時代は第二次世界大戦、兵士のジョー(ロバート・ウォーカー)は2日間の休暇を得てニューヨークにやって来た。
そこでアリス(ジュディ・ガーランド)に出会う。たった二日間しかないことを知りつつも、二人は惹かれあっていく。
ニューヨークのロケ撮影も魅力的な恋愛ドラマの傑作。
二日間の休暇で初めてニューヨークにやってきた兵士のジョー・アレン(ロバート・ウォーカー)は、観光を楽しみにしているが、まずペンシルヴェニア駅からどのように外に出るのかも分からない。周囲の見知らぬ人に話しかけるも、タバコの火が欲しいのだと勘違いされ、ライターを貰う。やっと駅を出てもすぐに摩天楼に圧倒されて駅舎に戻って来てしまう。駅舎の地面に座り込んで新聞を読んでいると、エスカレーターに乗ろうとしたアリス・メイベリー(ジュディ・ガーランド)の足を引っ掛けてしまい、彼女のヒールが取れてしまう。エスカレーター上から「ヒールを取って」と離れゆくジョーに声を掛けるアリス。ジョーは取れてしまったヒールを取りに階段やエスカレーターを往復する。そして、靴を閉店中の靴屋に無理に頼みこんで直してもらう。
二人で駅舎の外に出る。「どこに行くの」と聞くジョーは、五番街に向かうと言うアリスに「初めてで分からないから、一緒に行って観光してもいい?」と聞く。二人は二階建てバスに乗る。ジョーはビルの高さに改めて驚き、バス料金の払い方も分からない。慣れた様子のアリスに「君はずっとここに住んでいるの?」と聞く。アリスは「三年前に出てきたの」と答える。ジョーは何度も「家族と暮らしているの?」と聞くが、彼女はラジオ・ミュージック・ホールや聖パトリック大聖堂などの観光名所を案内しつづけ、答えをはぐらかす。ついにジョーが「結婚しているの?」と聞くと彼女は「女の子とルームシェアしているの」と答える。そして、秘書の仕事をしている彼女の仕事場を聞き出そうとするジョー。しかし、彼女はくしゃみを二連発し「まぶしいとくしゃみが出ちゃうの、いつも二回よ」と言って彼のハンカチを借りる。彼女が子どもや緑に溢れるセントラル・パークに行くことを勧めると、彼は摩天楼の中にそんな公園があることに驚きつつ、一緒に行こうと誘う。アリスは「急いで家に帰らなきゃ」と言うものの、またくしゃみが出て彼のハンカチを使うことに。
セントラル・パークにやってきた二人。プールのアシカショーを見ながら、ジョーは「動物見ていると思いだす知り合いっているよね」と言ってアシカがミネソタのおばにそっくりだと言う。また、自分も学校でフクロウそっくりだと言われていたことも。彼の顔を見て「そっくりだわ」と笑うアリス。「君は何に似ているかな」とジョーは言うが「やめてよ」と言って恥ずかしがるアリス。ジョーは大きなボートの模型をもった子どもに声を掛けるが、「ボートに触るな」と言われて蹴られる。ジョーは「地元では子どもに大人気だったのに」と言い、二人はプールを離れる。
二人は公園出口までやってくる。「そろそろ本当に家に帰らなきゃ。楽しかったわ」と言うアリスにジョーは荷物を渡しながら、「これ以上引きとめちゃ本当に悪いと思っている」と言いつつ、「話し相手がいると全然ちがうね」と別れが惜しそうな様子。これからどうするかも決めてない彼に、アリスは「見るべきものがたくさんあるわ」と近くの博物館を勧める。ジョーはあまり行く気はない様子。アリスは「私も一、二回しか行ってない。もっと行くべきなのに」と言う。アリスは彼に再び荷物を預け、一緒に博物館に向かう。
