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「写宅部!」(プレミア映写を宅でする部)2日目

ようやく本題について書こうと思う。映画がその時々で映し出してきたといわれる「女性がメシを食べこぼす」瞬間について。それが本題だ。一体なんことだかわからない人は「写宅部!」1日目を見てくれ。1日目と口調が変わっているが、それはつまり本題に入ったからだ。なにしろ「映画はその時々で女性がメシを食べこぼす姿を映してきた」のである。映画史的にも非常に重大なので語尾も真剣味を帯びてくるわけだ。いや本当は2日目にしてどういうスタイルが適しているのか迷っているだけだ。

「食べこぼす」ときの王道はもちろん「貪り食べる」、または「かぶりつく」ときだろう。けれど犬じゃあるまいし、中々そんな機会はあるわけじゃない。
ならば減量はどうか。これは中々の食べこぼす設定ではなかろうか。例えばボクシング映画の『シンデレラマン』で、減量(主に貧困でだが)での空腹を満たすために試合直前ラッセル・クロウは「ハッシュ」を貪り食っていた。拳にテーピングを巻いているため、手が使えない。だから犬食いスタイルで食う。相当巧妙な演出である(こちらを参照のこと)。
とすれば女ボクサーではないドリュー・バリモアでいえば、ダイエットだろうか。あり得ない話ではなさそうだ。というか、かなり「食べこぼし」反応してもいい設定のように思える。けれどダイエット失敗でケーキだかピザだか知らないけれど、食べこぼすほどに食い漁る40歳女性なんて相当イヤじゃないか。少なくとも私はイヤだなあ。『デンジャラス・ビューティー』じゃないんだから。

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↑『デンジャラス・ビューティー』でピザに集まるミスコン候補者(注:「食べこぼす」描写なし)

しかもこの映画『子連れじゃダメかしら?』に描かれるのは再婚しようとしている女性である。おしとやかに、エレガントにいかなくてはいけないし、そもそも単に汚い食べこぼしが描かれるほどがっかりなものもない。だって汚いから。
しかしこれだけは言える。ドリュー・バリモアはほぼ間違いなく超一級の「食べこぼし女優」であるということだ。残念ながらそんな女優タイプはないのだが、あるとすればもう超一級なのだ。これはほぼ間違いなく。

そこで『子連れじゃダメかしら?』の「食べこぼし」だけれど、まず注意して欲しいのはレストランである。「どこで」食べこぼすかは重要なトピックだからだ。アダム・サンドラーがセッティングしたレストランはフーターズである。よりにもよって。
日本にも進出しているのでご存知の方も多いと思うが、もしフーターズをご存じない方は、まあこちらでも見てくれればお分かりいただけると思う。グラマラスな若い女性がチアリーダーを一応コンセプトにしているらしいコスチュームで接客するレストランだ。まったくもって健全な店なのだが、本体がセクシーコスチュームみたいな店に連れて来られたドリューはもうすでにうんざり気分だろう(サンドラーがフーターズを選んだワケは物語としてはとても重要な要素で、真相はのちのちわかるのだが、この際どうでもいい)。

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↑奥に見えている白タンクトップにオレンジのホットパンツがフーターズ・ガール(ウエイトレス)

フーターズにうんざりのバリモアだが、実は『100万回のウインク』(日本ではVHSしか出てない模様)という映画で、バーガーショップ店員を演じていたのを忘れてはいけない。こちらもラブコメだが、『100万回のウインク』はなんかもう奇想天外すぎて………軍用ヘリとか出てくるし、浮気話だし、人死ぬし……。まあそれは置いておいて、そのバーガーショップの制服だが、これが実に微妙なのである。一応ワンピース型の制服っぽいのだけれど、妙なエプロンだと言われればそんな感じも受けなくもないシロモノで、まあ制服といえどもフーターズとは思い切り逆方向なのは間違いない。
この制服問題はドリュー・バリモアにとっては中々大きいらしく、彼女の監督作品である『ローラー・ガールズ・ダイアリー』では、ローラーガールのユニフォームと『100万回のウインク』の制服の配色といい装飾?といい、どこか似ている。いや、ほとんど同じといっていいだろう。だけど『ローラー〜』の方はだいぶ“イケ”てるユニフォームとしてあったのは記憶に新しい。

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↑『100万回のウインク』(左)と『ローラー・ガールズ・ダイアリー』(右)

ちなみに『ローラー〜』では主人公のエレン・ペイジがダイナーでバイトしている。いよいよ自らメガホンを取ったときに『100万回のウインク』での恨みが爆発したのか、いやローラーガールのユニフォームの“イケ”てる度を出すためギャップ演出として、彼女にかなりヤバめのエプロンをつけさせていることも抑えておきたい。

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↑ダイナーで働くアリア・ショウカット(左)とエレン・ペイジ(右)

