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『キル・チーム』レビュー! 戦場における正義

戦争映画といえば、敵と戦い、その道中で幾多の困難に巻き込まれ、仲間を失い、それでもなんとか生き延びる、といったストーリーが定番だが、本作『キル・チーム』は全く違う角度から、戦場を描いた物語である。

 

本作はアフガニスタンで米兵が一般市民を殺害していた実話を基に作られた映画だ。デュークス軍曹を筆頭に、小隊ぐるみで民間人に罪を着せ、次々と罪なき市民を殺害していく。主人公、アンドリュー二等兵は、組織の中で起こった殺人に気づき、告発しようとするが……といったストーリーになっている。「キル・チーム」文字通り殺す集団にまつわる話だ。

 

正義の名の下に、罪なき人が次々と殺されていたのだ。そして少なくとも劇中では、米兵たちは殺しを楽しんでいるように見えた。人の命の重さなど、意に介していないようだった。

 

しかし、戦場では隙を見せたものから倒れていくのもまた事実だ。一般社会で必要とされる道徳観や倫理観を持ち込んだ者から命を失っていく。冒頭でのウォレス軍曹の顛末を見れば、それは明らかだろう。自分の身を守るために、攻撃される前に相手を薙ぎ倒す。疑いのある者は、確信がなくとも排除する。それを悪いことだと思わなくさせる、「戦場」に改めて恐ろしさを感じた。

 

 

人を殺すことを楽しむような、一般社会では、社会不適合者と言われてしまうような人材も、「戦場」では英雄になるのだ。かといって、一般社会で語られる常識や価値観で、戦場を語り切れるかといったら、それはまた別の話だろう。じゃあその線引きやルールは誰が決めるのか、どうやって決めるのか。考えれば考えるほど、暗い闇の底に落ちていくような気持ちになる。

 

この世に戦場なんてものがあること自体が、やっぱり間違っていると強く思う。

 

アンドリューは、組織ぐるみでの殺人に気付いて告発しようとするが、上司に様子がおかしいことを勘づかれ、告発すれば、指を切り落とすと脅しを受ける。仲間達にも、いつ殺されるかわからない状況に陥り、愛国心から敵を倒すために軍隊に入ったのに、いつの間にか敵は外部ではなく、愛すべき自国の仲間達になっていく。なんとも皮肉な話である。

 

自身の正義を貫いて仲間に殺されるか(肉体的にも精神的にも)、組織で生き残るために罪なき他人を殺すか。

アンドリューは最後、どちらを選択するのか。

ぜひ、劇場で確かめていただきたい。

 

*****

『キル・チーム』

2021年1月22日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか にて公開

©2019 Nostromo Pictures SL/ The Kill Team AIE / Nublar Productions LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督・脚本:ダン・クラウス『最後の祈り』 

出演:ナット・ウルフ『Death Note/デスノート』

アレクサンダー・スカルスガルド『ターザン:REBORN』

アダム・ロング『ダンケルク』、ロブ・モロー『はじまりのうた』

2019/アメリカ/5.1ch/シネマスコープ/88分/字幕翻訳:髙橋彩/原題:THE KILL TEAM/PG12

配給:クロックワークス

■公式サイト

http://klockworx-v.com/killteam/

 

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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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