『考える人』を見ながら、ジョーは子どものときの思い出話をする。そして歩きながら、昔けんかした話をしていると、自分が殴られるのではと驚いた男の子が泣き出してしまう。二人はスフィンクスの展示の前に移動する。ジョーは戦争が終わったら慣れない都会に住むのではなく、故郷に帰って自分の手で家を建ててみたい、大工のような仕事に就きたいと話す。彼の心の中には、建設予定地として村を見渡せる丘が広がっている。彼の思いに共感するアリス。そのとき、5時の閉館のベルが鳴る。
外でバスを待つアリス。ジョーは夜のデートに誘おうとするが、彼女は忙しいと断る。彼は記念にとライターをアリスに手渡し、「いつの日かまた会えるよね」と聞く。彼女は「ええ、おそらく」と答えて、バスに乗る。バスが動き出すと、ジョーがバスを追いかけてくる。他の人と出掛ける約束を取りやめることにしたアリスは「7時にアストルの時計の下で」とジョーとの約束を結ぶ。
アリスの部屋ではルームメイトのヘレンがその男友達のビルにアリスが帰ってこない理由を推測して話し続けている。アリスはまだ田舎者だから、ふらっと映画館に寄るようなこともないし、おそらく図書館に行っているのかもしれないけど3時間はかかり過ぎだなどなど。そこにアリスが帰ってくる。ヘレンはフレディから3回も電話があったことを言い、なにをしていたのかと尋ねる。アリスは「兵士と一緒にいたの」と答える。「まさか兵士にナンパされた訳じゃないよね?」と聞くヘレンに、アリスは“ナンパ”の顛末を語る。そしてあのライターでタバコの火をつける。ヘレンは「それっきりでもう会わないんでしょ、だったらいいわ」と言うが、アリスは今晩の約束をしたことを話す。ヘレンはアリスに待ち受けるトラブルを危惧し軽薄さを注意する。それに対し、彼女はジョーのことを一人ぼっちのいい人で、ナンパのような遊びをする人じゃないわと言うが、この時、ジョーは苗字すら分かっていない男性であることに気づく。夜はフレディとデートするように勧めるヘレンだが、アリスは「ジョーは待っているだろうから…」と上の空の様子。ヘレンは「兵士は休暇が終わればすぐどこかの基地に行ってしまうのよ」と忠告する。ヘレンとビルが出かけて行き、アリスは出掛けるための服を出すが、そのとき鳴った電話に出てフレディとの約束を守ることにする。
ジョーは時計の下で待っている。7時数分前となるが、まだアリスは来ない。周りのカップルの様子を見て、花飾りをプレゼントすることを思いつき、花屋に入る。しかし、アリスは30分近く経っても来ない。ジョーは諦めて帰ろうとしたその時、アリスが回転扉から飛び込んでくる。アリスは遅れたことを詫びる。ジョーは花飾りをプレゼントする。
レストランで食事を取る二人。アリスはここに引っ越して以来、職場が同じでもあるヘレンとずっと一緒にいると話す。部署が違うヘレンはビルが言うにはすでに重役級の出世をしているらしい。また彼女の友達ビルも含めて、フレディとアリスたち4人は一緒によく遊んでいるようだ。ボーイがワインを持ってくる。そして「マダム(奥様)」とアリスのことを呼ぶ。「オーダーしてないわ」と言うアリスだが、実は隣の紳士から、「兵士とかわいい同伴者に」と贈られたものだった。ジョーは結婚に関する話を始める。アリスにフレディとの結婚への思いを聞くが、アリスは「なぜ会ったばかりの人にそんなこと言わなきゃならないの」と言って怒りだす。そして帰ろうとするアリス。「分別があったらヘレンの忠告に従ってたわ。女の子が兵士とデートするとき、彼女は自分のことじゃなく、故郷から離れて一人で寂しい思いをしている相手のことを思っているものなのよ」と言いながら、ジョーの袖に付いた汚れを落とす。ジョーは「君はブラウンの瞳をしているんだね」と言う。