飲食業のコスチューム、主にエプロンとセクシー(エロ)コスチュームの関係は中々面白く、当初は脱エロの象徴だったはずのエプロンが皮肉にもエロティシズムを感じさせるものになっていき、過激化の一途をたどると、逆またソフト化されたりもするという大変な歴史がある。世界的に見ると19世紀後半、第二帝政下のパリの「ブラスリー」(ビアホールのこと)まで遡ることが出来るのだが、気付いたらまた本題とはどんどんズレていってしまっているので、興味がある方はぜひ『モモレンジャー@秋葉原』(著 鹿島茂)の「エプロンからノーパンへ」の章(なんてヒドい章題はなんだ……)を参照されたい。ここではこれ以上立ち入らない。なぜなら、いま問題なのはドリュー・バリモアの「食べこぼし」だからだ。
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ということでバリモアにあって、フーターズはよりにもよってのチョイスなのである。いや前回でも言ったが『子連れじゃダメかしら?』が、もういい歳した(子連れ)二人の、そして往年のラブコメコンビの映画なのだから、バリモアの歴史(キャリア)を鑑みると中々見事な選択である。だからバリモアはかなりうんざりしている。というか、もはや呆れている。
そんな人の心情とはどんなものだろう。
「早く帰りたい」
しかし困ったことになぜだか相手側のアダム・サンドラーはバリモア以上にやる気がない。わざわざフーターズをチョイスしたのだから、若い女の子相手にテンションが上がっていればそれはそれで意味がわかるが(いやそれも色々と意味不明だが)、微塵もやる気がない。先述した通り、これは物語上ワケがあるのだけれど(フーターズをチョイスしたこと、そしてやる気がないことをクリアするワケが)。

悲しいかな、優しいかな、相手がやる気がないとちょっと気にしてしまうのがドリュー・バリモアという女性なのだ。
とりあえず会話を続けよう、でも話すことないから、まずは食べて話を広げよう。
そのとき、目の前のバッファローウィングソースを口にした。

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野暮な解説を入れると、このバッファローウィングソースとは辛くて有名なソースで、例えばこちらのサイトでは、激辛は「日本向け商品の規格変更に伴い販売を一時中止することとな」ったとのこと。なんだその商品は。そこまで辛いんですか。。。

あまりの辛さにもちろん吐き出すわけだが、これではただ吐き出しただけだ。私が言いたいのはそんなことじゃないんだ。
辛い、とてつもなく。水だ、しかしフーターズガールは来ない。ビールだ。しかしビールはアダム・サンドラーが勝手に飲んでしまっている。「あんた飲んだでしょ!」とバリモアはキレるが、それどころじゃない。なにせ辛いのだ。
そこでサンドラーはチャイニーズ・スープを差し出す。
自分で人のビールを飲んでおいて、悪びれもせず(というかすっ飛ぼけて)スープを差し出す。
急に親身な表情になっている。やる気がなくてもこれくらいはさらりとやってくる男である。

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そのスープをドリュー・バリモアは貪り食う(飲む)。
このときだ。ドリュー・バリモアは食べこぼす。

吐き出しからの食べこぼし。
どう考えてもアダム・サンドラーの態度がヒドい。しかしなんか結果的にドリュー・バリモアが台無しにした感じになっている。ここで今までの二者の関係は「食べこぼし」を境に見事に逆転する妙味。まさにテーブル台をひっくり返すがごとくの逆転劇。そして結局先に帰るアダム・サンドラー。素晴らしい流れだ。
真面目に言うと、ここでの流れはサンドラーが仕掛けているようにも見える(バリモアのビールを飲んでおくことなど)のだが、仕掛人サンドラーは、のちに極上の食事を本気で仕掛けるので反復という意味でも普通に重要なのだ。

ちなみに“台無し”の語源は「台(テーブル)をむちゃくちゃにすること」だと今確信した。が違っていた。“台無し”とは「仏像の蓮の台座である蓮座のこと。これがないと、せっかくの仏像も威厳がなくなることから、台無しは面目を失うことや、形をなさないことを意味するようになった。」とのことだ。

なにより「食べこぼし」後のバリモアの仕草がとても良い。チャイニーズ・スープを食べこぼし、白のブラウスが酷いことになっているにも関わらず、テーブルナプキンで丁寧に口を拭うんだよね。
とてもエレガント。
冒頭に『シンデレラマン』の話を出したが、犬食いスタイルで貪欲に体力の回復を計ったラッセル・クロウ演じる誇り高き実在のボクシング選手ジェームス・J・ブラドック、通称シンデレラマンは、その犬食いを人に見られたときに、極めて冷静にタオルで口を拭った。その貪欲さと誇りの高さがジェームス・J・ブラドックをボクシング界の殿堂入りまでさせたのだ。食べこぼしたあともエレガントに口を拭う。さすがは超一級。これが大人の「食べこぼし」である(つづく

(text:satoshifuruya


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Killer of Sheep

スラム街に暮らす黒人たちの暮らしを鮮やかに描き、望まれながらも長らく劇場公開されなかった、黒人監督チャールズ・バーネットによる幻の傑作。 1970年代中頃、ロサンゼルスにあるワッツ地区。黒人たちが住むそのスラム街で、スタンは妻と息子、娘の4人で暮らしている。スタンは羊などの屠処理の仕事をし、一家は裕福ではなくても、それほど貧しくはない生活を送っていた。しかし仕事に励むなかで、日に日にスタンの精神は暗く落ち込み、眠れない日を送るなかで妻への愛情を表すこともしなくなっていた。 子供たちが無邪気に遊びまわっている街は、一方で物騒な犯罪が起き、スタンの周りの知人友人にも小さなトラブルは絶えない。 そんななか、家の車が故障したため知人からエンジンを買おうと出掛けるスタン。しかしエンジンを手に入れたスタンは、その直後思わぬ事態に見舞われるのであった……。

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