわったら電話するように、と携帯を渡し、去るマイケル。クリストファーはその携帯を投げ飛ばし、走り去ってしまう。
いつまでも帰ってこないクリストファーにジェーンたちは心配になり探しに出かける。自分は悪くないと主張するマイケルと自分の息子を心配するジェーンははげしくぶつかり合う。
ジェー ンたちがクリストファーを探しに出かけているあいだ家で待つ、マイケル。そして野球中継を見ているレスリーとチャーリー。チャーリーはレスリーに、ジェー ン、そしてマイケルは野球がうまかったことを話すが、そのことに対してつっかかるマイケル。いつまでも和解出来ないマイケルとチャーリー。
その場を離れたチャーリーは一人洗面所で泣く。
レスリーはマイケルにもしクリストファーが死んでしまったらどうする?と訊ねる。マイケルは「誰も死なないよ」答える。「時間が経てばみんな死ぬよ」と答えるレスリー。
マイケルは自分がどうやって母を忘れず毎日思いだすか、その方法をレスリーに教える。
マイケルは一人自転車でクリストファーを探しに出かける。家ではマイケルとレスリーは屋根裏部屋になにかを探しにいく。
クリストファーを見つけたマイケルは電話でジェーンたちに知らせる。無事、みなと再会出来たクリストファー。
一方、屋根裏部屋で見つけたものは、マイケルの誕生日会や家族で野球を楽しんだときのことを記録した8ミリフィルムだった。
みんながリビングで映写された8ミリフィルムを見ている。
そこにはリサの姿、若き日のジェーンや自分たち家族が映っていた。
夜中、皆が寝静まった頃、マイケルは母の極秘封筒と自分の新作を焼く。
- 監督:デニス・リー
- 脚本:ロバート・フロスト(詩)、デニス・リー
- 撮影:ダニエル・モデル
- 編集:デデ・アレン
- 音楽:ハビエル・ナバレテ
- 配給:senator・エンターテイメント
- 製作年:2008年
- 上映時間:89分
- 出演:ライアン・レイノルズ、ウィリアム・デフォー、エミリー・ワトソン、キャリー=アン・モス、ジュリア・ロバーツ
COMMENT
父親と息子の関係を軸にした人間ドラマ
デニス・リー監督の初長編の本作は、2008年にベルリン国際映画祭でプレミア上映された。
プレミア上映の後にアメリカ 以外の多くの国で公開されたこの作品だが、全米での配給の予算が立たず、全米公開までに3年の月日が流れた(もちろん日本では未公開)。
デニス・リーの才能に惚れ込んだジュリア・ロバーツは、彼女の初プロデュースした映画『Jesus Henry Christ』(『ヘンリー・アンド・ザ・ファミリー』として日本ではDVDスルー)に監督として抜擢。
『Fireflies In The Garden』は父親と息子の関係を軸にした人間ドラマだが、『ヘンリー・アンド・ザ・ファミリー』ではコメディ映画である。
しかし、『ヘンリー・アンド・ザ・ファミリー』も主人公は試験管ベイビーであり、自分の「父親」を知らない少年として設定され、家族とは?血縁関係とは、といった家族の映画として撮られている。