二人は夜のセントラル・パークにやってくる。二人のほかに人影はない。アリスはこの公園を取り囲む街にいる人々や世界中の人々、そしてそのまた外側の星たちに思いをめぐらす。二人は出会えたことの不思議さについて話す。ジョーはこの世界すべてが自分たちの運命に関係があるのだと言う。静けさのなかジョーは田舎みたいだと言うが、アリスは「耳をすませば、都会の声が聞こえるわ」と言う。耳をすまし、まるで小鳥のさえずりを聞くかのように都会の喧騒に耳を傾ける二人。そのうち二人の間は狭まっていき、アリスはジョーの胸に飛び込む。キスをする二人。
公園の外に出てバスを待つアリス。ジョーは明日、ニューヨーク最後の夜に会えないかと聞くが、アリスは「会いたいわ。でも今は考えられないの」と返す。そこに牛乳配達の車がやってくる。配達人のアル・ヘンリーは気前よく二人を乗せてあげる。この時間は彼にとってはランチ直後の時間らしい。深夜ラジオのリクエスト番組を聞きながら、「三か月もリクエストしているのに、流れるのはネリー・グリーンさんのリクエスト曲だけ」と文句を言っている。「俺は“That’ s How I Need You”をリクエストしているんだ」とアルは歌いだす。妻との思いでの曲らしい。アリスの家がイーストサイドだと知るとアルは面白いからついでに牛乳の積み込み作業も見ていけと言う。作業が終わり出発するとまもなくタイヤがパンクする。電話を借りるために寄ったバーで、アルは自分のリクエストした曲が流れ始めるのを聞くが、アメリカの歴史や犬の話など支離滅裂にがなり立てる酔っ払いに目を殴られる。
アルは目の周りをけがしているため、ジョーとアリスが代わりに配達を行う。配達が終わり、アルの家に行くことに。5時前の朝ぼらけ、運転するジョーの横で、故郷の日の出を思い出しながら、眠たそうなアリス。彼女はジョーがどこの戦地に送られるのか気にしている。彼は「イングランドかな」と答える。ジョーは「僕のこと好きかい?」と聞く。アリスはうなずくも眠たそう。
アルの家に着き、彼の奥さんに会う。朝ごはんを勧められ、一緒に食べることに。奥さんは「結婚しているの?」と二人に聞く。二人がいいえと答えると「最近の若い人たちはどんどん結婚しているわね」と言う。アルが「みんな結婚した後のことを考えてないんだ」と言うと、アリスも「結婚する相手とは長い間付き合っておかないと。重大なことを一瞬で決めたくなんかないわ」と言う。するとアルは「でも、一瞬で分かることもある」と言って、実は自分も奥さんとは一目ぼれだったこと、良い印象を与えるために裁判所で働くいとこを同伴して行ったことが明らかになる。ジョーは「兵士が女性と結婚するのは、女性にとってフェアじゃない。いつ帰ってこられるかわからないんだから」と言うが、アルは「全部心配していたら、なにもできない」と言って、妻も「愛し合っているなら結婚すべきだわ」と主張する。
ヘンリー夫妻の家を後にし、駅に向かう二人。ジョーは「出会ってからの時間なんか関係がないのかも」と言い、アリスも「二人が愛し合っているなら、いつ帰ってこられるかなんて関係ないはずよ」と言う。アリスは今日は一緒にいたいと言う。
地下鉄に乗り、アリスの休みを取るため彼女の職場に向かう。途中で二人ははぐれてしまう。各駅停車と急行などの勘違いから、結局会えずに終わり、街にはニューヨークの総人口が700万人以上であることを伝える音声が流れている。アリスは軍の施設に行くが、担当の女性から苗字も分からない男性を探していることで不審がられただけだった。
ジョーは機能の待ち合わせ場所である時計の下で待つように警官にアドバイスされるが、結局そこにアリスは現れなかった。ジョーは基地に帰ろうと駅にくる。そこで、あのエスカレーターでの出会いを思い返していると、アリスもそこにやってきた。二人は抱擁し、ジョーはアリスの苗字を聞き、そしてプロポーズする。アリスはそれを受ける。
