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やりがい搾取とケリー・ライカートの共同配給について

2021年9月20日より元立誠シネマスタッフの方による、「シマフィルム経営の立誠シネマの労務問題に関する告発、および、出町座の労務環境への疑問」を発信するツイートがなされました。

グッチーズは、シマフィルムさんとケリー・ライカート監督の諸作品を共同配給している立場でもあったため、特に注意深く経緯を見守っておりました。

元スタッフの方からの告発を受け、その後、2021年10月5日にシマフィルムの志摩代表および現場責任者の田中氏名義による文書が発表されました。
その発表をもって、告発者の方も「完全にネガティブな感情が消えたわけではないものの、立誠シネマならびにシマフィルムの問題についてはひとつの区切りをつけたいと思っています」と記されており、ひとまずの収束を見たと認識しております。従って、これ以上当事者間の問題にグッチーズから発信するべきことはないと思っております。

しかし、シマフィルムさんからの文書を拝読する限り、今回の告発者以外にもやりがいの搾取やハラスメントの被害にあった方がいる可能性も否定できませんし、現在出町座では労働環境の改善に取り組んでいる最中とのことなので、今後も訴えの声があがるかもしれません。そうした際には、誠実に向き合って欲しいと願いますし、声を上げやすい体制作りも含めた被害者への対応を最優先に努めていただきたいと思っております。

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他方で、ひとまずの収束を見たのはあくまで当事者間での事柄であり、業界全体の問題として、やりがい搾取を含む労働問題やハラスメントについては、引き続き考え行動していく責任があると思っています。

特に田中氏名義の文書において、【自身も過酷な労働状況におり「尺度が狂っている状態」であったこと】、【それによって「自分もよいのだから他者もそれでよいという感覚」になってしまっていたこと】、【今でもまだ「立誠シネマと同様の体質が続いて」いること】という形で、やりがい搾取が行われた要因を自己分析されている点は見過ごせません。
ここで言及されている「感覚」や「体質」は、いわゆるミニシアター業界についても多かれ少なかれ当てはまるものでしょう。そしてもちろんケリー・ライカートの共同配給という事業にも決して無関係とは言えず、グッチーズとしても深く考えていかなければいけない問題だと痛感しております。

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グッチーズは去年から映画祭やイベント興行という形でケリー・ライカートの作品を上映して参りましたが、それとは比べものにならないほどの今回の全国展開という特集の広まりは、シマフィルムさんと田中氏、そしてそのもとで働かれている出町座の従業員の方々の功績であることは間違いありません。と同時に、その大変喜ばしく誇らしい功績は今もまだ続く、彼らの異常な働きに支えられたものであったのだと、今回の発表によって改めて思い知らされた次第です。

配給に手を出したのだから頑張る、映画ファンのために頑張る、映画文化を豊かにするために頑張る、経済的に潤うために頑張る等々、いくらでも頑張る理由は見出せますが、それによって「尺度が狂っている状態」のままでいることを放置し、「体質」が改善されず、結果的に被害者を生んでしまっては、また過ちを繰り返すことになります。

現在がいまだ「尺度が狂っている状態」なのであれば、一刻も早く通常の尺度に戻すことが第一です。無理してまで頑張ることは、やりがい搾取やハラスメントを無くすためにも、そうした業界の体質改善のためにもするべきではありません。頑張るのはそのあと、健全な働き方の範囲内で、映画ファンや文化や儲けるために、好きなだけ頑張りましょう。

映画のために頑張って働きすぎた結果、映画業界や文化を豊かにするどころか、やりがい搾取とハラスメントの体質が蔓延し、映画を愛する者同士の間で加害者と被害者が生まれ、業界は信用を落とし、誰もが疲弊していってしまってる現状は、本当に虚しいかぎりです。

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長々と書いてきましたが、ケリー・ライカートの配給は、では具体的にどうするのかという答えは出ていませんし、グッチーズのみで決めることも、その能力もありません。今後、信頼できる賢い仲間たちと知恵を出し合って考えていかなければいけませんし、考えている最中です。

ただ間違いないのは、過酷な状態でも走り続けられる人だけが生き残るレースのようなものでは、業界が豊かになるわけがないということです。無論グッチーズもそんなレースに参加、加担するはゴメンですので、レースを変えないとグッチーズも活動できなくなってしまいそうです。
グッチーズが片足を突っ込んでいる小さな映画の配給に限っていうならば、上手にバトンを繋ぐリレーのようなスタイルで配給できたらいいのになあと思います。その形の一つが自主と企業が組む共同配給という形だとも信じていたので、本当に良い方法を探したい。

抽象的な考えしか出てこなくて困っていますが、ただ、声をあげることが可能な立場にいる者は、(たとえ答えが明確になっていなくとも)自分なりの考えや見解を発信することが、ミニシアターの労働問題やハラスメントを改善するための小さな一歩であり、せめてもの貢献だと、今までいくつもの告発の声を聞いて学んできたつもりです。この文章が少しでもそれに見合ったものになっていればと思います。

グッチーズ・フリースクール


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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