二人は結婚の書類を市役所で書いている。しかし、血液検査の書類が必要だと言われ、別の施設に行くように言われる。結婚届の提出期限は4時まで。急いで行くと、そこでも担当者に許可証が必要と言われ、その許可証を取りに行こうとしても、それもできないと言われ、アリスは「彼はヒトラーなの?」と悪態をつく。ようやく許可証を手にして血液検査に行くが、順番待ちで明日の朝だと言う。諦めて「ヒトラー」のもとに帰ると、彼が私立の検査施設を教えてくれる。検査を終え、急いで結婚届を出しに向かう。しかし、結婚は3日後にしか有効とならない決まりがあることを知る。唯一その決まりを破棄できるのは裁判官だけ。しかし、裁判官は帰宅したと秘書に告げられる。しかし、ジョーはその秘書がヘンリーが話していた、いとこであることに気づく。アルの友人と知って秘書は裁判官から署名を貰いに行く。ついに教会で結婚の宣誓をし、なんとか今日中に結婚することができた。しかし、牧師は列車に乗るために急いでいて、花も指輪もないあまりに粗末な式となってしまう。
安い食堂で夕飯を食べる二人だが、おいしくない。二人はともに周囲の人に結婚の事実を告げることへの心配をしている。ジョーは家族の写真を見せる。「お母さんは私を気にいってくれるかな」と心配するアリス。ジョーはもちろんと言う。ジョーは明日の正午に基地に戻ればよいらしい。アリスの浮かない顔を見てジョーは結婚を後悔しているのでは?と聞くが、実はアリスは式の酷さを悔やんでいたのだ。そして結婚式直後の教会に入る。二人は自分たちだけで宣誓を再び行い、永遠の愛を誓う。
翌朝、時計を気にしつつも二人は朝食を食べコーヒーを飲んでいる。「これからのことは考えないようにしよう」と言うジョーに対し、アリスは「一昨日まで知らなかった者同士が今では夫婦になれたのよ。誰が私たちの運命を決めていようとも、幸福なことしか起きないわ」と返す。二人が出会ったペンシルヴェニア駅でジョーを見送るアリスであった。
- 監督:ヴィンセント・ミネリ
- 脚本:ロバート・ネイサン、ジョゼフ・シュランク
- 原作:ポール・ギャリコ、ポーリン・ギャリコ
- 撮影:ジョージ・フォルシー
- 編集:ジョージ・ホワイト
- 美術:ウィリアム・フェラーリ、セドリック・ギボンズ
- 舞台装置:エドウィン・B・ウィリス
- 音楽:ジョージ・バスマン
- 製作:アーサー・フリード
- 製作会社:MGM
- 製作年:1945年
- 上映時間:90分
- 出演:ジュディ・ガーランド、ロバート・ウォーカー、ジェームズ・グリーソン、ルシル・グリーソン
COMMENT
ニューヨーク、ニューヨーク
都市がもつ不思議な力に導かれるかのように出会い、恋に落ち、結婚する男女を描いた本作は、エスカレータ、二階建てバス、セントラルパーク、喧騒、牛乳配達、地下鉄などニューヨークがもつポテンシャルを存分に活かして作られている。すでにある日常的なものを物語の重要な要素として撮っているためか、豪華絢爛がウリのMGM製作でありながら、どこかハンドメイドな感触がある。しかし、そこにあるのはリアリズムだけではない。ありふれたものがそのポテンシャルを発揮するからこそ、世界はファンタジックなものへと変わる。夜のセントラルパークが『オズの魔法使』に劣らずファンタジックな世界をニューヨークのど真ん中に作り上げているように。
ちなみに、牛乳配達人のアルを演じたジェームズ・グリーソンとその妻役のルシル・グリーソンは本当の夫婦でもある。